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日本郵政・かんぽ生命



●日本郵政グループの業務運営内容と見通し
〜保険事業分野を中心に業務計画より抜粋(07年4月27日)
 日本郵政(株)は4月27日、郵政民営化法第163条第3項の規定に基づき、内閣総理大臣及び総務大臣に対し、「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画」を認可申請した。

<日本郵政グループの業務実施計画の概要>(保険事業分野を中心に抜粋)

T.持株会社・日本郵政(株)の業務運営内容と見通し
1.グループ経営理念:これまで公の機関として培った安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性・効率性を最大限発揮し、お客の期待に応え、お客の満足を高め、お客とともに成長する。経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献する。
2.グループ経営方針(一部):郵便銀行((株)ゆうちょ銀行)及び郵便保険会社((株)かんぽ生命保険)の株式の早期処分を目指す。持株会社である日本郵政(株)についても金融2社と同時期の上場が可能となるよう準備を行う。
3.グループ・ガバナンス:当グループは、傘下に郵便事業、銀行業、保険業、及び代理店業である郵便局事業という、性格の異なる事業会社を擁し、幅広いステークホルダーを有する。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式については、平成29年9月30日までにすべて処分することとされている(郵政民営化法62条)。早期の自立を果たすため、2社は遅くとも民営化後4年目、可能であれば、東証の審査基準の特例が認められることを前提に、民営化後3年目の上場を目指し、5年間で処分する方針。上場に向けて、子会社の独立性を確保する必要があることから、日本郵政は金融持株会社として求められる経営管理態勢と、これら金融2社の持株会社からの独立性とのバランスを考慮し、統制を行う。また、日本郵政自身も金融2社と同時期の上場が可能となるよう準備し、市場規律のもとで経営を行うことを目指す。
 民営化時点で、日本郵政は経営の重要事項に関してグループ基本方針を定めて各社にその遵守を求め、グループ全体に重大な影響を与える事項や経営の透明性確保に必要な事項については、日本郵政の個別の承認または報告を求めることにより、グループ経営管理を行う。こうしたグループ経営管理の運用については、金融2社の上場、グループ各社の業務や経営環境の変化に応じて適時見直しを行う。
4.長期戦略ビジョン:ゆうちょ銀行、かんぽ生命の2社は完全民営化に向けて金融機関に求められる厳しい顧客保護、投資家保護、公正競争といったルール・規律を守り、また、リスク管理、投資マネジメント、金融商品開発といった専門性を高めつつ、それぞれ自立した金融機関への転換を進める。
 郵便局(株)は、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の完全民営化が進むなかで、将来的にも郵便局ネットワークを維持していくことが課せられる。郵便事業会社、金融2社が重要なパートナーではあるが、これらの会社への依存を前提にするのではなく、金融代理店として第三者の金融商品を仕入れ、販売する自由度を最大限活用して、全国のお客に新しい商品・サービスを提供し、また、全国ネットワークを活用し新たなサービスを付加していくことで、自立の道を歩む。
@第1ステップ:グループ各社がそれぞれ民間企業としての能力を高め、企業基盤を確立する。金融2社の遅くとも民営化後4年目、可能であれば3年目の上場を目指すとともに、日本郵政についても金融2社と同時期の上場が可能となるよう、2社と同様の準備を実施する。
A第2ステップ:戦略的投資を加速しつつ、グループ各社の自律的成長を実現する。金融2社の完全民営化を実現すると共に、各社が収益源を多様化・強化し、持続的な成長を実現する。
B第3ステップ:民営化移行期間終了後の新たな成長軌道を目指す。
5.組織体制と機能:日本郵政は3つの機能を有する。コーポレートセンター機能はグループ各社に対する経営の管理・支援を行う。共通事務受託機能は各社の共通事務を集中化することによりグループの効率経営に貢献する。事業運営機能は経営改善に取り組み、効率化を着実に推進する。本社は郵政公社本社ビル(東京都千代田区)に置く。
6.財務状況
(1)日本郵政(株):単体の財務状況は以下の通り。郵政公社から承継する資産は9兆4,580億円を見込む。うち、子会社株式は9兆670億円(うち、ゆうちょ銀行7兆6,670億円、かんぽ生命1兆円)。一方、公社から承継する負債は1兆5,190億円を見込む(主な負債は退職給付引当金)。純資産は7兆9,390億円。発行株式は1億5,000万株を見込む(民営化時は政府保有)。
(2)日本郵政グループ:グループ合算での財務状況は、総資産338兆8,300億円、純資産7兆9,390億円を見込む。

U.郵便局(株)の業務運営内容と見通し
1.事業環境と課題認識
(1)事業環境:郵便事業株式会社の窓口業務を受託し、また、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の代理店として金融商品を販売する。民営化当初はこれら3社から支払われる委託手数料が同社の主たる収入となる。
 生命保険市場では、伝統的な死亡保障へのニーズが縮小する一方で、医療・介護等の第三分野商品、年金商品などの生存保障へのニーズが高まっている。こうした環境下、かんぽ生命が取り扱う商品は多様な医療・介護保障ニーズに対応した商品が不足しており、主力である貯蓄性死亡保障商品が低金利により、新契約販売が落ち込み、保有保険金額も減少が続いている。近年の新規契約の減少より、今後5年間はかんぽ生命からの委託手数料が大幅に減少すると見込まれる。以上のとおり、郵政事業株式会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命からの委託手数料は減少が見込まれることから、市場環境や顧客ニーズの変化を見据えて、郵便局ネットワークを維持するためにも、代理店としての抜本的な対応を行う必要がある。
(2)課題認識
@郵政事業株式会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の代理店として、3社とも協同で営業戦略を構築し、収益確保に積極的に取り組み、営業力の強化を図るとともに、効率化を進め、生産性、収益性の向上を図ることが必要と考える。
A全国の郵便局ネットワークを活用し、新たな金融商品の代理店販売、小売業、不動産事業などの新規事業を展開し、新しい収益基盤を確立することが必要と考える。
B多数の小規模郵便局を中心とした同社の店舗ネットワークの特性を踏まえ、独自の管理態勢を確立することにより銀行代理業者・保険募集人等としての高い業務品質を確立するとともに、財政報告面を含め、コンプライアンス、リスク管理を徹底し、内部統制を確立することが必要と考える。
C顧客に対しきめ細かくスピーディーな商品・サービスの提供を実現するため、将来を見据えた同社独自のシステムを確立することが必要と考える。
