自然災害と保険Q&A
NTV「おもいっきりテレビ」解答編(05年9月23日放映)


●地震保険編
Q:地震で自宅が火事に。こんな時、火災保険だけ入っていれば補償される?
A:地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とした火災、倒壊、流失などの損害を補償する保険。建物と家財の火災保険に、それぞれ別個に地震保険をセットして契約しなくてはならない。
地震保険の保険金額はベースとなる火災保険金額の30%〜50%の範囲内で設定する…という仕組みになっている。例えば、建物に1000万円の火災保険に加入している場合は地震保険の保険金額は300〜500万円の範囲で契約することになる。あくまでも火災保険金額に対して、最大5割までしか加入できない。契約金額の上限は建物5000万円、家財1000万円です。

Q:地震保険の支払方法は?
A:柱(損傷した柱の本数/全柱の本数)、基礎(損傷した布コンクリートの長さ/外周布コンクリートの長さ)、屋根(屋根の葺き替え面積/全屋根面積)、外壁(損傷した外壁の面積/全外壁面積)といった主要構造部の損傷割合鑑定し、建物の時価に対する主要構造部の損害額の割合を算出します。その割合が50%以上だと全損となり地震保険金額の全額が支払われ、同様に20〜50%未満だと半損で地震保険金額の50%、3%以上20%未満だと一部損となり地震保険金額の5%が支払われます。   被害にあった方の見た目の損傷割合と、時価をベースにおいた損害額の割合とでは、ギャップが生じやすいのです。

Q:全損や半損の境目の損害認定は、どうなる?
A:主要構造部の損害割合の算出結果が、仮に50%を少し下回るというような支払基準のボーダーライン上のケースについては、損保業界共通の査定基準で保険会社はさらに詳しく被害者救済の趣旨で内壁や床組の被害まで調べることになっています。これを「2次査定」と言います。
ですから、全損、半損、一部損のボーダーラインの損害については、契約者側からも「2次査定」までやって欲しいと、きちんと言うべきでしょう。損害調査の結果について、契約者と保険会社が納得ずくで協定し、そのうえで保険金請求することになっていますから。

Q:建物に地震保険をかけていた。大地震にみまわれ、木造2階建ての住宅の柱数本が破損、外壁のほとんどに亀裂が入った。地震発生から4日後、保険会社が鑑定にきた保険会社との協定で『半損』と説明されたが、納得がいかず、保険金請求書類に捺印しなかった。ところが、その1週間後、突然家が崩れ、なんと全壊してしまった!この時Aさんが受け取る事のできる保険金は?
A:建物『半損』認定の保険金。結果的に全壊したのになぜ、『半損』の保険金しかもらえないのか…実は、家が全壊となったのが地震発生から11日たっていたからです。実は約款で保険金を支払わない場合として、地震発生後、10日経過した損害は補償しないと書かれている。地震と損害の因果関係を明確にするための線引と言える。ですから、このケースでは、10日以内の「半損」の保険金は支払われるが、10日を超えて発生した自然倒壊の損害は地震保険では補償されないのです。

Q:木造2階建ての住宅に1,000万円の地震保険をかけていた。地震で家が壊れ、保険調査員に『半損』と認定され、保険金請求書に捺印しました。ところが、地震発生から2週間後の余震で、建物が全壊した。この場合、Bさんはさらに保険金がもらえるか?
A:『全損』の場合は、地震保険契約は全損失効となり契約が消滅します。ですが、全損に至らない場合地震保険は有効に継続するのです。保険金額は時価を限度に自動的に復元します。
 詳しく説明すると、まず地震保険では3日間72時間以内に何回地震が起きても1回の地震とカウントします。ですから、仮に1日目の本震で半損、3日目の余震で全損になった場合は、全損として地震保険金額の全額が支払われます。
この1回の地震で補償されるのは、地震発生後10日以内の損害です。
このBさんの場合、1回目の地震で半損となり保険金を受け取っても全損ではないので契約は有効に継続しています。加入時の契約が1000万円で半損で50%の500万円受け取ったとすると、残った建物の時価は単純に500万円となり地震保険金額の上限も自動的に500万円となります。1回目の地震から10日を超えて発生した2回目の地震は新しい地震であり、残りの部分が全壊したので、新たに500万円が支払われます。

