●無認可共済について
※「無認可共済」のテーマについては、一般読者からの情報提供や疑問・質問・相談・苦情等も掲載します。どんどんご意見や情報をメールでお寄せください。

●中途半端な泥縄式の対症療法では効果無し。共済事業基本法制定に向け本格的な議論を開始せよ。

 「共済」の名前さえ付ければ無認可保険業が堂々と営めるなんて、もう憤りを通り越してアホらしくて言葉もない。本サイトにも、一般消費者から無認可共済に関する具体的な相談が毎月のように寄せられてくる。身内のことで恥ずかしながら、小生の北海道在住の親戚からつい最近、無認可共済の大手のマルチ販売的手法をウリモノにする団体について、「外資系の保険会社みたいな名前で、会員の人が自分はこの仕事に賭けていると情熱的に語っていた。掛金がいまの保険の半分くらいになるようだけど、大丈夫なのか?」と、問い合わせを受けた。

 また、日頃から親しくコミュニケーションをとっている複数の生保営業職員や損保代理店からも(雇用契約・委託契約で兼業の制約があるにも関わらず)、「仲間から一緒にやらないかと誘われているけど、どういうものなのか?」等々の問い合わせが相次ぐに至って、こりゃあノンビリ構えていられないなと、重い腰をあげることにした。

 こんなこともあった。羽田空港で一面識もない人がいきなり名刺を差し出してきた。かつての教え子の代理店かなと思ったら、企業や団体で相次ぎ共済会を立ち上げマネジメントを行っている会社の幹部だった。今春、週刊朝日の「無認可共済特集」で小生が若干のアドバイスをし、誌上で「明らかに保険業法違反である」と公式にコメントする以前のことだったと記憶する。安く見られた感じでなんとなくトホホな気分になったものである。

 昨日配本された「共済と保険11月号」の巻頭言に、日本共済協会の藤井正樹専務理事が一文を寄せているが、中で要旨、「全国共済連合会なるホームページがある…そのリンク集には当協会などの法人名が列挙されている…云々」と問題指摘している。それにしてもまあ、「全国共済連合会」とは大きくでたもんだ。こりゃあ一般の人が見たら誰だって、制度共済団体と同様ないしは同格の共済団体と受け止めるだろう。
 
 ぼちぼち一部無認可共済団体に対する裁判沙汰も起きているが、そのうちどっかで尻尾を出すだろうなどど安穏と構えちゃあいられない。マスコミの追求もこれ以上拡大しないと見くびっているのか、またぞろ各地で会員拡大にいそしんでいるようだ。ルール無視ないしは現行法制の隙間をぬってはびこる無認可共済をこれ以上放置していると、資産を食いつぶしたり、さらには世界bP国営保険事業に肥大化してしまった簡保のように、そのうち問題が大きくなりすぎて潰すに潰せなくなるかもしれない。規模の拡大=消費者の支持という図式こそ彼らの狙いなのである。

 保険業界や制度共済団体においてもかねて、この種無認可共済問題に対し、保険業法を始め、税法、出資法、法人格、再保険と元受、ブローカー、保険募集従事者による兼業等々各面の調べを進めているが、なにせ「特定集団内の助け合いの制度」を標榜し、根拠法も監督官庁による規制もない無認可共済だけに情報開示義務が法定されておらず、共済(保険)経理・資産内容、共済掛金の算定の合理性、準備金積立の有無や合理性、募集体制等々、要するに実態が分からないし調べようもないので、いわば「不祥事」「裁判」待ちの状況にある。

 「週間朝日」でも広くアンケート取材を行ったが客観的な開示データが無いため確認のしようがなかった。中には、再保険先として複数の損保会社名を記載していた団体があったが、これはありえないと調べてみたら案の定、経営者親族が代理店登録をし、負担の大きい傷害死亡に関して元受会社の保険を組み込んでいた。

 テキもさるもの引っ掻くもので、首謀者や活動家の多くが保険会社や保険代理店の経験者(または現役)、税理士資格を持つFPなどで、現行法制の裏道・抜け道を歩くには達者な連中が揃っている。実態は明らかに不特定多数に対して募集を行う「無認可保険業」であるにも関わらす、「特定集団」内における助け合いの制度を標榜して保険業法を脱法し、先刻承知の上で法人税法(人格のない社団等)、連鎖販売法、出資法、詐欺など一般事業者に対する個別刑法をクリアできるよう、なかなかにきめ細かく配意し運営している。

 中には、研究論文多数の前途有為な損保会社の元社員が当該会社や保険制度への私憤なのか私怨なのか義憤なのかは不明だが、ルール破りの任意共済(無認可共済)の作り方をとても分かりやすく解説した裏社会向けの好著もある。ご本人は発想の転換を気取ってるつもりなのだろうが、社会のルールの一線を超えちゃうと、なんでもOKのえらい簡単な話になっちゃうよなあ。そのエネルギーを保険制度改革に向ければよかったのに、裏社会に向けたんじゃな。ま、エイエイオーのキャンペーン営業やら法人営業の接待ばっかしやってると、ついキレたくなる社員の気持が分からないでもないけれど。これは蛇足。

 生保利下げ制度じゃあれだけ指導力を発揮した金融庁は例によって縦割り行政のご都合主義にかまけて、「注意書き」告知程度の腰の引け方である。法務省も右へならへの「注意書き」告知でスマしている。こちとら乱暴な性格だから、団体の形態はどうあれ、不特定多数の人に対して「補償」「保障」の文言を明記しこれを約定している団体については、保険業法に保険事業の定義が明記されてんだから、金融庁は業法違反の嫌疑で立ち入り調査を行うことだ。いろんな尻尾が出てくるさ。それでしょっ引けばいいじゃないか。制度共済の各監督当局も契約者保護を名目に立ち入り調査に踏み切る必要がある。

 真面目に締めるならば、「共済」をうたう曖昧な無認可共済問題で直截にボールが投げられているのは制度共済団体である。曖昧な無認可共済を個別に泥縄式の対症療法で取り締まるのではなくて、制度共済自らを律する統一的なルールを設けることが最終的な解決策になる。共済事業について「協同組合による保険事業」の概念が定着し、民保に匹敵する契約者集団を抱え、民保に準ずる監督規制下で契約者保護を図り、莫大な税金を支払っている今日、その定義を明記した共済事業を横断・統一する基本法としての「共済事業法」の制定を急ぐ必要がある。これにより、その定義や諸要件を満たさないものはすべからく違反事案として業務停止・解散させることが可能となる。とうの昔に消費者の支持と市民権を得た制度共済事業が個別根拠法に基づき整斉と運営されている現状に照らして、いまさら民保側の反駁も考えられないだろう。

 制度共済諸団体は懸案の契約者保護のための安全ネット構築や共済諸団体間の協業を促進するためにも、自律的に統一基本法を制定すべきである。保険会社並みの規模と経営統治能力がある制度共済大団体においては基本法制定の議論は収斂可能だろう。しかし、各共済団体の拠って立つ組合員基盤が異なり、よって監督官庁・監督規制も制度内容・組織・運営形態も異なる各団体のコンセンサスを形成するには、多くの困難と長い時間がかかるだろう。

 将来的に金融庁による監督一本化につながるとなれば精神論を含めた「共済論」が蒸し返され、縦割り行政側の抵抗もあるだろう。諸団体からは「曖昧な共済を取り締まるべきであって、規制下におかれてきちんとやっている制度共済の規制を強化するような視点はおかしい」といった内向きの反論が続出するに違いない。しかし、これだけは忘れてはならない。すべての論議の源泉は消費者・契約者保護にあり、この一点に目を当てて糊代合わせを進めて欲しい。

 「共済と保険」11月号の巻頭言で、藤井専務理事はこう結んでいる。
 「今後、契約者保護のための諸施策に万全を期すべきことはもちろんだが、今日的な社会・経済状況に対応した社会的位置付けや役割等を踏まえた共済事業のあり方について、長期的な視点から理論研修を進めることの重要性を改めて痛感する次第である」
(03年11月19日、山野井良民)


●JCが無認可共済と提携しているぞ!どうなってるの?