2.事業戦略:事業環境と課題認識を踏まえ、次の戦略の柱を設定し、経営基盤の整備に向けて具体的施策を講じていく。
(1)全国の郵便局ネットワークを生かしたハブアンドスポーク態勢の構築
 全国約2万4,000局のネットワークという強みを最大限生かした営業戦略を展開する。郵便、貯金、保険等と中心とする均一のサービス提供態勢に加え、投資信託に代表される資産形成のための商品について、全国の郵便局ネットワークを生かしたいわゆるハブアンドスポーク構造による連携態勢を構築する。これは、地域の顧客との利用関係が強い少人数局(スポーク)と十分な商品説明の知識を有する専門スタッフを重点的に配置した取扱局(ハブ)とが緊密に連携し、コンプライアンスの徹底を基本としながら、顧客へ最適なサービスを提供する態勢。
 投資信託の取扱局(ハブ)には、ローカウンターを設置し、顧客に十分な商品説明を行える環境を整えた上で、顧客の生活設計や資産形成に対するさまざまなニーズに応え、適切な商品設計やアドバイスを提供できる、高度なコンサルタント力を有する社員を配置する。さらに、変額年金保険等専門的な取扱資格が必要な商品も当該局で取り扱えるよう、社員の育成態勢も整える。
 これによって、地域内の少人数局(スポーク)と取扱局(ハブ)とが連携して、全局参加型で、地域内の多くの顧客に投資信託などのサービスを提供する手法を、全国的に展開する。
 また、社員一人ひとりは各種研修や資格取得等を通じて、顧客への提案力の向上に努めるとともに、保険商品の営業を担当する渉外社員についても、研修等による営業スキルの向上により、機動的な訪問営業や店舗での相談対応ができるよう態勢を構築する。
(2)顧客ニーズに応じた多様な金融商品の積極販売
 郵便局の顧客の多様なニーズに応えることを第一義として郵便局の全国ネットワークを有効に利用するため、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の商品以外も、積極的に採用して販売する。特に、少子・高齢化社会、公的年金制度改革などの環境変化を確実にとらえ、生存保障に対するニーズや、豊かな老後生活に向けた若年・壮年層の長期資産形成ニーズなど、顧客のライフステージやライフサイクルのさまざまなニーズに対応して、最適な商品のラインナップを選定し、提供する。
 具体的には、以下の商品を中心に早期に取扱いの拡大や導入の検討・準備を進める。
 投資信託については最重要商品の一つとして位置付け、ゆうちょ銀行と連携して取扱郵便局の拡大や商品ラインナップの拡充を進め、顧客のニーズに応える。
 損害保険については、民営化時より首都圏の23局において自動車保険の取扱いを開始し、その後段階的に取扱郵便局を拡大する。自動車保険が1年契約主体であるという特性などを生かし、顧客との接触機会を増やし、かんぽ生命商品の受託販売との相乗効果をあげる。
 変額年金保険については、顧客の資産形成や生存保障ニーズに応える投資信託と並ぶ主力商品として、がん保険などの第三分野商品についても、顧客に多様な医療保障を提供する商品として早期の取扱いを目指し、郵便局ネットワークでの販売に適した商品と十分な販売サポートの提供が受けられる提携先の選定を行い、段階的に取扱局を拡大する。
 さらに、かんぽ生命の法人向け保険商品を補完する長期平準定期保険などを始め、その他の生損保商品についても、早期取扱開始に向けて準備を進める。
 以上のとおり、新たな金融商品を積極的に採り入れ販売していくと同時に、顧客情報の利用について顧客の同意を適切に取得することで、顧客一人ひとりへタイムリーで的確な情報提供、商品提案を行う。
(3)業務品質の向上、能率向上等:日本郵政株式会社の100%子会社として、また、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の業務を受託する主たる代理店として、グループ内3社の株式上場の審査に適合できるよう、金融商品取引法に対応した財務報告に係る内部統制の強化に努める。
1人の社員が複数の業務を取り扱えるようにし、顧客対応を能率的に行えるようにする。社員1人ひとりに幅広い知識と技能を習得させ、必要な資格を取得させる。渉外担当社員も顧客の都合に合わせてローカウンターでの対応を行い、また、窓口担当社員も状況に応じて顧客を訪問して営業活動を推進する。適正要員配置を行うとともに、契約社員等の活用推進を含め、多様な雇用形態を導入する。
3.組織体制:コーポレートガバナンスの考え方に基づき、経営に対するチェック、部門間の相互牽制及び内部監査等が健全に機能するよう、事業環境と課題認識、事業戦略を踏まえ、組織体制を次のとおり構成する。社員総数は12万700名となる見込み。
(1)郵便局:営業所として、約2万4,000局の郵便局を設けることとする。郵便局は、直営の営業所である郵便局と、郵便窓口業務の委託等に関する法律により郵便窓口業務等を委託する簡易郵便局の2種類になる。これらの郵便局については、必要に応じ、地域の状況や交通手段の変化に即応した配置の見直しを行い、顧客の利便性の向上に努める。
 郵便局においては、窓口カウンター及び渉外社員を通じて、郵便事業株式会社、郵貯銀行、かんぽ生命、地方公共団体等から委託された商品・サービスを顧客に提供するほか、各種の新規サービスの提供を行う。郵便局の社員は、全体で11万5,600名程度とする。
(2)地区グループ、地域グループ:小規模の郵便局がそれぞれの独自性を生かしつつ、ハブアンドスポーク体制の構築を図るなどして地域のニーズに応えていくため、10〜20局程度の郵便局をもって構成する地区グループを新たに編成する。地区グループは営業力強化と内部管理充実の両面において共同で活動を行う。
 具体的には、地区の営業施策の企画・推進、業務研究会の開催等による業務知識の向上、地域の特性を生かした商品の開発提案、年金相談会、投信相談会などの開催、研修の開催や自主点検等の施策の展開によるコンプライアンスの推進、災害等緊急時の応援要員の派遣等による相互支援などを行う。また10程度の地区グループをまとめた地域グループを設け、地域内の活動の調整や、郵便局の運営に関する支社への意見具申等を行う。
 地区グループ、地域グループ、それぞれの責任者には、能力に応じてふさわしい郵便局長を支社が任命し、一定期間、責任を持って運営に当たらせる。これらを通じて、支社は郵便局に対して、支援・監督を行い、業績と内部管理に関する評価を行い、ガバナンスを明確にする。
(3)支社:郵便局に対する支援・監督を行うため、支社を設ける。民営化当初、支社は北海道、東北、関東、東京、南関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州及び沖縄の13社とする。支社の社員は、全体で3,300名程度とする。
 支社は郵便局の業務をサポートし、適切な指導・管理を行う中核となる組織であり、企画、営業、業務指導、店舗企画及び人事を担当する部署を置き、業務ごとに営業支援、業務指導を行う。
 郵便局に対してよりきめ細かく支援、指導を行うため、支社ごとの状況に応じて、営業アドバイザー、業務インストラクターを、各地に配置するなどして、郵便局や、地区グループ、地域グループの活動をサポートする体制を整備する。