Q:家財に500万円の地震保険をかけていた。地震による火災で自宅が全焼。家電製品はもちろん、真珠の指輪など貴金属も焼けてしまった。貴金属も含めて消失した家財すべて補償される?
A:地震保険の対象となる家財は、家具・什器、衣服などの生活用動産。貴金属など30万円以上するものは対象にならない。また、車も地震保険の対象にはならない。

Q:建物・家財とも地震保険に加入していた。地震で自宅の塀が壊れて、第三者に怪我をさせてしまった。この場合、治療費などは地震保険で補償される?自分が怪我した場合は?
A:地震保険の対象となるのは居住用建物とその家財であり、第三者への賠償損害や身体のケガなどは地震保険の対象にはならない。ちなみに、地震の際に塀や建物が壊れるのは不可抗力であり、通常、損害賠償責任は発生しない。

Q:地震によって火災が発生し、もらい火で類焼した場合は?地震後のたき火や通電ショートによる2次火災で焼けたときは?
A:火災保険だけでは地震による類焼損害は補償されない。発生原因を問わず火災が地震によって起きた場合は、延焼・拡大した火災や2次火災を含め補償されない。地震地域では消防車の到着が遅れたりして通常の消防活動が困難なことから、平時の火災損害を前提として保険料計算されている火災保険では補償されない。地震による損害は地震保険セットしていないと補償されません。

Q:賃貸住宅に住んでいる。地震で賃貸住宅が壊れた場合を考えて、地震保険に加入しておく必要がある?
A:賃貸住宅にお住まいの方は、建物は自分の財産ではないので、自分の家財の火災保険に地震保険をセットしておくことです。

Q:地震保険の保険料は全国一律?
A:概ね火災保険料より地震保険料のほうが高い。地震保険の保険料は、まず地域別(都道府県別)に1〜4等地によって区分されています。
また建物の構造が木造などの非耐火構造か鉄筋コンクリートなどの耐火構造なのか、によっても異なります。鉄筋コンクリート構造に比べ、木造などは約2.4倍保険料は高くなります。
等地区分は地震発生頻度や地震火災の予想損害などをもとに定められ、4等地が最も高く、それに当たるのが東京・神奈川・静岡です。最も安い1等地の北海道などに比べて、4等地では木造で約3倍保険料が高くなります。地震保険の保険料を割引する制度もあります。

Q:1回の地震で支払われる総支払限度額はいくら?
A:地震保険の加入率の上昇に伴い、今年4月から4兆5000億円から5兆円に拡大しました。これを多いと見るか、少ないと見るか…現在の普及率をベースに、関東大震災級の大地震が起きても地震保険の支払が可能と試算して5兆円の枠が決められています。
ただし、被害想定を超えるような損害が発生した場合は、総支払限度額を超えた割合で個別の契約の保険金が按分して削減される仕組みです。

Q:地震保険は役に立つのか?
A:従来の火災保険は現状回復を原則とした保険ですが、地震保険は、地震保険の契約金額の上限が火災保険金額の半分までなので、全損で地震保険の契約金額が全額払われたとしても、もとと同じ家を建て直す事はできません。
 ですから、地震保険金は仮住まいの費用にあてるなど地震被災後の当面の生活建て直しの費用と考えた方がよい。阪神大震災や中越地震では、仮設住宅に相当長期に暮らしている人がたくさんいる。貯金に余裕のない人は、イザというときの復興資金のために地震保険の備えが必要。
また、すでに長期の住宅ローンを抱えている人は、もし仮に地震で住宅が全損してしまうと建て直すしかなく、再築するためのローンと二重ローンの負担に追われることになる。こうした二重ローンの事態に陥らないようにするには、地震保険への加入が妥当だと思います。

●火災保険編
Q:台風や集中豪雨によって建物や家財が被害を受けた場合、それを補償してくれるのが一般的な火災保険は?
A:基本的に地震以外の自然災害は一般の火災保険で補償されます。どこの保険会社でも同じ内容で扱っている保険では、住宅火災保険は風、雹、雪による損害が補償され、さらに総合保険タイプの住宅総合保険でこれらに加えて、台風や集中豪雨による水害も補償されます。これらのほか、最近は保険会社ごとに自然災害を幅広く補償する独自商品もある。