 京都でファイナンシャルプランナーを営んでいますが、先日、保険に関するセミナーを行い、その際に気になっていた無認可共済について調べ、話題としました。限りなく黒に近い灰色というのが私の見解です。やはり保険業法的な問題やディスクロージャーという問題もあると思います。

 その一連の中で見つけたのが、JC(日本青年会議所)の共済会のホームページです。そのホームページの「その他の提携サービス」のところに(http://kyosaikai.jaycee.or.jp/service/index.html)、無認可共済エクサとの提携が載っていました。JCといえば半公共的な性格が強いと思います。(私はそう認識していました。一般的な認識もそうだと思いますが)そのJC関連でエクサの名前が出てくるとは思いもしませんでした。

 JCとエクサとの関係、無認可共済への認識、組織とのかかわり等について、JCに対し確認をしていただけたらと思います。(03年11月20日、FP)

●見直しばっかり勧める生保。販売方法は同じ穴の狢じゃないの?
 私は、いわゆる無認可保険に加入しております。しかも問題とされている大手の無認可共済です。
確かに無認可共済について問題はあるかと思います。特に会員を増やすことで自分の手数料収入を増やすことに全てをかけている方を見たり、自分が入っている共済の財務は大丈夫だろうかと。

 私は以前、S生命に入っておりました。それ以前がM生命(現Y生命)です。これらは先輩、友人の関係で入りました。
これらの生命保険を解約し、無認可生命に入った理由はただ一つです。一体全体、何回、見直しをすればいいの?これだけです。ひどい時は1年毎に見直しをさせられました。一度、何で、こんなに見直しをしないといけないんだ?と問いただしたところ、前よりも良いのが出たからの一言です。

 その度に保険料は上がる一方。また一時期、社会問題化した生命保険会社にも入っております。今年、見直しをしてくれと言われ、見直しをしました。個人的には見直しをするつもりはありませんでした。ナゼなら明らかに料率を落としたいということが分かっていたからです。

 私が保険を買っている理由は、万が一の保障だけです。貯蓄がどうのは関係ありません。万が一の保障だけで充分なのです。それは私が死んだ時と病気になった時の保障、家族が病気になった時の保障だけです。

 一度、私の子供が病気で入院しました。当時、私が契約していた保険に特約で家族保障をつけておりましたので、相談したことがあります。その結果は何のかんの理由をつけて、保険は出ないと言われました。(むしろ保険が出ても意味がないと。)特約での家族保障とは言え、入る迄は一生懸命に勧誘し、入った後はなるべく保険金は出さない方がいいという姿勢が見え見えであることは間違いありません。

 さらにある時、保険の見直しで保険を解約しないといけないため、保険会社の支店に行った折りのこと、立派な建物でした。多分自社ビルなのでしょう。この建物は自分を含む契約者たちの保険料を運用した結果で作られたビルでしょう。しかし、相互会社である以上、そうした剰余金は還元すべきであるのではと思うことでした。また様々な保険会社がTVCMを流しております。このお金はどこから出てくるのでしょうか?と。

 そうした不信感が重なり、たまたま知り合いに無認可共済に入っている方がおられたことから無認可共済に入りました。(後で、JAとかCOOPの共済があることを知り、あちゃ〜と自分の無知を思いましたが…)

 また色々な報道で保険のトップセールスマンがよく出てきます。そうした方を見る全て契約した金額に応じた手数料収入が多いように見受けられますし、親戚に一時期、保険のセールスをやっていた人の話を聞くと契約高に応じた給与体系であると聞いています。
確かに無認可共済の販売方法にも問題はありますが、保険の販売方法を見ると、選ぶ立場からすれば同じ穴の狢にしか見えません。

 また、今年、妻が病気で倒れ、2ヶ月入院しました。今のところ、私が加入した無認可共済はきちんと契約した通りの金額を支払って頂いたので安心はしています。以前の保険であれば、どうなっていたかと思うとゾッとする思いです。

 保険を買うということはリスクを買うのと同じような気がします。であれば、最小のリスクで最大のリターンを得たいと思うのが人間です。また、どの保険を見ても同じように見える内容であれば少なくとも安い所と契約したいと思うのが人間です。確かに無認可共済の在り方については問題はあるかと思いますが、少なくとも消費者保護と言いながら、自分達の在り方を棚に上げている生命保険業界にも問題はあるかと思います。(03年11月26日、匿名)



●「無認可共済」問題の論点整理について。

 下記に根拠法のない共済についての論点整理を行うこととする。

<問題点・懸念>
@ 保険業法に基づく保険事業にあたらないことから保険業法は適用されていない。
*実態的に不特定多数を対象とした共済事業は、無認可保険として保険業法違反となる可能性がある(保険業法第2条第1項、第3条第1項)。その場合、3年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金、又は両方が併科される(保険業法第315条)。
*これら共済の再保険を受再している海外の保険会社について、無免許保険による保険業法違反の他に、保険業法第186条のクロスボーダー取引規制違反の可能性がある。その場合、2年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金、又は両方が併科される(保険業法第316条)。

A 一般事業者に適用される刑法(詐欺罪等)・不正競争防止法・不当景品類及び不当表示防止法・金融商品の販売等に関する法律、消費者契約法等が適用されるのみで、また監督官庁も存在しない。
→保険業法上の募集規制のような個別規制がなく、募集に対する規制が民間生保に比して緩やかである。
→監督官庁が存在しないため、事業や商品の適格性チェックが行なわれない。また、問題が生じた際の解決が速やかに行われない可能性がある

B マルチ商法に対する規制については、「特定商取引に関する法律」に定める連鎖販売取引の要件に該当している限り違法とはならない。
*「特定商取引に関する法律」第37条においては、勧誘時と契約時に説明書類と契約書面を交付する義務が課せられており、この義務を果たしていれば違法行為にはならない(第37条、法定書面の不交付違反は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金<第71条>)。

C 根拠法のない共済の多くは、共済(保障)事業について法人税は非課税と解釈していると思われるが、実質的な無免許保険営業であることを踏まえれば、収益事業に該当する可能性が高い。
* 人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得については、それぞれ各事業年度の所得に対する法人税及び清算所得に対する法人税を課さない(法人税法第7条)。共済事業は法人税法上、収益事業とされていないが、共済事業として行う事業についても、当該事業の内容に応じてその全部又は一部が収益事業に該当するかどうかの判定を行うとされている(法人税法基本通達15−1−3)。

○以上も踏まえると、根拠法のない共済には、以下の問題点・懸念点があると考えられる。
@実態的に不特定多数を対象としている団体があり、無認可保険として保険業法違反となる可能性がある(保険業法第2条第1項、第3条第1項)。また、これら共済の再保険を受再している海外の保険会社についても、無免許保険による保険業法違反の可能性がある。
A販売組織がマルチ商法的な要素の強い組織があり、コミッション(紹介手数料)収入を目的とした販売面でのトラブルの発生の懸念がある。また、民間生保の営業職員・代理店等をエージェントして引き抜き、当該エージェントが抱える生保契約者に対し、自身の共済に不当に乗換えさせる等の行為を行う可能性がある。
B消費者保護の観点から以下の問題点がある。これらの問題点は、民間生保会社だけではなく根拠法のある共済等にも多大な影響を与える。
・保険業法による募集上の行為規制がなく、不適切な募集(重要事項の不告知、不適正な比較資料の配布等)が行われる可能性がある。
・監督官庁が存在しないため、掛金設定や商品設計、責任準備金の積み立て等についての適否判断がなされていない。また、問題が生じた際の解決が速やかに行われない。
・法令上ディスクロージャーも義務付けられておらず、団体の財務内容等の検証ができない。
・安全ネットが整備されておらず、事業が破綻した際の加入者保護に欠ける。

<法的な考え方の補足>
@保険業法
・ 不特定の者を相手方としている場合には、保険業法によって免許を得る必要のある「保険業」に該当。共済のうちでも、法律に根拠規定が定められているものは、当該根拠規定により適法性が認められており、免許を得ていなくとも保険業違反の問題は生じない。
・ 不特定性の判断基準は、一般に、@当該団体の組織化の程度(構成員の団体帰属にかかる意識の程度)、A当該団体への加入要件の客観性・難易の程度、B当該団体の本来的事業の実施の程度等の基準に従い、当該具体的事例に則して個別的、総合的に判断される。
・ 共済への加入資格が緩やかで、エージェントシステムが共済事業の拡大に関係付けられていると認められる共済は、保険業法の規制対象たる「保険業」に従事していると判断される可能性が高い。
・ 再保険を引き受ける海外保険会社については、共済会が不特定の者に対して共済の募集を行っている場合であって、その出再割合が100%である場合には、再保険者自身を無免許保険に従事するものと構成することが可能。共済会が海外の再保険会社A及びBに対し、それぞれ50%ずつ出再しているような場合(合計の出再割合100%)も同様。90%であっても共済団体を海外再保険事業者による無免許保険営業の隠れ蓑としていると構成することは可能か。

A特定商取引法
・ エージェントシステムを導入している団体は、連鎖販売取引に従事していると判断される可能性が極めて高い。
・ 本件において、エージェントシステムを採用している団体は、エージェント規約等において不実告知や威迫・困惑行為を禁止しており、形式的には事業内容の合法性を担保しているため、責任を問うことは必ずしも容易ではないが、エージェントに事実の不告知や威迫困惑等の行為があった事実を立証できれば、当該団体(法人)も300万円以下の罰金の対象となる。

B出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第1条または第2条)
・ 登録料の返還には応じない旨を明らかにしていれば、それらが預金等の預り金に該当することはない。
・ コミッションの試算を示すだけでは出資の払戻が確実である旨の表明を行ったとみることは困難であって、出資金の受入に関する規定に違反していると評価することも困難。

C不正競争防止法第2条第1項第13号
・ 比較広告において、自己の営業上の信用を高めようとする行為であっても、それが特定の競争者の営業上の信用との比較においてなされたとき、そこに虚偽の事実が含まれ当該競争者の信用を毀損するときは、同号に該当。

D不当景品類及び不当表示防止法(景表法)第4条
・ 商品内容、取引条件等について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止。