(4)本社:本社には、監査部門、経営企画部門、営業部門、コーポレートサービス部門、コーポレートスタッフ部門、コンプライアンス部門及び郵便局部を置く。
 本社の社員は800名程度とし、本社は、現在の郵政公社本社ビル(東京都千代田区)に置く。
4.損益見通し:純利益の額は、平成19事業年度(2007年10月〜2008年3月)において、150億円を見込んでいる。平成20事業年度以降については、純利益は、平成20事業年度において500億円、平成22事業年度において440億円と漸減した後、平成23年事業年度において490億円に上昇するものと見込んでいる。
 損益見通しの内訳としては、主な収益は、郵便事業株式会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命からの窓口業務の委託による手数料収入となる。
 上記3委託会社からの窓口業務の委託による手数料収入は、平成19事業年度において6,550億円、平成20事業年度において1兆2,940億円、平成23事業年度において1兆2,060億円を見込んでいる。
 かんぽ生命からの手数料については、近年の新規契約の減少傾向から、今後5年間は委託手数料が大幅に減少すると見込んでいる。

V.郵便保険会社の業務運営内容と見通し
1.経営理念:郵便保険会社(株式会社かんぽ生命保険)の経営理念は、次の通り。
 お客とともに未来を見つめて、『最も身近で、最も信頼させる保険会社』を目指す。
2.コーポレートガバナンス:意思決定の迅速化と経営の透明性の向上を図るため委員会設置会社とし、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を設置して、取締役会及び3委員会が経営を確実にチェックできる体制とする。
 取締役会において選任される保険計理人は、保険料の算出方法等の保険数理に関する事項に関与し、責任準備金積立ての健全性や契約者配当の分配の公平性などを確認する。
 経営全体に係る業務執行内容については、代表執行役が決定することとする。また、協議機関として各業務等の担当執行役などで構成される経営会議を設置し、代表執行役の権限事項及び経営に関する重要事項を協議する。
 経営会議の下に専門委員会として収益管理委員会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会、CS委員会、商品開発委員会、事務・システム改革委員会及び人権開発委員会の7つを設置する。
 専門委員会は、経営会議の諮問委員会としての性格を持つとともに、担当執行役の専決事項のうち、他の執行役の担当業務に関連する事項について協議を行い、その結果を経営会議に報告することや必要に応じて経営会議に上程することで内部統制機能を有する。 
 内部統制については、以下の態勢を整備する。
(1)保険募集管理態勢:顧客や社会からの信頼を獲得するためには適正な保険募集管理態勢の確立が必須であることを認識し、かんぽ生命及び郵便局株式会社等の募集代理店の生命保険募集人を対象とした適正募集の徹底に関する教育・研修、受理契約の実地点検、サービスセンターによる書面調査の拡充などに取り組むとともに、それを支える体制を充実させることで適正募集の推進を図る。
(3)リスク管理態勢:生命保険業に係る様々なリスクに対応して、その特性に応じた実効性のあるリスク管理を行うことを経営上の重要課題であると認識し、専門委員会としてリスク管理委員会を設置するとともに、統括部署として本社にリスク管理統括部を設置する。
 リスク管理統括部は、各部署で策定するリスク管理基準の検証を行うとともに、経営陣に対しリスク管理状況の報告等を行うなど総合的なリスク管理を実施することにより、事業経営の健全性の確保を図る。
(4)コンプライアンス態勢:生命保険会社にとって、顧客に保険商品を提供するという社会的責任は大変重く、また金融商品販売や個人情報保護などに関するコンプライアンスの取組は企業の信頼性を高める際の重要なファクターである。経営理念に掲げる「最も信頼される保険会社」となるためには、コンプライアンスを最重要視した業務運営が必要であると認識し、専門委員会としてコンプライアンス委員会を設置するとともに、コンプライアンス推進に関する事項を一元管理する統括部署として本社にコンプライアンス統括部を設置する。
 コンプライアンス統括部は、コンプライアンス推進に関する企画立案・体制整備を行うほか、全社内のコンプライアンス推進の統括・監督、不祥事事件対応や経営陣に対しコンプライアンスの推進状況等の報告を行い、コンプライアンスの徹底を図る。
 また、全国13箇所に設置する統括支店には、本社コンプライアンス統括部員が駐在するエリアコンプライアンス室を設置し、それぞれ管轄エリア(現在の日本郵政公社(以下「公社」という。)の支社が管轄するエリア)内の直営点等のコンプライアンス推進、不祥事事件対応等を実施する。
 このほか、査定審査会を設置し、保険金等支払の審査部署が行った保険金の支払可否の認定などに関し契約者等との紛争が発生した場合において、その妥当性を第三者が中立かつ公平に審査することによって、契約者保護を図るとともに適正な業務執行の確保を図る。
3.事業環境と課題認識
(1)事業環境:生命保険市場においては、少子高齢化及び世帯構成の変化に起因して伝統的な死亡保障へのニーズが縮小する一方で、医療・介護等の第三分野商品、年金商品などの生存保障ニーズが高まるなど、マーケット構造が大きく変化しつつある。
 販売チャネル面においても、従来の営業社員による訪問勧奨といったスタイルとは異なった、通信販売などによるマスマーケティングや平成19年(2007年)12月に全面解禁される予定の銀行による保険商品の窓口販売、来店型保険ショップなどの顧客が自ら足を運び保険を選ぶというスタイルに対応した新しい販売チャネルが台頭しつつある。
また、生命保険会社には、保険金等支払管理の適切性の確保や適合性原則に基づき顧客ニーズに合致した保険商品の販売を行うための意向確認書面の導入など、より高いレベルの契約者保護が求められている。
 更に、生命保険業に限らず、昨今続発している企業の不正な会計処理、不適切な品質管理、不十分な危機管理により企業運営全般へ厳しい目が向けられており、金融商品取引法が制定されるなど企業に対して厳格な内部統制、コンプライアンス態勢の構築が求められている。
(2)このような環境の下、簡易生命保険においては、医療保障ニーズに対応した商品の不足、低金利による主力の貯蓄性商品の魅力低下等による新契約販売の落ち込みが続いた結果、世帯加入率は約10%低下している。
 また、マーケット戦略の不足、営業人材育成の仕組みや効果的な営業支援ツールといった営業支援体制の不十分さなども新契約販売の落ち込みの原因となっている。
 加えて、各種事務の標準化・システム化の実現、開発体勢が脆弱なシステム基盤の改善及び内部統制、コンプライアンスの確立・強化などが主要な経営課題として顕在化している。
 以上を踏まえ、主要経営課題として次の3点を認識している。
@新しい営業モデルの構築:顧客ニースに対応した新商品・サービス開発、営業人材育成、営業プロセスの高度化など新しい営業モデルを構築すること。
A事業インフラの整備:事務・システム基盤、人事・給与制度などの事業インフラの整備を行う。
