●生保ニードセールスの心構え(生保営業職員用)
〈生保セールス目的とポイントとは〉
 端的に、生保セールスとは「断られる仕事」である。優績者のほとんどすべての人は、初めは生保のセールスをやるつもりはなかったと言う。それがお客さまに断られながら仕事を続けるうちに、段々やりがい(職業価値・労働価値)を感じるようになる。無形商品であって非日常性商品の生命保険は、お客さまの日常生活では使われることがなく、商品の価値や効用が発揮できない特殊な商品である。死亡保険などは被保険者自身は永久に商品の効用を知ることはない(保険金受取人のみが効用を知る)。お客さまが商品の効用を実感できないのだから、生保のセールスは断られるのが当たり前なのである。むしろ、「万一のこと」など、現実に起こりうることとして考えたくもないお客さまにとって、「万一」の話などまったく余計なお世話以外のなにものでもない。断るのが当たり前である。断られても断られても、万一の時、お客さまの家族の暮らしを守るために説得する。
お客さまが生保商品の効用を実感するのは通常、販売後何十年も将来のことであって、セールスマンが感謝されるのは極めて希れである。それでもお客さまを守るという崇高な使命(ミッション)を果たすために、一生懸命かつ堂々と余計なお世話をする。それが生保セールスの原点である。生保セールスが「聖業」と言われる所以である。

 あえて妙な表現をするなら、コンサルティングセールスの心構えで重要なポイントとは、「誠実にハッタリをかますこと」である。例えば死亡保険のセールスで、売り手は誰一人、実際に万一の経験などしたことないのに、「万一の時は……」とお客さまに話している。これはハッタリ以外のなにものでもない。この場合、セールスする人は「万一の時はおそらくこうなるだろう……」とイメージし、そのイメージをお客さまに伝えているのである。そしてイメージを伝えられたお客さまは、今度は「万一の時はどうなるか……」とイメージする。つまり、生保セールスはバーチャルなイメージの伝播のプロセスなのである。セールスマンのイメージ力と訴求力が弱ければ、お客さまは具体的に「万一の状態」を現実のこととしてイメージできなくなる。そこで、「検討しておくから」と、とりあえず断るのである。よって、お客さまの心の中のカンバスに画を描くように、しっかりと誠実にハッタリをかますことが重要なのである。このイメージ力を現実化してセールス力のアップに繋げる方法が標準活動(例えば、2W・3Wなどの週間成契活動)すなわち基本動作の習慣化なのである。

 いまのお客さま(保有)を大切にして、見込客(新規)の紹介を頂くのが生保セールスの王道である。つまり保有と新規拡大は常に同心円なのだ。保全はお金にならないなどと言うのはアマチュアであって、保全を怠るものは新規も増えない。顧客数が1000人、2000人もいる超優績者はなかなか保有のお客さまに会うチャンスはないから、お客さまのご家庭の記念日(家族の誕生日など)に合わせて、きめ細かくはがきや手紙や電話でコミュニケートする。よって、優績者ほど解約失効は少ないのが常である。保有の顧客基盤をしっかりグリップしているから、新規の紹介の輪がますます拡大する。長期勤続の優績者の多くは、お客さま本位の丁寧な保全から増額や死亡保障から生存保障への転換、新規見込客の紹介拡大へと繋げている。

 生保セールスの目的は、「お客さまに対して最優のサービスを提供し、オンリーワンの保障でお客さまを守る使命(ミッション)を達成すること(職業価値=社会的価値)。自らに対しては(子供の人生の夢も含め)、人生の夢を実現するために大いに収入を稼ぐこと」である。筆者は新人であれ、優績者であれ、現状でそこそこ満足している生保セールスの人に常々こう言う。「一度、自分の殻を破ってごらん。一度、お客さまを本気でみつめてごらん。そして、自分の価値(バリュー)をさらに高めるために、もっと稼いでごらんなさい。稼いだお金は自分の価値ある人生に投資しなさい」と。何のために稼ぐのか――要するに、人生の夢を紡ぐために稼ぐのである。ささやかな夢、大きい夢、いずれも等しく尊い。