E法人税法
・ 根拠法のない共済の多くは共済実施団体(共済元受)として法人格のない任意団体を設立している。
・ 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを人格のない社団等とし(法人税法第2条第8号)、法人とみなして、法人税法の規定が適用される(法人税法第3条)。(法人税法基本通達1−1−1、1−1−3)。
・ 人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得については、それぞれ各事業年度の所得に対する法人税及び清算所得に対する法人税を課さない(法人税法第7条)。
・ 収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいい(法人税法第2条第13号)、以下の33業種とされている(法人税法施行令第5条)。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、一定の技芸教授業等、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業
・ ただし、共済事業として行う事業についても、当該事業の内容に応じてその全部又は一部が収益事業に該当するかどうかの判定を行うとされている(法人税法基本通達15−1−3)。
・ 根拠法のない共済の多くは、共済(保障)事業が法人税法施行令第5条に規定する33の業種に含まれていないことから、法人税は非課税と解釈していると思われるが、実質的な無免許保険営業であることを踏まえれば、収益事業に該当する可能性が高いのではないか。(04年3月15日、D生)

●<参考>金融審、無認可共済規制で論点整理
1、現状
 わが国において特別な法律上の根拠なく任意団体等で共済事業(特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業をいう)を行う、いわゆる無認可共済が多数存在している。総務省の調査によれば、その数は最近5年〜10 年で急増している。無認可共済の実施主体は、株式会社等の営利法人、法人格のない任意団体、NPO 法人等と多様であり、事業内容も少額の見舞金程度を給付するものから保険会社と同程度の高額の給付を約するものまである。
 共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営む者が将来の危険に対して共同して生活の安定を図ろうとするものであり、基本的には保険業法による規制は不要とされてきた。しかしながら、近年、無認可共済の規模や形態の多様化が進み、伝統的な共済と異なる形態のものが増加している状況にあり、特定の者を相手方として保険の引受けを行う共済事業と、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う保険業とを区別することが容易でなくなりつつある。
(注1 )保険業法は、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業を規制の対象としており、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業には適用されないこととなっている。
(注2 )根拠法を有する共済(農業協同組合(JA:農業協同組合法)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)等の行う共済)については、保険業法に代わる特別の法律の規制を受け、主務官庁の監督を受けて事業を行っている。
 無認可共済については、近年の急成長の背景に既存の保険では満たされない顧客ニーズの存在があり、比較的限られた顧客を相手に保険会社の提供しない保険契約や低廉なリスク移転を提供するといった事業の多様性を通じて制度補完の役割等を果たしているとの指摘、連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり、契約者などの保護の観点から問題があるとの指摘がある。いずれにしても、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からあるべき規制の姿を議論していくことが重要であり、また、その際、現実に事業を行う無認可共済が広範囲に存在している現状も勘案した上で検討を行う必要がある。
2、基本的考え方
 無認可共済に対する規制を導入する場合は、どこまでを公的な規制の対象とすべきかが問題となる。構成員が真に限定されるものについては、その運営を専ら構成員の自治に委ねることで足り、規制の対象外とすべきと考えられる。これに該当するものとして、小規模なもののほか、労働組合が実施するもの、企業内の共済会などが考えられるとの意見があった。
上記の範囲を超える無認可共済については、構成員の自治による監督のみを理由に契約者などの自己責任を問うことが適当でない領域であって、契約者の保護などの観点から一定の規制が必要と考えられるが、その規制のあり方については、現行の保険会社に対する規制との関係で以下の二つの考え方が示された。
(1 )一定の規制があれば、行政当局に対してはその監督下にある事業者の破綻の防止に努めるべきとの期待をもつ契約者などがいるとの見解、無認可共済が引き受ける保険契約(取扱い商品)には保険会社の取扱い商品に類似したものもあるとの見解等に基づき、現行の保険会社に対する規制と同様の規制を課し、既存の事業者については経過措置を設けて対応すべきとの意見があった。また、仮に無認可共済の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮して制度設計の必要性を検討するのであれば、現行の保険会社規制の見直しも視野に入れて行うべきであり、保険会社規制と異なる規制体系を別個に導入することは弊害が大きいとの意見があった。
(2 )他方で、無認可共済の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮しつつ、無認可共済が広範囲に行われている現状を踏まえて幅広く行政当局の監督下に置くことが重要であり、まずは契約者の保護などの観点から必要最小限のルールを設けることが適当との見解に基づき、保険会社に対する規制と異なる規制の導入を考えるべきとの意見が出された。
その内容としては、無認可共済について現行の保険会社に対する規制と異なる規制を導入する場合、その差異は、契約者などの保護や保険会社との公正な競争条件の観点から合理的なものである必要があり、例えば、以下の2つのアプローチが考えられる。
(A )保険業法による規制が不要とされてきた無認可共済について、これまでと同様、契約の相手方が「特定」か「不特定」かをメルクマールとして保険会社の行う保険事業と異なる事業と位置付けつつ、契約者などの保護の観点から必要な規制を導入する。その際、特定性に着目した無認可共済と保険業との区分が容易でなくなりつつある現状を踏まえ、両者を分ける「特定性」について、例えば、団体への加入の要件や他の活動との関連、保険契約募集の態様、事業規模(保険契約者数等)などに関して、一定の具体的な基準を設けることも検討する。
(注)特に事業規模に関して基準を設ける際には、事業分割等による規制の潜脱の防止について何らかの工夫が必要となる。
(B )取扱い商品が保険期間が短期のもの、保険金が一定額のもの等に限定される場合には、事業者の破綻等の場合に契約者などに生じる損失が限定され、適切な情報開示を前提に契約者などの自己責任を問うことが可能であると考えられることから、それ以外の保険の引受けを行う場合とは異なる事業として、別の契約者などの保護のための規制を導入する。
 具体的な制度設計に当たっては、これら2つのアプローチを組み合わせることが現実的と考えられる。なお、現行の保険会社と異なる規制が適用されるのは上記の「特定性」や「取扱い商品」に関する基準に該当する事業者であって、それらの基準に該当せず、実質的に保険業を営んでいる事業者については、現行の保険会社と同様の免許を取得することが必要となる。また、無認可共済について現行の保険会社と異なる規制を課すことは、免許制度等を前提とした現行の業態とは別に、新たな業態を導入することになる点に留意する必要がある。
3、規制の具体的内容
 無認可共済に対して現行の保険会社と同様の規制を課すこととすべきとの意見があったことは前述のとおりであるが、仮に保険会社と異なる規制を導入する場合、その事業の多様性や制度補完の役割等の可能性を考慮しつつ、無認可共済を幅広く行政当局の監督下に置くことが重要であり、まずは契約者などの保護上必要最小限のルールを設けることが適当であるとの意見があった。その際、事業規模等に応じて規制の内容を厳格化することも考えられる。このような前提で、以下のような新たな規制の枠組みが考えられる。
(1 )参入規制等
保険会社と異なる規制とする場合、保険会社と比べて契約相手方又は取扱い商品が制約されることを踏まえ、登録制等に参入規制を緩和することが考えられる。また、無認可共済の多数は任意団体の形式で行われている現状にあるが、行政当局の監督を必要とする規模のものであれば、権利義務関係を明確にし、契約者などの保護を図る等の観点から、法人格及び一定の財産的基礎があることを要件とすべきとの意見があった。
(2 )商品審査等
保 険会社と比べて業務に一定の制約を設けること、特に取扱い商品が保険期間が短期のもの、保険金が一定額のもの等に限定されるとすれば、行政当局による個別審査までは求めないことが適当であるとの意見があった。
(3 )責任準備金の積立等
責任準備金等は、保険契約上の義務を履行するために会計上適正に計上されるべき負債である。その適切な計算・計上を確保するため、保険会社と同様に、一定の契約については保険計理人の関与を義務付けることを検討すべきとの意見と、取扱い商品が限定されるのであればそこまで求める必要はないとの意見があった。
(4 )兼業規制、資産運用規制
無認可共済については、共済事業以外の本業があるのが通常であると考えられるが、これを認める場合においても他業との間での区分経理は必要である。更に、近年法人の設立に関し様々な選択肢があることなどや破綻時の契約者などの保護の観点を踏まえ、新たに共済事業を目的とした法人を設立することを求めることも考えられる。
また、事業者の財務の健全性を確保する観点から、保険会社のような幅広い資産運用を認めず、基本的には流動性の高い預金や国債等による運用を義務付けることが考えられる。更に、一定額(例えば保険料収入の一定割合)の供託を義務付けることにより、保険料収入の不正利用の防止に配意すべきとの意見があった。
(5 )情報開示
保険会社と同様、事業年度ごとに業務・財産の状況に関する説明書類を作成し、約款等とともに営業所に備え置く必要がある。また、開示される書類の適正性を確保するため、一定の規模のものについて外部監査を義務付けるべきとの意見と、外部監査までは求めないが、それに代替するものとして、例えば、前述の供託の義務付けを行うことが考えられるとの意見があった。
(6 )募集規制
保険会社と同様、募集の際の虚偽表示の禁止等の募集規制は無認可共済に対しても課されるべきであり、また、保険募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適格性を確保すべきである。
(7 )検査・監督
法令の実効性を確保するため、行政当局の検査・監督の対象とすべきである。なお、現行のソルベンシーマージン基準に基づく早期是正措置まで求めるかについては、業務規模の小さい事業主体に関する指標としての有効性などの実効性について引き続き検討する必要がある。
(8 )セーフティネット
既存の保険では満たされない顧客ニーズや制度補完の役割等の共済事業の意義を踏まえると、取扱い商品の限定等により万一の破綻の場合に契約者などに生じうる損失が限定されるのであれば、セーフティネットを設けることは必ずしも必要ないと考えられる。なお、この場合、募集に際してセーフティネットがない旨の説明を義務付け、保険会社との違いを明確にすべきである。
(9 )移行の円滑化のための措置
新たな規制を導入するに当たっては、現に広範囲の共済契約者が存在していることを踏まえ、移行の円滑化のための配慮が必要であり、その具体的な方策を検討する必要がある。 (04年10月25日、保険Webより)