B内部統制、コンプライアンス態勢の確立・強化:保険業法、金融商品取引法に対応した内部統制、コンプライアンス態勢を確立・強化すること。
4.事業戦略:かんぽ生命は、遅くとも民営化後4年目、可能であれば東証の審査基準の特例が認められることを前提に民営化後3年目の上場を目指し、株式上場に向けた経営基盤整備に取り組んでいく。
 具体的には、3つの主要経営課題に「財務基盤の健全性維持」及び「地域・社会への貢献」を加え、次の5つの戦略の柱を設定し、諸施策を早期に講じる。
(1)新しい営業モデルの構築:事業パートナーである郵便局株式会社(郵便局)チャネル、直営店の法人営業チャネルのそれぞれについて、重要商品、マーケット戦略、営業支援体制等を明確化し、最適な営業モデルの構築を行う。
@郵便局株式会社(郵便局)チャネル:郵便局は「住域・個人マーケット」を中心に「シンプルで分かりやすい商品(小口・無審査・簡易)」を全国の郵便局ネットワークを活かして効率的かつきめ細かく販売していくチャネルと位置づけ、かんぽの特長を活かしつつ顧客ニーズに対応した商品・体制面の改善により新契約販売の確保を目指すこととし、そのために商品開発、マーケット/チャネル開拓、営業プロセスの高度化を郵便局株式会社とともに一体となって推進する。
イ.商品戦略:学資保険・養老保険といったかんぽブランドを代表する商品については、顧客基盤の維持・拡大のため、引き続き販売の主力と位置づける。加えて、医療技術の高度化に伴う短期入院等のニーズやより大きな死亡保障ニーズに対応するため、短期入院・手術にも保障を付加するといった医療特約の改善や加入後一定期間経過した場合の限度額の引上げなど民営化後速やかな業務開始を希望している新商品により収益の拡大を図る。
 また、顧客のライフサイクルに応じてタイムリーに保険商品を販売できるようにするため、普通養老保険や倍型終身保険の加入年齢範囲の見直しを検討する。
 さらに、第三分野の新たな商品については、顧客の生存保障ニーズに適切に応えるため、引受け・支払管理態勢の整備を適切に行った上で、他の生命保険会社との連携を含めた幅広い選択肢の下で商品を開発・提供することを希望する。
ロ.マーケット/チャネル戦略:マーケット戦略としては、幅広い層の顧客基盤を有している簡易生命保険の強みを活かし、郵便局株式会社と協働して、入り口商品である学資保険や養老保険から青壮年向けの特別養老保険、倍型終身保険、年金保険など顧客のライフサイクルに適した商品・サービスをあらゆる世代の顧客層によりきめ細かく提供する。
 郵便局渉外チャネルについては、生産性向上に向け郵便局株式会社と連携して保障性商品(特別養老保険、倍額終身保険)の販売拡大のための施策を講じる。また、郵便局窓口チャネルについては、顧客基盤の維持・拡大に向け、貯蓄性商品(学資保険、養老保険)の販売拡大等の取組を支援する。
 営業目標設定、インセンティブ付加、営業プロセスの高度化等も、上記の商品・チャネルごとのマーケット戦略に沿って実施する。
ハ.営業支援体制:郵便局株式会社がコンプライアンスの徹底を図りつつ営業目標の達成に必要な新契約販売等を確保することを支援する組織として、直営店にパートナー営業部を設置する。このパートナー営業部は、担当する郵便局の営業目標を自らの目標とし、その達成のために郵便局と一体となってコンプライアンスの推進、マーケティング、営業プロセスの高度化及び個々の営業社員の能力に応じた効果的な教育・研修の実施等を行う。
 また、郵便局株式会社の営業社員が商品の販売方法、端末機操作、コンプライアンス、税務などの諸疑問点を簡便に問い合わせできる「郵便局ヘルプデスク」をサービスセンターに設置し、即時対応可能な営業支援態勢を構築する。
 営業プロセスの効率化・高度化を図るため、営業支援ツールの開発、募集関連事務の効率化などのインフラ・環境整備を図る。
A法人営業(直営店)チャネル:直営店の法人営業部は、中小企業を中心とする「法人・職域マーケット」開拓の主力とし、郵便局チャネルと併せて幅広いマーケットをカバーするものと位置づけ、マーケット動向の把握や販売ノウハウ等の蓄積に加えて、営業体制の整備等により、顧客の多様なニーズに応えつつ収益の確保を図る。
イ.商品戦略:従業員の福利厚生を主たる目的とする養老保険を法人向けの主力商品として提供していくとともに、新商品として他の民間生命保険会社から受託することを希望している長期平準定期保険などの経営者向け保険を提供し、企業の幅広いニーズに応える商品ラインナップを拡充することにより、手数料収入の確保を図る。
ロ.マーケット戦略:今後成長が見込まれる中小企業の法人契約をメインとしつつ、法人契約の顧客である企業の職域(個人)マーケットについても法人開拓と相乗効果が発揮できるよう併せて取り組む。新規事業所や職域等の新たなマーケットの開拓に当たっては、郵便局との共同募集、経営者セミナーの共同開催などの見込み客づくりのための施策を実施する。
ハ.営業体制:法人営業を支える基盤を高度化するため、法人データの検索、営業活動の管理、見積書・提案書の作成等の機能を備えた法人営業サポートシステムを早期に導入する。あわせて、法人営業部の営業社員には原則として一人一台LAN端末を配備するほか、モバイルPCも各拠点に配備する。
 また、法人向けの人材育成のため、顧客セグメントに基づく研修など教育・研修プログラムの高度化を図る。その他、今後必要となる法人営業関連のインフラ整備を計画化し、喫緊度の高い案件から取り組んでいく。
 なお、郵便窓口業務等受託者(簡易郵便局)については各局の実情に応じた活性化のための支援を行うとともに、顧客の保険加入に関するスタイルの変化に対応した販売チャネルの多様化に向けた検討を行う。
(2)財務基盤の健全性維持:簡易生命保険がこれまで築き上げてきた財務基盤の健全性を維持し顧客からの信頼を一層獲得するため、内部管理会計の充実に努め、資金運用及びALMを強化・高度化することで、財務の健全性の向上に努める。
@内部管理会計の充実:「保険会社向けの総合的な監督指針」に基づき、保険商品の特性に応じた商品区分と資産区分を設定して適切に区分経理を実施する。特に、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(以下「機構」という。)から受再する再保険契約については、独立した商品区分とそれに対応する資産区分を設定し管理する。
 商品区分等に対応したコストを詳細に管理し各区分に配賦するために、事業費等管理システムを導入する。事業費等管理システムを活用して、販売チャネル別、直営店別の損益管理の手法を確立し財務データをタイムリーに把握することにより、適切に経営管理を行う。
 また、株式上場に向け、月次での責任準備金の計算を可能とするシステムや態勢の整備に向けて取り組んでいく。
AALMの高度化・運用体制の整備:かんぽ生命では、予定利率が固定された負債を長期間にわたり保有することから、健全経営を維持し保険金等の支払を確実に行うために、金利変動リスクを適切にコントロールしつつ、長期安定的な収益を確保していくことが必要。