 あらゆるセールスの仕事の成果は、年収に集約される。洋の東西を問わず、セールスの仕事の評価は「お金をどれだけ稼いだか」で決まる。何事もシンプルイズベスト、端的にセールスの仕事でお金を稼ぐ人は価値ある人なのだ。大統領にも第一義的に優れたセールスマンシップが要求されるアメリカで生まれた世界最高峰の生保セールス国際団体「MDRT」(百万弗円卓会議)の基本的な入会基準は年収である。

 高度な専門知識、豊かな教養、人を魅了するコミュニケーション力と人格、つまり人間力の高いセールスマン→多くのお客さまが評価し支持し満足する→顧客と挙績が増える→年収が増える、という図式になる。ざっくり言えば、そのセールスマンの専門知識がどの程度なのかとか、どんな資格を持ちどのような仕事のやり方をしているのか等々、逐一見なくても、セールスプロセスの結果である年収を見ればお客さまの評価が分かるし、その人の人間力が分かるということだ。とてもシンプルで分かりやすい考え方である。このように、セールスの仕事でお金を稼ぐことは素晴らしいことであり、自分の人生の夢を紡ぐ取り組みなのだ。
 
 仕事のこと、家庭のこと、子育てのこと……等々、いろいろなしがらみの中で毎日を過ごす中で、周囲の状況や自分の事情を前提にして、つい「自分のできること」や「自分のやり方」について自らを型にはめてしまうことがある。特に主婦の場合、収入が家計の補助になればいいとか、夫の収入を超えたら気まずいとか、この職業の「使命」や「目的」に関わらず、自分なりの割り切りをしてしまうこともある。自らの職業の「使命」や「目的」を見失うと、いわば時間の切り売りで日々を過ごしてしまうことになる。

 例えば新人の営業職員の人が販売資料を配布する時、お客さまに一声掛けるのをためらって、いたずらに時間を流してしまうこともあるだろう。なんとなく流して過ごした1時間も、お客さまを本気でみつめて、プラスワンの気持を込めてお話した1時間も、どちらも同じ1時間。たった一度きりの自分の大切な人生から確実に1時間が消えていくのだ。肩をいからせて仕事をする必要はないけれど、いまの1時間、今日の1日を自分の価値を高めるために、豊かなオンリーワンの人生のために生かしてみてはどうだろうか。アポも取らずに出向いて不在客のところで「今日はラッキー」なんて無為に時間を流していると、むなしく時が過ぎ去り人生が縮んでいくばかりである。

 特に主婦の場合、職業の門戸が広くて、誠実に仕事をすればするだけ収入が稼げる仕事が世の中に一体どれだけあるだろうか。1人ひとりがこの仕事を大切にしなければ、営業職員制度の存立が危うくなる。 
 
〈生保市場は無限。基本動作を継続し、お客さまのために「押す」〉
 元来、お客さまにとって最善の保障設計を勧めるコンサルティングセールス(ニードセールス)の市場は無限にある。なにせ人間は、オギャアーと生まれたそのときから死(限界年齢:女性109歳、男性106歳)に向かって一直線に進んでいくわけで、基本的に保障ニードは人間が存在する限り尽きることはない。また、人間にとって、早く死ぬリスク(遺族の生活保障)もあれば、長生きするリスク(老後の生活保障)もある。お客さまを取り巻くリスクは無限にあり、保障ニードが尽きることはない。つまり、あなたの廻りには常にたくさんのお客さまいるのだ。これほど市場に恵まれた産業は他にあるだろうか。

 デフレ不況に伴う可処分所得の減少により、万一の備えより日常の家計維持が重視される中で、生保不況と言われ、解約・失効も依然として高止まりしている。では、本当に生保市場の明日は暗いのだろうか?生保市場を正確に捉えると、生保市場の明日は大変明るいことが分かるだろう。大勢の団塊ジュニア世代の結婚・第一子誕生に伴う高額死亡保障ニーズが集中到来している。同時に親の団塊世代における死亡保障から生存保障(医療・介護・年金)への転換・乗り換えニーズも大量に集中到来している。現在、生存保障を望む50歳代の人口はなんと1900万人もいるのだ。生保セールスにとって、いま正に収入倍増のチャンス到来なのである。
 