<参考>生保協会、金融審「無認可共済への論点整理」で意見書
<「無認可共済への対応に係る論点整理」への意見書概要>
T.はじめに
 「無認可共済」に対して規制を導入する場合の基本的な考え方やその内容については、今後の検討に委ねられているものと思われるが、その際には、当会からの意見も踏まえ、契約者などの保護や公正な競争条件の確保に資する議論がなされることを要望する。
 「無認可共済への対応に係る論点整理」においては、「構成員が真に限定されるもの」以外の共済については一定の規制が必要とされているが、このことは、保険と同様の機能を有する商品を販売している共済団体を何らかの規制の下に置く方向性が示されたということであり、契約者等の保護の観点から評価できるものと考える。
 また、「論点整理」では、無認可共済に対し「保険会社と同様の規制」を課すべきとの意見が示されている一方で、「保険会社と異なる(緩やかな)規制」を課すべきとの意見も提示されているが、「保険会社と異なる規制」を導入することには以下に述べる問題点があるため、当会としては「保険会社と同様の規制」を課すべきとの意見を支持する。

U.意見
 1.契約者保護上の問題
 「論点整理」においては、「無認可共済について現行の保険会社に対する規制と異なる規制を導入する場合、その差異は、契約者などの保護や保険会社との公正な競争条件の観点から合理的なものである必要」があるとし、そのアプローチとして「特定性」の基準と「取扱い商品」に関する基準が挙げられている。そして、これらの基準に該当する場合に、保険会社よりも緩やかな規制が認められる根拠は、事業者の破綻等の場合に契約者などに生じる損失が限定されることにある※と考えられる。
   ※この点、「論点整理」には、「特定性」の基準を満たす場合に、保険会社よりも緩やかな規制  が認められる根拠は明記されていないが、「構成員が真に限定されるもの」以外の共済については  構成の自治による監督のみを理由に契約者などの自己責任を問うことが適当でないとしていること  また「特定性」の判断に事業規模(保険契約者数等)を考慮し、事業規模を限定しようとしている  ことから、事業者の破綻等の場合に生じる損失が、一定の範囲に限られることがその根拠にあると  推測される。
 しかし、特に死亡保障、医療保障等の生命保険型商品の場合、事業者の破綻等の場合に生じる損失が限定的であることを理由に規制を緩和することは適当でないと考える。そもそも、死亡保障、医療保障等の生命保険型商品は、私的保障制度の一翼を担うものであり、契約者等の生活の安定を確保するための基本的なものであることから、破綻が生じた場合の影響は甚大である。また、生命保険型商品は、年齢や健康上の理由により再加入が困難となることから、事業者が破綻した場合に生じる損失は、回復不可能なものになるという性質を有している。とすれば、このような死亡保障、医療保障等の生命保険型商品について、「保険会社と異なる(緩やかな)規制」を導入し、事業者の破綻防止に対する国家の監督を緩めることは慎重に検討を行う必要があると考える。
 2.競争条件の公正性確保の問題
 総務省の調査によれば、現在無認可共済が提供している商品は、生命共済が約5割を占め、しかも生命保険会社が提供している商品と同様のものである。一般の消費者から見た場合には、保険も共済も商品としての機能は同じものであり、契約者等の保護のみならず、公正な競争条件を確保する観点からも、両者は同様の規制に服すべきである。ゆえに、無認可共済に対し「保険会社と異なる(緩やかな)規制」を導入することは問題があると考える。
 3.制度運営上の問題
 「論点整理」においては、「特定性」の基準や「取扱い商品」に関する基準によって、適用する規制を区別することとしているが、果たしてそのようなことが可能かが問題となる。そもそも現在の無認可共済の問題は、「論点整理」で指摘されているとおり、「特定性に着目した無認可共済と保険業との区別が容易でなくなりつつある」ことに原因がある。総務省の調査によれば、現に、無認可共済の中には、ごく少額の入会金を払うだけ、または特段の入会要件なく会員資格が与えられ、その会員資格を有するものに商品を販売することで「特定性」ありと判断しているところが存在している。
 このような現状を踏まえ、「特定性」について、「団体の加入要件や他の活動との関連」、「保険契約募集の態様」に関して一定の具体的な基準を設けることも検討すべきとされているが、具体的判断基準を設けるのであれば、公正な競争条件の観点から合理的なものであることに加え、客観的かつ明確な判断基準である必要がある。基準が不明確で抽象的なものであれば、形式的に基準に該当するような外形を備えることにより、保険業法の適用を受けるべき団体が「保険会社と異なる規制」の適用を受けるという事態が生じ、現状と同じ問題を再び生じさせるおそれがある。
 また、このような事態を避けるため、客観的かつ明確な基準である「事業規模(保険契約者数等)」を規定したとしても、「論点整理」にも指摘されている通り、事業規模の基準は団体を分けることで容易に潜脱可能であり、そのような潜脱を厳格に防止する措置を講じる必要がある。
 さらに、「取扱い商品」の基準により、「短期」で「一定額」以下のものに限定する考えが示されているが、死亡保障にせよ医療保障にせよ、加入者は更新により保障を継続できることを前提に加入するのであり、仮に保険期間が一年と短期であっても、更新時に適切な危険選択や料率変更が行われないのであれば、実質的には長期の保険である。保険金額が「一定額」以下との基準も、現在のように給付態様が多様化した中では、有効に機能する基準を設けることは容易なことではない。仮に給付総額を100 万円としても、死亡保険金額であれば小額といえるが、入院給付額であれば、日額1 万円の給付が100 日間支払えることになり、これは保険会社が取扱っている医療保険と全く変わらない。あらゆる給付内容を列挙することが困難であることを考えると、「取扱い商品」の基準を設けることについても慎重に検討する必要がある。
 4.制度導入の意義
 「論点整理」において、「保険会社と異なる規制」を導入する場合の具体的な規制内容が示されているが、契約者保護の観点からは、現行保険業法上の規制の中で実際に緩和できる部分がどの程度あるのか疑問である。
 すなわち、契約者保護の観点からは、契約者の支払った掛け金が適正に運用される必要があるが、この観点からは兼業規制、資産運用規制は不可欠である。また、契約者の自己責任を問う前提として適正な情報開示が必要とされているが、このためには適切な情報が開示されるよう情報開示規制が必要であるし、開示情報の正確性・適正性を確保するためには、商品審査を行い、責任準備金の積立等に関する保険計理人等の関与、行政当局による検査・監督が必要である。
このように、契約者保護を図ろうとすれば、保険業法の規制とほとんど変わらない規制となる。とすれば、このような新たな業態を認めることに、一体どの程度の意義が認められるのかが問題となってこよう。

V.まとめ
 以上の通り、「契約者保護上の問題」「競争条件の公正性確保の問題」「制度運営上の問題」「制度導入の意義」の観点から、「保険会社に対する規制と異なる規制」を導入することには問題がある。「論点整理」では、「契約者などの保護や公正な競争条件の観点からあるべき規制の姿を議論していくことが重要」とされているが、そのような観点からは保険業法による一元的な規制を行うべきである。仮に、保険業法を適用することで不都合が生じる場合には、経過措置を設け、既存の無認可共済を保険会社へと育成することで対応すべきである。
 規制のあり方を考えるにあたっては、現状追認の規制を作るのではなく、あるべき規制のあり方を考え、その上で現状を踏まえた制度運営を考えていくべきものである。「論点整理」では「あるべき規制の姿を議論していくことが重要」とされているが、そのような観点から、今後、第二部会での議論が行われることを期待する。(04年10月27日、保険Webより)

●臭いものに蓋はダメ。抜本的に共済事業の根拠法制を整備せよ。
 本稿で始めに指摘したように、共済を名乗る無認可共済の発生は、「何を」根拠に共済団体を規制するのかという点で、これはまさに制度共済団体に直接投げかけられた問題である。加入者保護のために法規制すればよいということまでは誰でも分かる。しかし、共済大団体の経営者自身が認識しているように、「何を」基準に具体的な法規制を検討するのかとなると、実に厄介な問題に直面する。制度共済の根拠法制が団体ごとに区々で、かつ法定内容に明らかに濃淡があり、共済団体を規制する統一の法律がない中で、無認可共済を規制する下敷きをどこに求めてよいのかという議論を煮詰めて行くと、実は共済団体の法規制をどうすればよいのかという自分たちの問題になるからだ。まさに、無認可共済は制度共済団体にとって反面教師なのである。