 このため、サープラス(資産と負債の現在価値差額)を安定的に確保できるよう、資産と負債の金利変動リスクを考慮して、資産全体の最適配分を決定するいわゆるサープラス型ALMに基づく運用を基本とする。具体的には、将来発生する負債キャッシュフローを把握し、円金利資産のキャッシュフローとマッチングさせるとともに、リスク許容度の範囲内で、外国債、株式等のマーケット資産や証券化商品等への運用を補完的に行うことで、安定的な運用収益の確保を目指す。このサープラス型ALM手法の充実及び多年度収支シミュレーションが可能なシステムを整備・拡充することにより、ALMの高度化・精緻化を図る。
 また、現在、生命保険業界では、今後予想される金利上昇を背景に一部商品での予定利率の引上げや契約者配当の増配の動きがある。このような環境下、かんぽ生命は、株式上場に際してその企業価値(経済価値)が市場で評価されることも踏まえ、資産運用力の向上を通じて、経営基盤の強化に努める必要がある。
 そのため、地方公共団体への融資や早期の実現を希望しているシンジケート・ローン、信託受益権方式のABS、株式の本体運用等の運用対象の多様化により、収益機会の拡大を目指すとともに、為替ヘッジ等の運用手法の多様化により、資産運用リスクの適切なコントロールが行える体制を整備する。
 なお、新規業務に関しては、他の生命保険会社と同様の運用対象の自由化を希望しており、主務大臣による認可を得られた後速やかに業務遂行ができるよう、所要の準備を進める。
 また、これらの業務を実施していくためには、資産運用能力の向上が必要となることから、運用業務に精通した人材の確保、研修等による社員育成、人材育成ローテーションの整備を図る。
 さらに、有価証券等の資産管理事務(バック事務)を資産管理信託銀行にアウトソースすることで、運用事務の効率化を進め、戦略的部門への要員の重点配置を実施する。
5.組織体制
 コーポレートガバナンスの考え方に基づき、部門間の相互牽制及び内部監査等が健全に機能するよう組織体制を次のとおり構成する。また、社員総数は5,400名程度となる見込み。
(1)本社:本社は現在の公社本社ビル(東京都千代田区)に置くことし、本社の社員数を700名程度とする。
(2)直営店(統括支店、支店):法人・職域マーケットに対する営業、団体契約管理等の事務及び郵便局株式会社における保険募集の営業支援等を併せて行う拠点として、81箇所の直営店を設置し社員数を2,300名程度とする。
 直営店は、現在、公社の簡易生命保険の法人・職域営業部署が置かれている郵便局を中心に、原則として、既存の郵便局舎等公社の施設の一部を利用して店舗を設けることを予定している。また、来店型店舗としての機能は持たず、現在の郵便局の保険窓口の機能は郵便局株式会社(郵便局)に引き継がれる。
 直営店には、法人・職域マーケットを中心に営業を行う「法人営業部」、職域団体等の契約管理事務を行う「業務部」、郵便局等に対する保険募集に係る営業支援及びコンプライアンス推進等をおこなう「パートナー営業部」を設置する。
 直営店のうち13箇所は、統括支店と位置づけ、上記の機能に加え、エリア内の郵便局株式会社の支社との連絡・調整、営業戦略の企画・調整を行う「企画部」、営業社員等の採用事務や地方公共団体貸付(経過措置として行われる政府資金としての貸付けに限る)に関する事務等を行う「総務部」を設置することでエリア内の事務効率化を図るとともに、本社コンプライアンス統括部直轄の「エリアコンプライアンス室」を設置する。
 郵便局株式会社(郵便局)に対する支援は、本社レベルでお互い営業目標等について調整を行い、統括支店と郵便局株式会社の支社間で郵便局等の支援方針や研修計画などを相談した上で、直営店のパートナー営業部が実施する。
(3)サービスセンター:保険の引受け・保険金等の支払審査事務、代理店事務のサポート、顧客の相談などの事務を行う本社組織の一つとして、サービスセンターを5箇所設置する。
 なお、現在ある公社の5箇所(仙台、東京、岐阜、京都、福岡)の「簡易保険事務センター」がサービスセンターとなる予定で、サービスセンターの社員数を2,400名程度とする。
(4)コールセンター:顧客からの問い合わせや相談などを承るコールセンターを1箇所設置する。現在ある公社の1箇所(沖縄)の「かんぽコールセンター」を人員・体制面で充実させる予定。
(5)代理店:郵政民営化法弟9章第3節の規定の適用を受ける間は、業務の健全、適切かつ安定的な運営を維持するための基盤となる生命保険募集人への継続的な業務の委託が生命保険業の免許を付与する条件とされ、基本計画においては郵便局株式会社に対し保険募集を委託することが義務付けられている。
 郵便局株式会社への業務委託に係る手数料体系については、新契約の募集等の業務に対して支払う「募集手数料」、保有契約の維持管理業務に対して支払う「維持・集金手数料」等からなる体系とし、民間事例等に準拠した適切な内容とする。
 なお、郵便窓口業務受託者(簡易郵便局)については、かんぽ生命が直接保険募集の委託を行う(保有契約の維持管理業務については、郵便局株式会社から再委託される)。
6.財務状況と損益見通し
(1)財務状況:公社から継承する資産は112兆8,550億円と見込んでいる。主な資産は有価証券83兆270億円。
 公社から継承する負債は111兆8,550億円と見込んでいる。主な負債は機構から出再を受ける再保険分である保険契約準備金110兆1,530億円。
 純資産は株式上場を目指す生命保険会社として適切な金額となるよう定めることとし、1兆円と見込んでいる。資本金は5,000億円とし、純資産額から資本金を差し引いた残余が資本準備金となる。発行株式数は2,000万株となる予定。かんぽ生命の株式は、民営化時は日本郵政株式会社がすべてを保有する。
 また、民営化時の財務状況のソルベンシーマージン比率は約920%になる見込み。
(2)損益見通し:主な収益は、新契約販売及び機構からの再保険の受再に伴う保険料収入となる。主な費用は、保険金等支払金、郵便局株式会社に支払う委託手数料など。また、共通事務等一部の業務については、日本郵政株式会社等の承継会社に業務委託を行うため、委託手数料が必要となる。
 なお、費用については、事業戦略に対応した要員計画や投資計画を反映させる。主な、要員計画として、代理店営業・業務支援強化、サービスセンターのお客様相談体制強化、支払審査体制強化、法令等遵守体制強化及び資産運用体制の強化などによる増員を見込んでいる。主な投資計画として、保険金等支払点検のためのシステム整備、効率的な事務フローの確立のためのシステム対応、コールセンター機能の強化、法人営業サポートシステムの導入、総合情報システムの全面更改のための開発、月次決算に対応するためのシステム整備などの投資施策の実施を見込んでいる。
 経常利益は、平成19事業年度(2007年4月〜2008年3月)下期において2,030億円、平成20事業年度で4,200億円、平成23事業年度では7,770億円を見込んでいる。経常利益に価格変動準備金戻入額を加え、契約者配当準備金繰入額及び税額を差し引いた純利益は、平成19事業年度下期で80億円から平成20事業年度で410億円、三利源の改善を反映して平成23事業年度では1,300億円を見込んでいる。
 新旧契約分を合わせた総資産残高は、民営化時には112.9兆円だが、平成23事業年度末には91.3兆円を見込んでいる。
 この経営見通しは、金利、株価、為替などの市場環境が平成18年(2006年)12月末の数値で変動しない前提で作成した。また、新商品・サービスの影響は見込んでいない。