 実はもっと確実に獲得できる大きな市場があなたの腕の中にあるのだ。生損保会社の顧客世帯のうち、おおむね4分の3は1件のみの保険取引しかしていない(2件以上の取引が4分の1世帯)。夫の死亡保障以外に、妻への医療、介護、年金の保障や子供の医療保障、さらには各種の損害補償など、いまお取り引きしているお客さまの家庭に大きな市場が広がっているのだ。お客様を家族総ぐるみでお守りするために、顧客世帯全員へのフルラインサービス(多種目販売)を提供すること。純新規客を無理して追いかけなくても、顧客世帯単位のフルラインサービスに丁寧に取り組んでいけば、収入倍増が実現するのだ。

 実は、さらに大きなマーケットがある。生保保有契約の4〜5割は「孤児化」契約で、早期脱落した不在籍営業職員によって放置されたままになっている。年1回の訪問すらないお客さま約4割もいる。これが解約・失効の最大の要因となっているのだ。保全はお金にならないなどといって定期訪問の手を抜くとお客さまは離れていく。自社・他社のお客さまを分け隔てなく丹念に定期訪問を継続すれば自ずと市場が飛躍的に拡大する。

 ただし、ニーズ潜在型の死亡保険は簡単には売れない。なぜなら、死亡保険はお客さまがいまの日常生活を営むうえでは必要ないからだ。しかし、一家の生計維持者に万一のことがあると、遺族の生活維持において必要となる。したがって、日常生活で生保の必要性を「気づいていない」ないしは「気づこうとしない」お客さまのために、お客さまを「しっかり押す」ことが基本動作になる。プロとして、万一の時にお客さまの遺族が困ることのないように、お客さまのために「しっかり押す(暮らしを取り巻くさまざまなリスク=保障ニードに気づいてもらう)」のだ。遠慮していたのでは、お客さまのためにならないし、保険のプロとしての使命が果たせない。プロのコンサルタントの使命として、お客さまの家庭を守るために「しっかり押す」のである。

 お客さま一人ひとりの保障ニードは異なるし、生活保障設計も十人十色だ。個人保険から事業保険まで保障ニーズは多様であり、生保のマーケティングは実に奥が深い。まさに生保のコンサルティングこそプロの仕事にふさわしい舞台といえる。生保コンサルティングセールスは、オネストビジネスとしてお客さまに本音で忠告するものだから、常に現実直視型(お客さまはいま気づいていないけど、万一の際は遺族が困窮するという現実を直視してもらう)のコンサルティングを実践しなければならない。

 見込客に媚びたり、おもねる必要もないし、義理を絡めてもいけない(ただし、あのセールスの人には常々いろいろ相談に乗ってもらっているから、保険に入るのならあの人に入る、とお客さまのほうが義理に感じてくれるのはありがたいこと)。また、お客さまの要望に対して常に謙虚でなければプロとはいえない。単なる商品説明や、風評などを利用して他社批判を行う者でコンサルティングセールスの成功者はいない(他社のデメリットの中にしか自分のメリットを訴求できないとしたら、セールスマンとして実にわびしい姿である)。

 プロフェッショナルなコンサルタントとは何か―それはお客さまを守るために生涯勉強を継続する人のことを言う。自分のお客さまは満足しているはずだと自己満足する人は、アマチュアである。自分がお客さまの立場になったら、常に満足しているだろうか。ましてや保険商品は無形商品であり、非日常性商品であって、お客さまが商品の効用を実感する機会が極めて少ない(死亡保険の効用を被保険者が知ることはない)。あなたが自己満足しているほど、お客さまは満足していないかもしれないのだ。