 金融審でも無認可共済の加入者保護の観点から規制のあり方が検討されている(上記の参考資料「論点整理」参照)が、制度共済団体にもセーフティネットは存在しない。共済事業が今日、主要種目において民間保険同様の制度を導入し真摯に運営している少なくとも大団体においては「協同組合による保険事業」との通念が定着している中で、無認可共済に対して便宜的に「臭いものに蓋をする」ような規制を行えば、それは巡り巡って制度共済団体の経営ブランドを毀損する結果を招くだろう。また、民間保険との対立構造の中にのみ自らのアイデンティティーやレゾンデートルを求めるのは、今日の普及度合に照らしていかにも侘びしい。他言を待つまでもなく、21世紀における共済団体のさらなる発展のために、「協同組合保険」としての根拠法制のあり方について、制度共済団体関係者は大いに知恵を出し合うべきではないだろうか。無認可共済問題をそのための好機として生かして欲しい。

 以下は<04年共済協会シンポジウム「共済事業のセーフティネット」>での小生のコメントに加筆したものである。

<シンポジウムでのコメント趣旨>
 協同組合保険セーフティネット構築の是非やあり方を論じる以前に、その前提となる問題点として、1つは共済事業を取り巻く環境要因と共済団体における事業リスクや破綻懸念の蓋然性、また1つは今後、共済団体において破綻懸念がある場合の組合員・利用者保護の仕組み、すなわち共済諸団体共有のセーフティネットを構築するための法整備が現実に可能か否かの問題を、実態を直視して議論しなければならない。今後の情勢は協同組合の身内の論議や過去の経験則では乗り切れない。

(1)共済事業を取り巻く今後の主な環境要因
 この点において結論するに、当面、破綻懸念のある共済団体はほとんど無いか、少ないと思われる。しかし、おそらくは2010年前後以降、厳しい環境要因により次第に事業縮小を余儀なくされ、将来的には拡大均衡を前提とした協同組合保険事業としては成り立たなくなる共済団体が相当数発生すると思われる。とりわけ消費生活協同組合法や中小企業等協同組合法に基づく小規模ないしは単種目共済団体における事業規模縮小・解散が相当程度懸念される。

 @昭和26年創立の全共連をはじめ多くの共済団体が戦後の人口増加とそれに伴う高度経済成長の潮流に乗って発展してきたが、今後は人口縮小により生命・損害両分野で組合員のパイが縮小する。最近のデータでは07年度以降、人口縮小に転じる。規模の経済が働き、拡大均衡が要諦となる保険業においては、生き残りをかけて協同組合保険を含む保険業全体におけるパイの奪い合いが激化する。
 また、少子高齢化の中で、組合員の保障ニーズが急速に変化している。とりわけ組合員の中核保障層である、わが国の現在50歳代1900万人のニーズが死亡保障から生存保障に急激に変化している。死亡保障市場は縮小し、生保保有契約高は10年間で約2割減少する。一方、第3分野市場は当面拡大するが、50歳代の最大市場は5、6年でピークアウトし、以降ゆるやかに減少するだろう。こうした縮小する生保市場で民保・共済間の競争が激化する。
 右肩上がりのモータリゼーションも終焉を迎える。自由化で価格競争が激化する損保会社は過去の算定会料率の余剰収益である異常危険準備金を吐き出して凌いできたが、この10年間で異常危険準備金を除く正味の引受利益は半減する。現在、正味の引受利益の8割以上は自動車保険だが、ほぼ全社がリスク細分型の価格体系を導入し無事故客層を獲得することでコンバインドレシオの改善に取り組んでいる。このあおりを受けて、自動車・トラック共済にはバッドリスクが集積する懸念があり、これら特定種目の共済団体においては経営不安を招来する。

 A縮小する市場の中で、さらに強力なコンペチターが出現する。07年度の郵政民営化始動(2017年度民営化完了。この民営化プロセスの中で郵便保険会社における第3分野単品取扱、損保取扱、生保限度額の撤廃が実施される)、そして生保募集人登録数42万人を抱える銀行による保険窓販全面解禁が自前の強い募集網を持たない共済団体には大きな脅威となる。強力なコンペチター参入に対して、いうなら最大予想損害を前提において共済団体の生き残りのためのリスクマネジメントが急務となる。

 B資本主義経済国家の常識を越えた超低金利の長期恒常化は引き続き長期生命・年金共済の損益コントロールを難しくする。変額商品や利率変動型商品により運用負担を軽減する仕組みが必要になるが、多くの共済団体の商品開発・システム体制には限界がある。
資産運用面では、共済団体の場合は過去破綻した生保会社のような営業絡みの政策株式投資や銀行との資本の持合がないので、資産デフレによる破綻懸念は小さいと思われるが、反面、実態的に満期保有債券同様の運用が主体になっているとすれば、急激な金利上昇による債券価格の下落により実質純資産の減少リスクがつきまとう。

 Cさらに、昨今自然災害が多発する中で、生損兼営を行う大規模団体で経理は区分されているが、経営上リスク遮断が行われていない。市場競争上、民間保険会社にこれまでのように追随して地震・水害100%補償の商品を安易に供給するようになると、再保険スキーム、証券化スキームが手当できない場合は自然災害の支払で破綻する懸念もなしとしない。

 以上の環境要因により、共済団体は過去の経験則が通用しない時代に直面する。中で、大手保険会社並みの経営体制と保険技術、再保険ネットワークや証券化スキームを持ち、顧客囲い込み戦略として総合取引プラットホームサービスの仕組みを持ち、対面コンサルを行うLA職員の増強を進めるJA共済は生き残り競争をなんとか凌いでいけるだろう。また、小規模な職域共済でも例えば、職域集団の組成が強固なものはゆるやかな規模の縮小に止まる可能性がある。
 一方、現在、契約量の大きい大団体でも実態的に通販類似の募集網でしかないCO・OP共済や、同じく自前の強力な募集チャネルが乏しく労働組合基盤における若年層の組合員意識が希薄化しつつある全労済の場合は、徐徐に事業縮小リスクに直面するだろう。両団体は現在でも商品供給面で融合しているが、やがて協同組合の出自や組合員の組成の相異を超えて共済事業分野の統合が必要になるかもしれない。ましてや小規模共済においておやである。

(2)共済諸団体をめぐる監督法令の相異と規制格差の問題
 次に、共済セーフティネットのあり方を論ずるためには、共済諸団体をめぐる監督法令の相異と規制格差の問題に目を当てなければならない。例えば、民間保険会社には社員自治の原則で経営する相互会社と株主統治で経営する株式会社が混在し、規模の格差もあるが、契約者保護を目的とする監督法令は保険業法により一元的に規制されている。他社の契約者保護のために自社の契約者に付加保険料を徴収してよいのかという基本的な問題の解答は得られてないが、ともあれ業法に基づき契約者保護機構が存置され、契約者には誠に好ましくないが利下げ法も導入された。

 一方、それぞれ出自や組合員の組成が異なる共済団体の場合は、組合員すなわち契約者保護のための監督法制・根拠法令が団体によって異なっているという大きなネックがある。現実問題として、契約者保護の根拠法令や監督法制の異なる団体間での契約移転もできなければ、共済団体横断のセーフティネットのあり方など議論のしようがない。農協法に基づく共済団体の組合員に対し、生協法に基づく共済団体の組合員保護のために付加掛金を徴収することはできないだろう。

 法令比較表は保険業法、簡易生命保険法と、協同組合保険の根拠法令である農協法、生協法について、本法および政省令における「法令」の単純比較である。監督官庁における行政内通知・通達の類は勘案していない。よって、無認可共済には規制が無いが、生協法の保険計理人制度、健全性基準、募集規制の項目については監督官庁による行政内通知による監督規制が行われている。

 責任準備金の項目では、生協法に基づく複数の共済団体が存在するものの、生協法には保険業法・内閣布令・内閣総理大臣告示にわたる計算基礎の細則にみられるような標準責任準備金制度がない。JA共済は農協法に基づく単独共済のため、複数団体を対象とする標準責任準備金制度は不要だが、改正農協法では将来収支分析による追加責準の規定が法定化され、その他の主要項目を含め年度内に保険業法並みの政省令が整備される見通しで、来年度から監督規制・経営体制ともに保険会社同様のレベルになる。
 健全な保険運営に不可欠な責任準備金の積立や将来収支分析を行うアクチュアリーの体制について、保険業法と改正農協法には保険計理人規定が置かれている。政府保証のある簡保法には無く、生協法にも当該法令は置かれていない(終身共済・年金共済等の取扱に関連して、厚生労働省の通知がある)。
 ちなみに、アクチュアリーの数は日本生命約60人、政府保証のある郵政省4人前後、全共連5人、その他共済大団体はごく少数存置するかまたはアクチュアリーファームに委託している。保険運営の要の機能すら自前で整備できない実態を利用者、組合員は是とするはずもない。
 また、生協法の利用者保護の要綱もやはり行政通知によるものである。