 なお、かんぽ生命の新契約販売が予想に反して大幅に減少する場合には、保険料収入が減少し、収益が悪化するおそれがある。このような懸念に備えるために、早期の新商品・サービスの導入や一層の効率化などを行っていく必要がある。


●日本郵政、自動車保険共同保険7社を選定(07年3月2日)
 日本郵政(株)3月2日、郵便局会社の損保代理業の実施に伴う自動車保険共同保険引受保険会社の選定結果を公表。共同保険引受損保会社は、東京海上日動(幹事・代理申請会社)、損保ジャパン、三井住友海上、あいおい損保、日本興亜損保、ニッセイ同和損保、AIU保険の7社。7社が分担割合に応じて、幹事会社が発行する保険証券で引き受ける。共同保険引受損保会社は07年1月12日付で公募し、経営基盤、全国的な商品供給体制、事故処理体制、郵便局会社への指導・支援体制などを総合的に評価し、選定したとしている。今後、幹事会社の商品を引受各社に提示して、具体的な商品内容を確定する。郵政民営化法等関係法令の手続きを経て、当初は首都圏20局程度でのテストランからスタートするもよう。

●郵政民営化委が金融2社の新規事業早期解禁を指摘(06年12月20日)
 政府の郵政民営化委員会(田中直毅委員長)は20日、07年10月に民間株式会社として発足する日本郵政の金融子会社2社「ゆうちょ銀行」「かんぽ生保」の新規事業早期参入を容認する趣旨の所見を発表。中で、新規業務を考える際の最も重要な視点として、「金融2社と関係業界の利害の調整ではなく、これらの金融機関のサービスが向上することにより利用者にもたらされる利便性の向上である」とし、そのタイミングについては、「新規業務については上場(2011年目処)に向けて市場の評価を得られるタイミングでの実施が課題」と指摘した。

<郵便貯金銀行・郵便保険会社の新規業務の調査審議に関する所見・全文>
 日本郵政株式会社から提出された「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」においては、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の新規業務に係る希望が表明されている。郵政民営化委員会が取りまとめた「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格に対する郵政民営化委員会の所見」では、承継会社の経営に与える影響等とともに、関係する分野に与える影響について幅広く意見聴取等を行うこととしたところ、この点につき、内閣総理大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣から早急に実施するよう要請を受けた。委員会はこれらを受け、関係者からの意見聴取等の調査審議を行ってきた。これを踏まえ、金融二社の民営化の意義と新規業務の位置付けに関する基本的な認識、移行期間における新規業務に対する調査審議の考え方等を、下記により取りまとめ、公表する。
〈郵政民営化と新規業務
@民営化の意義と金融ニ社のビジネスモデル:郵政民営化については、全体として国民の便益の改善、民間秩序の中への融解、10年以内における金融二社の株式完全処分という3つの条件が付されている。このいずれをも充足することには大きな困難が伴うが、郵政民営化の成功のためには、必ず達成しなければならない。これまで郵貯・簡保という官業により政府保証等に依存して行われてきた資金仲介は、規模の肥大化とあいまって、経済合理性の下でリスクとリターンを配分すべき金融市場の機能に歪みを与えてきた。少子・高齢化社会において活力ある経済社会をもたらすためには、金融市場の機能の十全な発揮が不可欠である。郵政民営化において、上記の3つの条件を充足させる際には、金融市場を通じ資源配分の効率化に寄与するものでなければならない。民営化後の金融二社は、肥大化したバランスシートの規模を縮小するとともに、民間金融機関にふさわしいビジネスモデルへの革新を図ることが必要である。
A 郵貯・簡保の経営の現状:民営化後の金融二社については、その巨大な規模や全国的なネットワーク等から、強い競争力を有するという指摘があった。しかしながら、現在の郵貯・簡保は、政府保証の下で法定の業務を実施してきた結果、郵貯では定額貯金による調達と国債による運用に偏ることに伴う金利リスク、簡保では商品が養老保険に偏ることに伴う構造的縮小リスクを抱えている。また、リターンの面でも、郵貯では経常収益のほとんどが資金運用収益であり、簡保では過去に積み上げた追加責任準備金の戻入を除けば安定的な利益の計上が困難であるという偏った構造となっている。このように、リスクとリターンの構造からみると、現在の郵貯・簡保のビジネスモデルには競争力がなく、政府保証が付されている現在でも郵貯では大幅な資金流出、簡保では新規契約の減少が進行している。なお、郵貯・簡保については、内部管理等の面でも民間金融機関としては多くの課題が存在している。
B 株式上場・処分の意義:郵政民営化においては、グループ全体として、費用状況に関する根底的見直し等により、経営の効率化を進め、株式会社としての経済合理性と投資家の信認を確保することが重要である。金融二社についていえば、株主の目線からの市場規律を貫徹させる上で、株式上場は大きな意義を有する。なお、上場に向けての審査に当たっては、一定期間の経営実績を示すことが必要である。これに関しては、投資家の信認を得るためには、まず経営の効率化を行うべきであるという指摘の一方、投資の対象として評価されるためには成長性が不可欠という指摘があった。
C 政府保証の廃止とそれに伴って必要となる措置民営化後の金融二社については、他の民間金融機関とは異なり、日本郵政による株式保有が存在する限り「暗黙の政府保証」が残存するため、その間は新規業務を一切認めるべきではないという指摘がある。しかし、民営化の実施後も「暗黙の政府保証」が残存するというパーセプションは、預金者・加入者等の誤解に基づくものである。前述の民営化の意義に照らせば、政府保証を制度面で廃止するだけではなく、こうしたパーセプションをも払拭していくことが不可欠である。金融二社が政府保証が存在しないことを明確に説明することは当然であるが、政府においても、その払拭に向けて最大限の努力を行うべきである。民営化後の金融二社に対しては、これに対応し民間金融機関として自立するための態勢の確立が求められる。
D 内部監査・コンプライアンス態勢等の整備:民間金融機関においては、市場規律に従ったガバナンスの確立のために、内部監査・コンプライアンス態勢が整備されていることが不可欠となっている。民営化後の金融二社がこうした民間金融機関と同等の態勢を備えるべきことは当然である。また、こうした態勢整備に当たっては、日本郵政公社から日本郵政への経営の引継ぎや、バーゼルU等の下での統合的なリスク管理への移行という課題にも同時に取り組む必要がある。この点については、民営化までの間にも、網羅的な検討を行って早急に態勢整備を進めるべきである。また、関係省庁は緊密な連携の下で、この態勢整備を強く促す必要がある。
内部監査・コンプライアンス態勢に係るこうした取組みは、金融二社のビジネスモデルの革新の基礎となるものであり、その重要性については、いかに強調してもし過ぎることはないと考える。