 プロとは顧客に満足してもらうために常に自己不満足である人のことを言う。なにも慌てる必要はない。ひたすらお客さまに目を当てて、息長く一つ一つ勉強を「継続」していけばよい。あなたにとって最高の師はお客さまである。一人として全く同じ保障ニードのお客さまはいないのだから。そして、お客さまに満足していただこうとひたむきに勉強するあなたを、お客さまは信頼し、応援し、有益な情報や知識や市場を提供してくれるだろう。あなたを優績者に育ててくれるのはお客さまであることを常に忘れては行けない。端的に「お客さまに勉強させていただいている」と思える人はプロである。

 コンサルティングセールスの基本動作は、言葉で言うなら簡単明瞭である。保険のコンサルタントとしてのミッション(使命)に基づき、見込客(ビフォア)・顧客(アフター)への定期訪問を間断なく「継続」することである。成果を生み出すには、来月、今月どうするかを考えるのではなく、今週そして今日どうするかを考えよ。実践的に言うなら、今日、明日、明後日そしてこの1週間どなたとお話するのか前もって決めておく(アポイントメントを取っておく)。そして毎日5、6人〜7、8人の見込み客・顧客への訪問を継続し、生保・第3分野(会社によっては損保も)含めひたすら週間単位の成約活動(力量に応じて1W=週1件、2W=週2件、3W=週3件)を10週、20週、50週、100週、200週…と「継続」することだ。

 途中で疲れたら一服してもかまわない。なにも苦しんで仕事する必要はない。落ち込む必要もない。仕事は明るく楽しくやるものだ。一休みして、また元気が回復したら、この基本動作をまた「継続」すればいい。なにも一人だけで苦労する必要もない。職場の全員で月曜日〜金曜日まで週間単位の目標を立て、「定期訪問を間断なく継続する」取り組みを励行すればいい。他人と比較する必要もない。まずはどれくらい続けられるか、ゲーム感覚でやればいいのだ。時々後ろを振り返ってみて、「あら、今週もできちゃった」くらいの感じでお気楽にやってみればいい。初めてやる場合、準備運動と思って目標はまず5週でいい。5週できたら、あと5週くらいできるかな(計10週)と、ちょっぴりやる気が出てくるかもしれない。

 ひたすらお客さまに目を当てて週間成約活動を継続していくと、初めの頃は金曜日までの原則5日間という短いスパンの中で、毎日毎日多くのお客さまに会って結果を出さなければならないというやり方自体に抵抗のあった自分が、いつしか自然に変わっていることを実感するだろう。

 およそ10週前後で、お客さまを「少し押して」お話できるようになる。アポ取り、クロージングでの「少し押す」コツ、リズムが身に付くので、10週をクリアすると、その先の50週はさほど高いバーではなくなる。20週、30週と続けるうちに、毎日多くのお客さまとお話すること自体にはあまり抵抗を感じなくなる。50週に到達すると、それがすっかり当たり前の日課になっている自分に気づくだろう。

 100週前後継続したあたりで、それまで多くのお客さまと時間に追われるようにお話していたのに、1人のお客さまと短時間で集中的に要点を話している自分に気づくことだろう。ただし、100週前後が引き続きこの取り組みを継続できるかどうかの大きな山場となるだろう。さすがに追われ続けて来たような気分になり、一息入れたくなるものだ。しかし、振り返ってみると、実にまあ、よくやってきたもので、100週も続いている。「一服したいけど、ここで休むと、最初からやり直しになるな。そのほうが大変」と、改めて気分一新、前進する意欲が湧いてくる。さらに200週も継続すると、1人のお客さまと時間的には短く集中的に話しているにもかかわらず、気分的にはゆったりと、かつお客さまと「間のやりとり」を楽しみ、お互いに共感しあっている自分に気づくだろう。それ以上継続すると、会話の7、8割はお客さまが話しているのに、あたかもお医者さんのように主導権を取ってテキパキと診断を下している自分に気づくだろう。

