風害・水害・地震、自然災害と主な保険の補償(13年9月3・4日)


●風水害と主な保険の補償
  9月3、4日に埼玉、千葉、栃木県で竜巻被害が発生した。また、九州・四国・東海地方を中心に豪雨被害も発生した。
 竜巻などの風害については、落下物・飛来物等による損害も含めて、一般的な火災保険、車両保険、傷害保険、生命保険、医療保険で補償される。火災保険分野の商品は現在、損保各社が個別に独自商品を販売しており、おおむね契約者が免責金額を選択して加入する仕組で、風水害については、免責金額を超える損害額について保険金額を限度に実際の損害額が補償される。水害は床上または地盤面から45p以上の浸水被害が補償対象となる。なお、損保業界統一商品だった旧来の住宅火災保険・住宅総合保険では風水害の補償について一定の制約があり、住宅火災保険で水害は補償されない。
 風水害など損害保険の事故においては加入者が保険会社に直ちに通知すること必要(通知義務)で、加入契約の補償内容がよく分らない場合でも何らかの被害があればすぐ保険会社か取扱代理店に連絡すること。保険会社への連絡が遅れると因果関係が不明確になり、後からトラブルになることもある。
 なお、被害者への各種支援・仮住まい手配・生活再建助成等については現地自治体に問い合わせること。
 主な保険の取扱内容は下記の通り。

<自然災害と主な保険の補償一覧>
                水害  風害  地震
<物の損害>
住宅・家財の住宅火災保険 ×   ○   ×注
住宅・家財の住宅総合保険 ○   ○   ×注
住宅火災保険+地震保険  ×   ○   ○
住宅総合保険+地震保険  ○   ○   ○
車の車両保険         ○注  ○注  ×
<身体の損害>
傷害保険            ○   ○   ×
生命保険            ○   ○   ○
災害特約(災害給付)     ○   ○   △注
医療保険(災害給付)     ○   ○   △注

<一覧表の説明>
※○は補償される(下記の制約あり) △は各社の取扱規定が異なる(各社とも事実上、補償されるが一定の制約条件を約款に記載) ×は補償されない(下記の取扱あり)

※旧損保業界統一商品の住宅火災保険・住宅総合保険といった一般の火災保険の風害・水害の補償には制約がある。住宅火災保険、住宅総合保険では、台風や竜巻などの風害(飛来物・落下物による損害含む)で20万円以上の損害が発生した場合に保険金額を限度に全額補償される(20万円フランチャイズ方式)。住宅総合保険では水害で床上または地盤面から45p以上の浸水があった場合に、最大で火災保険金額の70%までの範囲で水害保険金が支払われる。
98年7月損保料率自由化以降、損保各社の火災保険商品は再築費用ベースで実損填補する方向で独自商品化が進み、現在は各社の主力商品となっている。これらは各社ごとに補償内容が異なるが、風害・水害については、おおむね免責金額を選択して契約し、免責金額を超える損害額に対して保険金額を限度に全額補償する仕組み。普通保険約款の規定により、損害額が補償される場合は、残存物取り片付け費用や臨時費用なども支払われる。

※住宅火災保険・住宅総合保険における風害での20万円フランチャイズ方式とは、20万円以上の損害について保険金額を限度に損害額を支払うもので、免責とは異なる。例えば、風害で損害額が21万円になった場合、住宅火災保険・住宅総合保険では21万円の保険金が支払われるが、仮にこれが20万円の免責金額方式であれば支払保険金は免責金額を控除した1万円となる。損害額の足きりとも言えるフランチャイズ方式が導入された主な理由は、台風で屋根の一部が壊れるような少額損害であっても広域にわたって損害が発生すると、1回の台風でも巨額の支払額(91年9月台風19号の支払額5,679億円、自然災害で過去最大の支払額)となるケースがあり、結果、それによって火災保険全体の保険料水準が高くなる場合があるため、1件当たり少額の損害については加入者に自己負担してもらいながら、被災者が困窮するレベルの一定以上の損害に対しては全額支払うようにしたもの。

※車の風害・水害については、一般車両保険、エコノミーワイド車両保険(エコノミー車両保険+車両危険限定A特約)で補償されるが、他車との事故による損害のみ補償するエコノミー車両保険では補償されない。

※一般の火災保険で地震による損害は補償されない。ただし、地震火災で半焼以上の損害の場合、地震火災費用保険金が払われる(火災保険金額の5%、300万円限度)。独自商品の中にはこの費用保険金の支払額を拡大した個別商品もある。

※地震保険は火災保険に付帯して加入するもので、契約金額・支払面で制約がある(詳細は別掲の地震関係記事参照)。

※その他の損保商品では地震等による損害は通常、免責となる。ただし、車両保険に地震等危険担保特約、傷害保険に天災危険担保特約を付帯した契約については地震による損害も補償される。

※生保の場合、地震等でも普通死亡保険金(病気死亡の保障額)・高度障害保険金が支払われる。主契約に付帯する災害特約や単品医療保険では、地震による災害死亡・災害入院給付については、会社により免責を明記しているものと明記していないものがとある。ただし、いずれも被保険者数の増加の状況に応じて、保険料の計算基礎に影響がなければ全額払い、または削減払いされる旨明記している(過去の東日本大震災、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震などでは全社全額支払い)。"

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