E 利用者保護及び検査監督態勢:金融行政は、本来、利用者保護の立場から行われるものである。したがって、民営化後の金融二社に対しても、その立場から他の民間金融機関と同等に厳格な検査監督を実施することが当然である。
〈新規業務に関する調査審議の方針〉
(1) 方針の表明の意義
 金融二社の新規業務の認可等については、民営化後に申請が行われた段階等で委員会が意見を述べることとなっているが、金融二社の準備期間や関係業界の金融革新に向けての経営環境見通しの確定の必要性等を考えれば、事前に委員会の方針を示すことによって予見可能性を与えることが必要である。このため、移行期間中における基本的考え方と現時点における当面の対応を以下に整理する。
(2) 基本的な考え方
@ 利用者利便の向上:郵政民営化の目的は競争の促進による経済の活性化であり、新規業務を考える際の最も重要な視点は、金融二社と関係業界の利害の調整ではなく、これらの金融機関のサービスが向上することにより利用者にもたらされる利便性の向上である。
A 金融二社のバランスシートの規模:経営の健全性確保の観点から、ビジネスモデルの革新に向けた柔軟な検討と厳格なALMの実施を求める。その結果としてバランスシートの規模についても市場原理に基づき自ずと適正化されるべきものと考える。
B 新規業務の実施に係る先後関係:新規業務の実施に係る先後関係については、郵政民営化法において基本的に金融二社の経営状況と適正な競争関係の確保の観点によるものとされている。このうち、金融二社の経営状況の観点については、民間金融機関としてのリスク管理と顧客へのサービス提供によるリターンの確保を勘案することになる。また、適正な競争関係の確保の観点については、郵政民営化法において議決権比率等が尺度として例示されているが、その趣旨を踏まえれば形式的な比率のみならず、株式市場からの規律が不十分な場合には各種の取引において経済合理性が浸透しないおそれが残りやすいことに着目すべきである。新規業務の実施に係る先後関係について、これらの観点から業務の特性を見ると、以下のような準則が考えられる。新規業務の導入について、これらの先後関係に沿って検討されることが望ましい。なお、その際には、個々の業務ごとの検討のみならず、業務間の相互関係にも留意する必要がある。
▽定型的業務から非定型的業務へ:株式市場からの規律が不十分な場合には、各種の取引において経済合理性が浸透しないおそれが残りやすいことにかんがみると、これに伴う弊害が発生しにくい業務から順次取り組むことが適切である。こうした観点から、定型的な業務の方が相対的に早期の実施になじむものと考えられる。
▽市場価格の存在する業務から相対で価格形成を行う業務へ:上記と同様の観点から、市場価格が存在すること等により価格の合理性が担保されやすい業務は、相対の取引により価格形成が行われる業務よりも、相対的に早期の実施になじむものと考えられる。
▽ALMからみた緊要性の高い業務から低い業務へ:民営化後の金融二社の健全経営のためには、早期に顕在化するおそれが強いリスクについては、ヘッジ等による管理を有効に行えるよう可及的速やかに対応していく必要がある。したがって、市場性のリスクに対応するALMの観点からみて緊要性が高いものから早期の実施が必要と考えられる。
▽コアコンピタンスとの関係が強い業務から弱い業務へ:民営化後の金融二社がリターンを得るためには、顧客の望むサービスを提供することにより、その支持を獲得していくことが必須である。コアコンピタンスとの関係が強い分野では顧客のニーズを把握しやすいため、こうした分野の業務から早期に実施することが有効である。
C 適正な競争関係の確保:郵政民営化法は、利用者利便の向上をその目的の一つとしており、この点では、独占禁止法や金融商品取引法等と共通の性格となっている。新規業務の検討に当たって考慮すべき適正な競争関係の確保についても、これにかんがみ利用者利便の向上に資する観点から検討すべきである。また、手法の面では、現在の金融行政の手法が事後チェック型となっている中で、金融二社の業務規制では官業として拡大してきた経緯から、通常の行政手法に留まらず、事前の要件審査と事後の条件付けが必要となるものである。その運用に当たっては、事前の競争制限ではなく、事後の適正な競争関係の確保を図るものとすべきである。
(3) 当面の対応
@ 新規業務開始のタイミングについての考え方:郵貯・簡保の財務内容にかんがみ、リスク管理手段の多様化(デリバティブ取引や運用対象の自由化等)については、政府保証が廃止される民営化直後における具備が急務である。その他の新規業務については、上場に向けて市場の評価を得られるタイミングでの実施が課題である。
A 個別業務の調査審議についての考え方:新規業務については、事前に満たすべき要件として内部管理や顧客保護等の業務遂行能力を十分具備している必要がある。また、適正な競争関係の確保については、リスクとリターンの関係が民間金融機関としての経済合理性に基づくものとなっていることや地域の利用者への影響等を事前に確認し、必要に応じ事後のフォローアップを条件付けることとする。具体的な要件と条件の設定については、個別業務ごとに異なる。例えば、流動性預金の預入限度額の撤廃については、政令改正の際には必要に応じ、肥大化につながらない態勢という点や他業務との関連での必要性という点に留意することが考えられる。また、個人向けローンでは、リスクとリターンの関係が適正であること、管理や回収等の面で適正な業務遂行能力が確保されていること等について留意することが考えられる。こうした点に関しては委員会の委員が実態を更に調査した上で、要件や条件について審議を行っていくこととする。
B 個別業務への対応:日本郵政が民営化後速やかに開始を希望している業務については、同社の経営判断により、以上を踏まえて適切に絞り込み、準備を行うことが考えられる。
〈その他〉
@ 地域金融・経済の発展への貢献のあり方:民営化後の金融二社については、地域金融機関との協業を行うことが重要である。また、地域の金融においては、中小企業との長年の積み重ねに基づくリレーションシップバンキングへの影響に留意すべきであるという指摘があった。金融二社は、流動化・証券化された債権の買取り等、地域経済への貢献に向けた具体的な取組みについて、十分説明し幅広く検討を行うべきである。また、他の金融機関の商品の仲介は、民間金融機関との協業により利用者利便の向上につながり得るものである。
A 簡保の旧契約者に係る利益と個人情報:民営化後の郵便保険会社から、旧契約者に係る利益と個人情報を厳格に分離すべきという指摘があった。旧契約に係る再保険の利益の帰属や個人情報の取扱いについては、関係業界の利害調整の手段としてではなく、旧契約者の権利や利便の確保の観点から考えていくべきである。
B 郵便局の活用のあり方:郵便局ネットワークへのアクセスを開放し、金融二社以外の民間金融機関が郵便局会社に代理店業務を委託できるようにすべきという指摘や、例えば損害保険代理店を営む場合には顧客への説明等、コンプライアンス態勢の整備が不可欠という指摘もあった。郵便局会社においては、販売する金融商品の選択を含め、私的自治の原則の下で経済合理性に基づく経営判断によって郵便局を運営し、健全経営を確立することが求められる。


●郵政民営化委が金融2社の実施計画で所見(06年8月31日)