 こうしてひたすらお客さまを見つめて、週間単位の基本動作を繰り返す中で、初めは金曜日が目標であったのに、いつしか結果が金曜日にはついてくるようになる。そして、始めは結果を出しやすい第3分野商品などの小口軽量の保険で件数を稼いでいた人が、知らず知らずのうちにお客さまのニードを引き出す会話の能力(コンサルティング能力)が高まるにつれ、契約の中身が死亡保険主体に変わり、「良いお客さまつながり」の紹介連鎖の拡大により、個人保険のみならず大型の事業保険も自然に増えて行く。もちろん、収入も倍々ゲームで増えて行く。つまり、成果が積み上がって行くのだ。基本動作の繰り返し→成果の積み上げにつながるという図式である。会社の指示でなく、自分の人間力の成長と収入倍増を楽しむゲーム感覚で、ぜひ全員で明るく元気に挑戦してみてはどうか。

 逆に、毎日の朝礼であれもこれもといろんな指示が伝達され、今月の締め切りから来月の締め切りまでの1ヵ月で最低5件必達などとボンヤリした全体目標の中に身を置いていると、今日、明日どうすればいいかがよく分からなくなる。締め切り後から翌月の前半まで一般の見込客を訪問し、中旬から締め切り日までは成約可能性の高い有力見込み客を集中訪問するなどと、手前勝手なスケジュールを立てたところで、1人ひとりのお客さまの購買行動がそもそも保険会社の締め切りの都合に合わせるはずもない。団塊世代が死亡保険市場のど真ん中に居座っていた高度経済成長の頃なら、保険会社の都合に合わせてくれるお客さまもいたかもしれないけれど。生保市場の人口構造が変化(少子高齢化)し、国際標準の保険・金融自由化が進み、デフレ不況が長期化する今日、生保営業職員の基本動作も思い切って国際標準化する必要がある。過去の延長線上に保険会社の発展もセールスマンの成長もありえない。
 
 端的に言って、コンサルティングセールスはあたかも心理カウンセラーのように、専門家によるカウンセリングを前提とし、十分なコミュニケーションを通じて見込客自らが人生のリスクを自己確認し、納得ずくで最善の保障設計を選択するようになるものである。

 コンサルタントが面談のアポを取ることから始まって問題点の分析、最善のプランの作成・提案、クロージング、紹介獲得に至るまでの全プロセスに置いて、納得ずく(共通の認識)で見込客を終始リードすることによってのみ成功するという意味で、誤解を恐れずに言えば、お客様よりプロフェッショナルなコンサルタントが主役なのだ。
 
 お客様の行動(購買)心理には一定のパターンがある。attention(着目)⇒interest(興味)⇒desire(欲求)⇒memory(比較検討)⇒action(購買)のステップで、頭文字をとってAIDMA(アイドマ)の法則という。この心理を知っていれば、先手を取りながらお客様をリードすることができる。

〈アプローチ・面談アポの取り方〉
 テレアポを有効に実践するには、まず、@お客さまに掛ける電話の量、A電話を掛ける時期と時間帯の2つのポイントがある。例えば、ニードセールスを実践する外資系のライフプランナーが簡単にテレアポを取っていると思いますか?そんなことは決してありえない。堂々と余計なお世話をする仕事なのだから、生保セールスに好んで会いたいというお客様は、まずいないだろう。個人差もあるし見込客の基盤特性にもよるが、一般の個人市場の場合はおよそ掛けた電話の本数に対して1〜2割程度のアポが取れたらベストではないだろうか。つまり、毎日5、6人のお客様に面談しようとするなら、最大でその10倍の5、60人のお客様に毎日電話を掛けなければならないということだ。
 通常、移動時間を考えたら1日3、4人面談できれば目一杯だろう。この場合でも最大30本、40本の電話を掛ける必要がある。そんなに電話を掛けるお客様がいないという新人の場合は、せめて会おうとするお客様の人数の5倍の電話を掛けることから練習すること。新人のために、営業拠点単位にテレアポ用の見込客データを集積しておくことも必要だ。ちなみに、新規の見込客のためばかり電話すればいいわけではない。既存客へのあいさつの電話1本が孤児化を防ぎ、解約を防止する最も有効な手段になることを忘れてはいけない。