Q:台風や集中豪雨によって、建物や家財が水害を受けた場合、床上浸水しないと住宅総合保険の補償対象にはならない?
A:実際に使用している住居部分の床を超えた床上浸水のみ住宅総合保険で水害保険金が支払われます。床下浸水は補償されない。もちろん、高潮や水害による土砂崩れで、家が全壊したり流された場合も水害保険金が支払われます。
住宅総合保険での水害の補償は損害の程度により、水害保険金の支払い方が異なります。@損害の額が時価の30%以上となった場合には、最大で保険金額の70%が支払われます。A損害額が時価の15%以上30%未満の場合には、保険金額の10%(200万円が限度)B損害額が保険価額の15%未満の場合は保険金額の5%(100万円が限度)となります。

Q:先日の集中豪雨で半地下部分の駐車場が浸水。車2台が全損。建物と家財に住宅総合保険をかけていますが、車は補償されますか?
A:水害が補償される住宅総合保険の対象となるのは建物と家財であり、車は家財ではなく補償対象になりません。車の水害の補償を受けられるのは自動車保険の車両保険です。

Q:我が家は地下1階、地上2階建てです。先日の集中豪雨で地下1階部分が床上浸水。自慢のオーディオ機器などの家財が全滅してしまいました。この場合、地下室でも住宅総合保険で補償される?
A:半地下であれ地下1階であれ、居住部分の床上浸水については住宅総合保険の水害の補償対象になります。ただし、居住用でない地下駐車場は補償されません。

Q:台風で自宅が床上浸水。その後、1階や床下の泥を除去するのに専門業者に依頼。この時の片づけ費用も住宅総合保険で補償される?
A:住宅総合保険では火災などで損害保険金が払われた場合は、残存物取り片付け費用などの費用保険金が所定の割合で上乗せして支払われますが、水害の場合は取り片付け費用は支払われません。こうした清掃費用は自腹になってしまう。

Q:集中豪雨で自宅のトイから水があふれて2階部分の壁紙や畳がダメに… この場合、床上浸水していないので、住宅総合保険に入っていても補償されない?
A:この場合、床上浸水でなくても住宅総合保険で補償されます。ケースバイケースですが、トイから水があふれたことが給排水設備の事故によるものであればそれによる水ぬれ損害≠ニして室内や家財の損害が補償されます。この場合は最大でも保険金額の70%までなど制限のある水害保険金ではなく、保険金額を限度に実際の損害保険金が払われます。

Q:浸水により排水設備(排水ポンプ)が故障し、地下室が床上浸水となり、建物・家財に損害が出た。これは水害か?給排水設備の事故による水濡れ損害か?
A:給排水設備に生じた事故としての水濡れとなり、損害保険金が支払われます。

Q:台風でマンションの屋上から水漏れし、自室の壁紙や家財が濡れてダメになった。住宅総合保険で補償される?
A:これは給排水設備の偶然な事故にあたらず、補償されません。ベランダから水がしみこんだ場合も補償されない。単なる雨漏りによる損害は事故性(偶然性)がないので、支払いの対象とはならないのです。

Q:台風の強風で屋根瓦が吹き飛び、そこから雨が吹き込んで2階の室内や家財が水浸しに…この場合も住宅総合保険で補償される?
A:この場合は『風』による損害、すなわち風害になるので、住宅総合保険のほか住宅火災保険でも損害保険金が支払われる。
ただし、窓や戸の閉め忘れ等建物の開口部から風・ひょう・雪・雨が吹き込んだ場合は、偶然な事故ではないので、補償されません。

Q:水害保険金より損害保険金のほうが有利?
A:事故形態を後から選ぶことはできない。保険金の支払方法で言えば、住宅総合保険の場合で、水害だと3区分の支払方法が適用され、最大でも保険金額の70%、部分的な損害では10%、5%程度の制限的な支払となるが、風害だと20万円以上の損害であれば実際の損害が補償される。また、風害で損害保険金が払われた場合は臨時費用保険金や残存物取り片付け費用保険金が上乗せされる。ただし、風害の場合は損害額が20万円未満なら保険金は支払われない。

<上記Q&Aの内容は未放映の内容も含む。解答者の山野井良民が一部加筆>

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