生協法の共済団体数が多いのに対して、その主要事項の監督規制の相当部分において法令化されておらず、いまなお行政通知行為(準法律行為的行政行為)が慣例化している。
 これは昭和14年の保険業法制定以降、市場が変化しているにもかかわらず約半世紀にわたり抜本改正を行わず、大蔵省によるその都度対応の護送船団的な通達行政に唯々諾々と身を委ねた結果、経営のリスク感覚が失われ、皮肉にも新保険業法の施行による護送船団行政の終焉とともに相次ぎ破綻した生保会社の事例を直視すべきだ。
 通知・通達による裁量行政に身を委ねることは、共済団体の自律的かつ健全度の高い共済経営を阻害する。組合員保護の面から早急に改正農協法同様の法規定を行う必要がある。根拠法令を整備することで組合員保護がかなえられるばかりでなく、まさに役所の裁量によらない自主的で自律的な共済経営が実現する。

 これら行政通知については保険業法施行規則改定時におけるパブリックコメントの開示・集約も行われず、協同組合保険運営のステークホルダーすなわち利用者・組合員による多様な意見が反映される機会もない。共済協会加盟会員団体の組合員数がすでに6000万人を超えており、国民の成人人口に比しそれはまさに国民的な大集団である。そしてその多くが民間保険加入者とも重複加入している実態をも直視すれば、組合員が全国に及び主要種目において民間保険に倣った保険制度を導入している大団体においては、もはや所轄官庁による縦割りの通知・通達規制や、個別団体における身内のイデオロギー論、あるいは創生期以来の伝統的な組合委員自治による相互扶助の共済論の懐古で、組合員満足が実現するはずもない。共済団体は常に広く社会公衆のコンセンサスを得て経営の健全化と経営品質の向上を指向すべきである。

(3)共済セーフティネットの法的フレームワーク
 こうした共済規制の実態を踏まえて、共済セーフティネットを構築する段取り、フレームワークを考えるならば、破綻懸念がなく、保険業法とほぼ同レベルの改正農協法を整備したJA共済については、全共連が傘下JA共済組合のセーフティネット機能を一定程度担っているものとして、ひとまず法制面の懸念はない。
 取り急ぎ、今後生き残りが厳しくなるであろう生協法、中小企業等協同組合法に基づく共済諸団体組合員のために、これらの監督法令を改正農協法にならって整備し、経営品質の標準化を図るとともに、両法それぞれに契約移転、条件変更、組合員保護機構等のセーフティネット規定を法定する必要がある。

 次に、可能な限り農協法、生協法、中小企業等組合法などの共済事業に関する監督法令の整合化、標準化を進め、諸団体の経営品質の標準化を図ったうえで、保険業法に準拠した共済事業法を制定し、JA共済を含む各共済団体共有のセーフティネット法令を織り込み、共済契約者保護機構を存置する方向が考えられる。ただし、この場合は、共済協会ベースで共済契約量の9割を占め、破綻懸念のないJA共済が他の共済のためにあらかた資金拠出をする形となるので、これに参加しないケースもあり得る。
 さらには、保険業法と相当程度整合する共済事業法の監督規制下で共済諸団体の経営品質が標準化され、かつ日本生命に次ぐ事業量のJA共済が参加する共済契約者保護機構が整備されるならば、持続的な財政資金の受け皿として生損保契約者保護機構との統合も将来は考えられない話でもない。

 端的に、国民太宗にわたる組合員保護を前提に各根拠法令の格差是正を進めるならば、募集人登録規制以外は共済事業法、保険業法とのあらかたの糊代合わせが可能であり、すなわち長期的に保険法制の一元化は可能と考える。将来的には保険業法の中で、協同組合保険に関する法制を措置する方向も検討の有力な選択肢となろう。

(4)全共連と子保険会社間の代理代行モデルについて
 ミレアグループ離脱により共栄火災は大昔の創立当初の姿に立ち戻ったと言える。後付で改正農協法での子会社規定が法定されたが、その意味は大きい。農協法に基づき組合員自治の原則で特定集団内の相互扶助を行う協同組合保険の子保険会社が、保険業法の規制化で現実に不特定多数に対して営利保険を販売しているわけで、その親子間で代理代行が行われるという希有な実例が現実にここにある。これすなわち協同組合保険事業と保険事業との組織的融合である。

 将来、監督規制の標準化により各共済団体の経営品質が揃ってきたら、協同組合が生保・損保子会社を共同出資で設立または買収し、親子間で業務・事務の代理代行を行い、募集は募集人登録が不要な協同組合が行い、商品開発・事務処理・事故処理その他諸々の保険実務を子生保・損保会社が行えば、生命・損害のリスク遮断が図られ、子保険会社には保険業法に基づくセーフティネットが存置されているので、契約者すなわち組合員保護が図れる。製販分離による協同組合のローコストオペレーションも実現する。 現在の生保会社における提携団体のありようと同じく、子保険会社が各協同組合の保険集団に応じた商品・価格体系を供給することも可能だ。協同組合による100%子会社として、最大受益者の株主である協同組合が子会社統治するため、協同組合による相互扶助の事業運営がかなえられる点にも注目したい。(04年11月1日、山野井良民)

●<参考>金融審報告「根拠法のない共済への対応について」
 金融審議会金融分科会第二部会は12月14日、無認可共済への規制に関して下記の報告をまとめた。
<根拠法にない共済への対応について>
1.はじめに
 根拠法のない共済への対応については、本年1月に開催された金融審議会金融分科会第二部会において、「保険に関する主な検討課題」の一つとして検討することとされ、当部会において検討項目を示すとともに、具体的な検討については当部会の下に設置されている保険の基本問題に関するワーキンググル−プにおいて行うこととされた。
 同ワーキンググル−プでは本年4月以降約半年間にわたって検討が行われ、本年10月、当部会に対し、「「無認可共済」への対応に係る論点整理」が報告された。当部会は、その報告を踏まえてさらなる討議を重ね、根拠法のない共済への対応についての考え方を以下の通りとりまとめた。

2.現状
 わが国において特別な法律上の根拠なく任意団体等で共済事業(特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業をいう)を行う、根拠法のない共済が多数存在している。総務省の調査結果報告(注:「根拠法のない共済に関する調査結果報告書」平成16 年10 月総務省行政評価局)によれば、その数は任意団体として行うものを中心として最近5年〜10年で急増している。
 共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営む者が将来の危険に対して共同して生活の安定を図ろうとするものであり、基本的には保険業法による規制は不要とされてきた(注:保険業法は不特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業を規制の対象としており、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業には適用されないこととなっている。なお、金融商品の販売等に関する法律等は、共済事業にも適用がある。根拠法を有する共済(農業協同組合(JA:農業協同組合法)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)等の行う共済)については、保険業法に代わる特別の法律の規制を受け、主務官庁の監督を受けて事業を行っている)。しかしながら、近年、根拠法のない共済の規模や形態の多様化が進み、伝統的な共済と異なる形態のものが増加している状況にあり、特定の者を相手方として保険の引受けを行う共済事業と、不特定の者を相手方として保険の引受けを行う保険業とを区別することが容易でなくなりつつある。
 根拠法のない共済については、@「比較的限られた顧客を相手に保険会社の提供しない特定のリスクに対応した保険や低廉なリスク移転の手段を提供するといった特定のニーズに対応した商品提供の担い手となっている」、A「事業の多様性がある、すなわち、見舞金程度の給付から保険会社と同程度の高額給付までの多様な商品を、自ら保険の引受けに係るリスク保有を行うもの、再保険等によりリスクの大半を保険会社等に移転するものなど多様な事業形態で提供している」、B「連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり契約者などの保護の観点から問題がある」等の指摘がある。
 また、総務省の調査結果報告においては、行政上の課題として、根拠法のない共済の実態を個別に継続して把握するため、また、問題のあるものについて適切な対応を図るための仕組みが整備されること、募集方法等の適正性や財務情報の開示等が確保されるべきこと等の指摘がなされた。
こうした点を踏まえて、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からあるべき規制の姿を議論していくことが重要であり、また、その際、現実に事業を行う根拠法のない共済が広範囲に存在している現状も勘案した上で検討を行う必要がある。