 郵政民営化委員会は31日、郵政民営化準備会社・日本郵政(株)提出の「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」に対する所見を示した。

<「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」に対する所見>
 日本郵政株式会社から、平成18年7月31日付けで「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」が内閣総理大臣及び総務大臣に提出された。
 郵政民営化委員会としては、骨格で示された郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の早期上場・処分の方針について、郵政民営化の趣旨に沿うものとして評価するものである。
 また、当委員会としては、郵政民営化に関する多様な論点についてタイムリーに調査審議するためには、事柄の性格に応じた仕分けが必要であると考える。当委員会が郵政民営化における業務遂行能力の構築とイコールフッティングの確保という二つの視点に立つことからすれば、日本郵政が希望する郵便貯金銀行及び郵便保険会社の新規業務については、承継会社の経営に与える影響等とともに、関係する分野に与える影響について幅広く意見聴取等を行うこととしたい。
他方、郵政民営化全般に関わるその他の事項については、日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の迅速な具体化に資するため、当委員会において留意事項を取り急ぎ取りまとめ公表することとした。その内容は下記のとおりである。
(資産及び負債の点検の実施)
1 承継会社各社における事業の基盤となる資産及び負債について、円滑な承継を実現するという観点から、民間における企業会計の標準とその動向を踏まえて、日本郵政公社における点検を通じ共通認識を形成すること。
(業務遂行におけるコンプライアンス態勢の整備)
2 適正な業務遂行と利用者利便を確保するため、郵政民営化以前から十分な準備を行った上で、社内規程の整備、承継会社各社の責任範囲の明確化、職員研修の充実等を通じて、業務遂行におけるコンプライアンス態勢を整備すること。
(ガバナンス面における内部統制システムの確立)
3 グループ全体としてのガバナンスを確立するため、日本郵政を中心とする監査態勢を強化するとともに、リスク管理の機能を含む内部統制システムを整備すること。
(グループ経営における経済合理性と投資家の信認の確保)
4 承継会社のグループ経営において、株式会社としての経済合理性を確立するとともに、郵便貯金銀行及び郵便保険会社(金融子会社)に対する投資家の信認に疑義を招かないようにするため、日本郵政とその子会社である承継会社との間の経営資源と権能の適正な配分、金融子会社と事業子会社それぞれの特性に応じた日本郵政による整合的な経営管理と子会社統治、子会社相互間における競争的価格を参照した公正な取引関係について、適確な方針を定め、それを対外的に明確化すること。
(人材の有効活用)
5 郵政民営化の円滑な実施のため、公社の職員の帰属先や配置の決定過程において、公社と協力して、きめ細かい対応を行うことや、郵政民営化後における適切な動機付けにより人材の有効活用に努めること。
(郵便局ネットワークの水準の維持等)
6 郵便局ネットワークの水準が維持され、郵便局が長年提供してきたサービスが引き続き提供されるよう配慮すること。
(郵便局株式会社の健全経営の確保)
7 郵政民営化により国民負担をもたらすことのないよう、郵便局株式会社におけるサービス提供に関し、業務運営の効率化のインセンティブが働くよう業務委託契約を工夫すること、郵便局別損益に基づく効率的な管理を行うこと及び地域に密着した創意工夫を行うことにより、その健全経営を確保すること。


●日本郵政が金融2社の新規事業実施計画(骨格)提出(06年7月31日)
 郵政民営化準備会社の日本郵政(株)(民営化時の持株会社に移行)は「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画の骨格」を7月31日、政府に提出した。
<郵便貯金銀行「仮称:ゆうちょ銀行(株)」>
〈民営化後、新たに提供する商品・サービス等〉
@ リスク管理手段・運用の自由化:リスクのヘッジ、収益の安定化を図るため、金利スワップ、金利先物等他の銀行と同様のオフバランス取引を実施することを希望している。また、リスク分散を図るとともに、収益源の多様化のため、市場型間接金融への対応を含めた運用対象の多様化を図る。具体的には、シンジケートローンへの対応、株式の本体運用、信託受益権など他の銀行と同様の運用対象の自由化を希望している。これらの業務は、郵便貯金銀行の経営の健全性を確保するため、民営化直後からの業務開始を希望している。
A 新規商品・サービスの提供:お客のニーズに対応した商品・サービスラインナップの充実を図る。具体的には次のようなものを希望している。
イ 金融機関仲介
・郵便保険会社が取り扱う保険商品以外の保険商品の窓販
・投資信託商品の多様化等の証券業務の充実
・そのほか他の金融機関が取り扱う金融商品の仲介
ロ 預金関連
・外貨預金
・流動性預金の預入限度額の廃止
・定期性預金の預入限度額の拡大・廃止
ハ ローン関連
・個人向け(カードローン、住宅ローン、目的別ローン等)
・中小企業向け(ビジネスローン等企業向け融資、ファクタリング、保証業務、手形の割引等)
・その他法人向け(プロジェクトファイナンス等)
ニ 送金・決済関連
・クレジットカード業務
・当座貸越(無担保)
ホ その他
・信託銀行業務
 これらの業務のうち、個人のお客によりよいサービスを提供するとともに、上場に向けた企業価値の向上を図る観点から必要な業務については、民営化後速やかな業務開始を希望している。

<郵便保険会社「仮称:かんぽ生命保険(株)」>
〈民営化後、新たに提供する商品・サービス等〉
@ 運用対象の多様化:郵便保険会社は生命保険業を営むことから、予定利率を上回る運用利回りを中長期的に安定的に確保していく必要がある。そのため、適切なALMの下で、収益向上の観点から市場リスクや信用リスクといった各種リスクについて内部留保の範囲内でリスクテイクを行うこととし、市場分析・審査体制の整備に努めつつ、信託受益権、株式の本体運用、シンジケートローン等への運用を行うなど、他の生命保険会社と同様に運用対象の自由化を希望している。これらの業務については、郵便保険会社の収益力の強化を図るとともに、ポートフォリオの改善を行うため、民営化直後からの業務開始を希望している。
A 新規商品・サービスの提供:お客のニーズに対応した商品・サービスラインナップの充実を図る。当面、具体的には次のようなものを希望している。
イ 法人マーケット向け商品の他の保険会社からの受託販売
ロ 既存商品・サービスの改善
a 入院関係特約の改善
b 加入後一定期間経過した場合における限度額の引き上げ
ハ 新規商品・サービスの開発
a 変額年金
b 医療・傷害保険等の第3 分野商品
c 限度額引き上げを前提とした有診査保険
 これらの業務のうち、お客によりよいサービスを提供するとともに、上場に向けた企業価値の向上を図る観点から、特にお客のニーズが高く早期に実施が可能と考えられるイ〜ハa の業務について、民営化後速やかな業務開始を希望している。