3.基本的考え方
(1)公的な規制の対象とすべき範囲
根拠法のない共済に対する規制を導入する場合は、どこまでを公的な規制(注:ここで言う「公的な規制」とは、あくまで保険や共済についての公的な監督等に係る規制のことであり、当然のことながら、その対象外とされる場合においてもその他の法令(例えば刑法や出資法等)の適用を妨げるものではない) の対象とすべきかが問題となる。構成員が真に限定されるものについては、特定の者を相手方とする共済として、従来どおり、その運営を専ら構成員の自治に委ねることで足り、規制の対象外とすべきと考えられる。これに該当するものとして、小規模なもののほか、労働組合がその組合員等を相手方として実施するもの、企業がその従業員等を相手方として実施するもの等があるとの意見があった。規制の適用範囲を定めるに際しては、基準の明確性や規制逃れの防止の観点も踏まえ、規制の実効性の確保に十分配意することが重要である。
 上記の範囲を超える根拠法のない共済については、構成員の自治による監督のみを理由に契約者などの自己責任を問うことが適当でない領域であって、契約者の保護などの観点から一定の規制が必要である。
 なお、総務省調査においては、法人の運営に行政機関の一定の関与のある公益法人等が行う共済についても調査結果が示された。その活動内容は多岐にわたっており、こうした共済についても、仮に構成員が真に限定されない場合があるのであれば、契約者などの保護の観点から一定の規制の適用があることが望ましい。
 ただし、監督行政庁としてどのような主体が相応しいかについては、公益法人の多くが都道府県の所管となっている実態や現在政府において公益法人制度の抜本的改革について検討が進められていること等を踏まえると、国と地方の行政責任の分担のあり方や公益法人に対する行政庁の関与のあり方等の観点から、適用すべき規制の内容とあわせ、引き続き検討が必要である。
(2)新たな規制の基本的枠組み
@検討の視点
 根拠法のない共済で新たに規制の対象となるものについては、契約者などの保護や公正な競争条件の観点からは、保険会社の提供する商品と同様の商品が提供される場合には基本的には保険業法の規制が適用されるべきである。ただし、契約相手方が限られることに伴う販売ロットの小ささや特殊なリスクの把握の問題等のために保険会社が必ずしも提供しない商品を提供する等の特定のニーズに対応した商品提供の担い手としての役割、事業規模・態様の多様性を踏まえると、その全てについて幅広い保険商品を大規模に提供し得ることを想定した保険会社と同様の規制を課すことは、好ましくない。
 したがって、契約者などの保護、保険会社との公正な競争条件、特定のニーズへの対応といった観点を総合的に勘案しつつ、一定のメルクマールを定め、その事業の特性を踏まえた規制を導入することについて検討する必要がある。
A契約相手方の「特定性」の程度
これまで保険業法の規制の要否のメルクマールとされてきた契約相手方の「特定性」については、構成員が真に限定されるものを列挙し公的な規制の適用外とすることに加えて、公的な規制の対象とする範疇に属するグループの中でも、例えば、(ア)団体への加入の要件や他の活動との関連、(イ)保険募集の態様、(ウ)事業規模などに関して、一定の具体的な基準を設け、保険会社規制と異なる規制を導入する場合の基準とすることも考えられる。
 このうち、(ア)団体への加入の要件や他の活動との関連については、形式要件として一定の具体的な基準(例えば入会金等の額や他の事業の実施要件等)を策定することも考えられるが、その場合、活動の実態の実質的変更を伴うことなく予め定めた形式要件に該当するように加入要件等を設定するような場合も考えられ、要件自体が形骸化する可能性がある。また、(イ)保険募集の態様についても、仮に団体の構成員以外の者に対する保険募集を行なわないことを要件としても、団体への加入の勧誘自体が自由に行われれば形骸化の可能性がある。こうした点を踏まえると、これらの要件については、相当程度個別・具体的なものでなければ異なる規制の基準とすることが困難であり、むしろ構成員が真に限定されるものとして公的な規制の対象外とすべきものを個別に検討する際に勘案することが適当である。
 他方、(ウ)事業規模については基準の明確性があり、潜脱行為防止のための制度4的工夫を行えば形骸化の可能性は低い(注:形式的な団体の分割による潜脱行為を防止するため、法人格の取得を要件とした上で、例えば、法人の分割等について、現行の保険会社と同様、認可制とする仕組みの下で適切な対応が図られる必要がある)。したがって、保険会社と異なる規制を導入する場合のメルクマールとして事業規模を中心とすることが考えられる。その際、契約者数により事業規模を勘案する考え方もあるが、保険商品の保障額も様々であることや引受けリスクの全体の大きさも保険事業を実施していく際には重要であることを勘案すると、むしろ保険料収入等を用いる方が適当である。
 なお、特定のニーズに対応した保険商品の円滑な提供という観点からは、幅広い保険商品を大規模に提供し得る保険会社と異なり、事業規模が小さいものでも参入可能な制度設計が望ましいが、他方で、事業規模が小さい場合は保険収支が安定しないことや適正に取扱える保険商品には自ずと制約があることを踏まえると、契約者などの保護の観点から、取扱い商品に一定の制約を設けることが必要である。
B取扱い商品
 取扱い商品が、保険期間が短期のものであって、保険金が見舞金、葬儀費用、個人の通常の活動で生じる物損等の填補程度に留まる等、少額短期保障に限定される場合には、以下の理由から契約者への十分な説明を前提に保険会社と異なる規制とすることが考えられる。
(ア)現行の保険会社と異なり、事業者は通常の生命保険契約で見られるような長期契約に伴うリスクや損害保険契約で生じ得る巨大なリスクの引受けを行うものでないこと
(イ)契約者側も長期の契約継続を前提としておらず、事業者の破綻等の場合に生じる損失が限定されるのであれば、契約内容や事業者の財務状況についての適切な情報開示が行われることを前提に契約者などの自己責任を問うことも可能であると考えられること
 なお、短期の契約であっても、契約者が保険料又は保険金の水準の見直しなく契約を更新できる場合には、実質的に長期契約の性質も有することから、こうしたものについては、保険期間終了毎に保険料又は保険金の水準が見直される可能性がある旨約款に記載されていることを要件とすることが考えられる。
 また、一人の契約者が複数の契約を行うような場合を想定し、保障の合計額に上限を設けること、更に、保険会社と比べて事業規模が小さく保険収支が安定しない場合も考えられることから、保険事故が多発する等の一定の要件に該当する場合には予め約した保険金の水準が削減される旨約款に記載されていることを要件とすることが必要な場合もあると考えられる。
C一定の事業規模の範囲内で少額短期保障のみ提供する事業者
 契約者などの保護、保険会社との公正な競争条件の確保、特定のニーズに対応した
保険商品の円滑な提供の観点等を総合的に勘案すると、一定の事業規模の範囲内で、保険期間が短期のものであって、保険金が見舞金、葬儀費用、個人の通常の活動で生じる物損等の填補程度に留まる等少額短期保障のみの取扱いを行う事業者については、保険業法において、事業の特性を踏まえた一定の特例を設けて対応することが考えられる。

4.少額短期保障事業者(仮称)に係る規制の具体的内容
 一定の事業規模の範囲内で、少額短期の保障のみを提供する事業者(以下「少額短期保障事業者」という)については、その業務の特質を踏まえて、以下のような規制の枠組みを保険業法に特例を設けて手当てすることが考えられる。
(1)参入規制等
 取扱い商品が少額短期保障に限定されること等を踏まえ、参入規制を免許制から登録制等に緩和する。権利義務関係を明確にし、契約者などの保護を図る等の観点から、法人格及び一定の財産的基礎があること並びに的確な人的構成を有することを要件とする。
法人の形態については、契約者などの保護の観点を踏まえ、@会社法の規定等及び保険業法固有のガバナンス規定(保険契約者の計算書類への関与、株主の帳簿閲覧権の排除等)を適用させた株式会社、A社員相互の保険を行うことを目的とする社団であって、契約者などの保護のためのガバナンス規定等が保険業法に整備されている相互会社のいずれかとすることが適当である。
 なお、一般に保険会社により提供される保険への加入が困難な者を相手方とする場合など、相互扶助的な色彩が強く事業の実施が特に求められるものについては、公的な規制の対象とする場合においても、事業の実施主体の適格性等は他のものと同様に厳格に確認すべきであるが、事業実施の必要性の高さに鑑み、財産的基礎等の参入規制の面で事業の開始・継続自体を著しく困難にしない等の配慮を行う場合も必要と考えられる。
(2)商品審査等
 保険会社と同様、事業方法書、普通保険約款、保険料等の算出方法書の作成及び提出を義務付ける。ただし、少額短期保障のみ取扱い、契約更新時等事後的な保険料の是正が容易であることを踏まえ、行政庁による事前商品審査は、@普通保険約款の内容が契約者などの保護に欠けるおそれがないか、公序良俗に反しないか等、必要最小限のチェックに留めることとし、A保険料等の算出方法書の妥当性については、事業者段階での一定の専門的知識を有する者の関与を前提として、決算報告時等における実際の保険事故の発生状況等を踏まえた事後チェックを行うこととする。
(3)責任準備金の積立等
 責任準備金等は、保険契約上の義務を履行するために会計上適正に計上されるべき負債であり、保険会社と同様、支払備金、未経過保険料等の責任準備金の積立てを義務付ける。その適切な計算・計上を確保するため、保険計理人の関与を義務付ける。
また、契約者などの保護の観点から、参入時において一定額の保証金の供託を義務付け、事業規模に応じて供託額を上乗せする仕組みとする。
(4)兼業規制
 既存の事業者の多くも共済事業を目的として行う団体を別に設立していることや破綻時の契約者などの保護の観点を踏まえ、他業は、実施の必要性が特に高くその事業規模が相当程度小規模な場合等特段の事情のない限り認めないこととし、専業を原則とする。
(5)資産運用規制
 事業規模や取扱い商品が限定されることにより保険会社のように大規模な資産を保有することは想定されないこと、事業規模が小さい場合、特にその財務の健全性の確保に配意する必要があることを踏まえ、保険会社のような幅広い資産運用を認めず、流動性の高い預金や国債等による運用を義務付ける。
(6)情報開示
 保険会社と同様、事業年度ごとに業務・財産の状況に関する説明書類を作成し、約款等とともに営業所に備え置くこととする。また、開示される書類の適正性を確保するため、一定以上の規模の事業者については外部監査を義務付ける。
(7)募集規制
 保険会社と同様、募集の際の重要事項の説明や虚偽表示の禁止等を定めた募集に係る行為規制を課し、また、保険募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適正性を確保する。
な お、契約が更新されるものについては保険期間終了後に保険料又は保険金の水準が見直される可能性があること、保険事故が多発する等の一定の要件に該当する場合は保険金が削減される可能性があることについて約款への記載を義務付けることとする場合は、その記載内容が契約者に十分説明される必要がある。
(8)検査・監督
 法令の実効性を確保するため、行政当局の検査・監督の対象とする。その際、事業規模も勘案しつつ、支払い能力の充実の状況が適当かどうかの監督も行う。
(9)セーフティネット(契約者保護機構の設立・加入の要否等)
 少額短期保障事業者については、@取扱い商品及び資産運用を少額短期保障及び預金等に限定することにより、予定利率リスクや資産運用リスクは制度上排除されること、A保険事故が多発した場合等に保険金が削減される旨の約款を義務付ければ、保険の引受けに伴い保険収支に生じるリスクは相当程度抑制されること、B事業規模に応じた保証金の供託を義務付け、事業者の万一の破綻の場合に契約者などに生じうる損失が限定されることを前提とすれば、セーフティネットを設けないことも考えられる。 なお、この場合、募集に際してセーフティネットがない旨の説明を義務付け、保険会社との違いを明確にすることが必要である。

5.既存の事業者についての対応
 既存の根拠法のない共済について、上述のような新たな規制の枠組みを適用する場合には、現に広範囲の契約者が存在していることを踏まえ、契約者などの保護及び移行の円滑化の観点等から、速やかな適用が必要な規制と一定の移行期間経過後適用することが適切な規制とに区分することが適当である(注:以下の記述は、現行法の下で特定の者を相手方として保険の引受けを行っている事業者を念頭に置いたものであり、不特定の者を相手方として保険の引受けを行っている者を対象とするものではない。横断的な規制の整備が急がれるべきとの指摘があった)。
(1)移行期間中の規制の枠組み
 既存の共済事業は任意団体の形式で行われていることが多いと考えられるが、新たな規制の枠組みにおいて、少額短期保障事業者又は保険会社のいずれを目指すにせよ、新たに相互会社又は株式会社を設立し、事業を移転する必要があり、円滑な移行のための一定の猶予期間(移行期間)が必要である。
この場合、連鎖販売取引等十分な適格性を有しない者による販売方法がとられているものや財務基盤が脆弱と見られるものなどがあり契約者などの保護の観点から問題があるとの指摘があることを踏まえ、重要事項の説明や虚偽表示の禁止等を定めた保険募集に係る行為規制は移行期間中であっても速やかに適用することが望ましい。
 その際、これらの行為規制違反は、刑事罰の対象ともなっているが、行政庁により、法令違反の有無の確認及び問題がある場合は是正を命ずることができるよう、検査・監督の対象とするための法整備が必要である。
 また、事業者が販売者の不適切な販売方法につき責任を負うことが明確にされる必要があり、現行の保険会社と同様に、募集人の不適切な説明等により契約者に損害を生じさせた場合に使用者としての賠償責任(使用者責任)を負うことを明確にすべきである。
 なお、募集の適正化に関連して、金融商品においては連鎖販売取引自体が禁止されるべきとの意見があった。また、消費者保護の観点から、金融商品の種類を問わず、横断的な規制の整備が急がれるべきとの指摘があった。
(2)移行期間終了後の規制の枠組み
@基本的枠組み
 既存の共済事業者で事業を継続する者は、上述の移行期間が終了するまでの間に、少額短期保障事業者又は保険会社として事業を行うための登録、免許等を受ける必要がある。その後は取扱い商品の内容に応じて、商品内容の確認、一定の基準に基づいた責任準備金の積立等及び財務状況の開示、資産運用規制、財務規制、保証金の供託を含めた契約者などの保護のための仕組みが適用される。また、募集規制についても、募集人登録を要件とすることなどにより、保険募集を行う者の適格性の一層の確保が図られる。
A激変緩和措置
 移行期間終了後の規制の基本的枠組みは上述のとおりであるが、規制の枠組みが大きく変更されることを踏まえ、移行期間終了後も更に、以下のような激変緩和措置を設け、円滑な移行に一層配意することが考えられる。
(ア)法人格について
 現にNPO法人等の法人格を取得して事業を実施している既存の団体については、株式会社又は相互会社への移行や兼業規制の適用等について一層の配意を行う。
(イ)保険会社の免許申請について
 移行期間が終了するまでの間に保険会社の免許申請を行う者については、最低資本等の規制(現行10億円)について、一定の猶予期間を設ける。
(ウ)再保険等によるリスク移転について
(a)再保険等によるリスク移転に係る時限措置
 少額短期保障事業者と保険会社という二者択一の枠組みは、再保険その他の契約によりリスクの多くを他の保険会社等に移転する事業形態の一部には必ずしもマッチしない場合もあると考えられるが、こうした事業形態については、特定のニーズに対応した商品提供の担い手としての機能、再保険等に依存する場合の問題点等について、実態を十分に把握した上で慎重に検討する必要(注:再保険等に依存する事業形態については、特にリスクの性質に様々な形態のある損害保険の分野において販売ロットや特殊なリスクの把握の問題等のために保険会社が必ずしも対応できない分野について、共済が一定のリスク分散を図りながら、独自商品を提供する場合等に一定のニーズがあるものと考えられる。また、現行の保険会社の財務規制においても行政庁の監督下にある他の保険会社に再保険をした場合に責任準備金の積立を控除できるとされるなど再保険により一定の支払い能力を担保することを認める考え方をとっている。したがって、適切にリスク管理を行えば、保険会社並みの自己資本がなくても少額保障を超える比較的多額な保険商品の提供も可能と考えられる。しかしながら、他方で、自ら引受けたリスクの大半を他に移転するという事業形態については、リスク移転先の保険会社が破綻した場合に契約者への確実な給付が確保されない等の問題があり、再保険先が適切に業務運営を行っているか、自らの流動性リスクは適切に管理されているか、引受けた保険契約と再保険の契約期間はマッチしているのか、契約者はこうしたリスクについて十分な認識があるのか等の点について十分な検証が必要である)があり、現時点において保険業法の中で恒久的な制度として位置付けることは問題がある。現実的な対応としては、既存の事業者についての特例として、一定の期間(例えば5 年程度)に限り、保険金が高額でないものに限った上で、再保険等により保険会社にリスク移転が行われる場合は、少額給付の範囲を超える保障についても少額短期保障事業者と同様の規制の枠組みの中で業務を行えることとする時限措置を設けることが適当である。
 なお、この場合においても、契約者などの保護の観点から、再保険先は原則として行政当局の監督が及んでいる保険会社等である必要があり、また、再保険先の保険会社名など再保険契約の内容について、契約者に十分に説明される必要がある。
(b)再保険等によるリスク移転に係る時限措置終了後の事業のあり方
 法施行後一定の期間、再保険等により少額短期保障事業者の規制の枠組みの中で業務を行う者については、現時点においては、時限措置終了後は、@特にニーズの強い分野に特化して少額短期保障事業を継続する、A保険会社等の代理店等も兼ねて他の保険会社等の商品に自ら組成する少額短期保障商品を上乗せ等する形で組み合わせて提供する、B保険会社の免許を取得し幅広い商品を提供する等の選択肢が考えられる。
 上記以外の選択肢の必要性については、時限措置が終了するまでの間に、下記の規制の見直しの中で検討されるべきである。
6.規制の見直し等
 当部会としては、これまでの審議において、根拠法のない共済について現時点で利用可能な情報をできる限り活用し、本報告の取りまとめを行ったが、総務省の調査結果報告等にもみられるとおり、現状においては未だ実態の全貌を把握しきれていない部分もあると考えられる。したがって、将来的なあるべき規制の姿としては、今回取りまとめられた新たな規制の枠組みのもとで更なる実態把握を行い、制度施行後一定期間(例えば5年を目途)経過後にその妥当性の検証を行うことが不可欠である。
 具体的には、新たに行政当局の監督対象となる事業者の事業の状況や保険会社への再保険等に依存する場合に生じ得る問題点の整理、保険会社の提供する商品の状況等を踏まえて、少額短期保障事業者の業務範囲や事業実施主体の見直し、保険会社規制の見直し、その他別途の法整備の要否等、保険業法の適用のあり方について幅広く検討を行い、必要な措置を講ずることとすべきである。
 なお、新しい規制の枠組みの実効性が確保されるよう、行政庁における体制整備が必要であるとの指摘があった。


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