 次に電話を掛ける時期がポイントになる。早いほうがいいとばかり、お会いしたい日の1ヵ月前に電話をした場合、お客様にとっては大分先の話だから、曖昧な生返事をするか「また近くなったら改めて電話してください」と言われるだろう。仮に「分かった」と生返事されたとしても、お客様の意識としては明確に「約束」したとは思っていない。では、間近の1週間前はどうか?共稼ぎで忙しい日々を送っているお客様に対して、自分の都合で切羽詰まって来週の約束をさせようなんて実に失礼極まりない振る舞いである。やはりお客様本位に考えるのなら、お会いしたい日の2週間前から20日以内にお伺いを立てるのが適当だ。

 電話を掛ける時間帯は、見込客の属性で判断する。皆さん自身がそうであるように、有職主婦の場合は日中は不在もしくはゆっくり電話の相手になる時間は少ない。専業主婦なら夫、子供を送り出し、家事が一区切りついた時間に電話が掛かってくれば、話相手になるゆとりもあるだろう。中小企業経営者なら、この不況下、午前中の会議の後は午後一杯トップセールスに出歩いている可能性が高く、夕方以降帰社して書類に目を通している時間帯なら話を聞いてくれる気持のゆとりがあるかもしれない。パン屋さんなら午後2時以降なら一服していて話を聞いてくれる可能性がある……このように常に謙虚な気持で、個々のお客様本位に事情を斟酌して、電話を掛ける時間帯を判断するのだ。
 要するに、自分がされて心地良いことをお客様にすればいいのだ。支部長・所長は遅くとも2週間前の時点で部下の職員が2週間後に面談するお客様について把握し、アドバイスすることが基本動作になる。これが励行できれば朝礼に長い時間を費やすことも無くなり、営業始業時間の早期化が実現するだろう。

 あくまでも面談のアポを取るために電話をかけているのであって、電話で保険のセールス(通信販売)をしてはいけない。いますぐ保険に入りたいと考えている人以外は、面談に「反対」(「あいまいな反対」=いまは関心がない、考えていない、とりあえず資料だけ送って欲しい、など。「明確な反対」=保険に入らない、知り合いが保険のセールスをしているので他には入らない、など)の意思表示をするのは当たり前のこと。したがって、多くの場合、この「反対」を処理しなければ話は先に進まない。そこで、3つ目のポイントは「反対処理」である。

 まず、こちらの話に対して、お客さまが「反対」の返答をしてくれたことを喜ぶべし。なぜなら、2ウェイの会話が成立したからだ。お客さまの断りはコミュニケーションの始まり。「反対」の返答が返ってきたら、また切り返せばいい。会話は次々と発展する。ゆえにお客さまの「反対」はラッキーと思うべし。

 「反対」以前に、全く関心を示さないお客さまには無理に「押す」必要はない。「今日は保険のお勧めではありません。最近はどんどん保険が進化していますから、いまご加入の保険がお客様の保障ニードに合致しているかどうか、合理的な掛け方になっているかどうか、ぜひ、ご自分でご確認なさってください。今後何かありましたら、何なりとお申し越しください」と、お客さまの心の中に名刺を置いてくればそれでよし。そう言われるとお客さまは結構気になるもの。お客さまが既契約の内容をチェックしてくれれば、次の機会にはお客さまのほうからビジネスチャンスを提供してくれるだろう。

 代表的な断り文句がいくつかある。例えば「もう一杯入っている」という常套句がある。必要保障額の意味を理解していないお客さまが「一杯」と思っている付保額とはどれくらいのものなのか。どんぶりに一杯なのか、お猪口に一杯なのか。あるいはコップからこぼれるくらい入り過ぎているのか。つまり、こういう返答には、「それではムリ・ムダに掛けているといけないので、必要保障額を計算なさったほうがいいですよ」と、一気に必要保障額の話で切り返すことができるから、お客さまのほうがビジネスチャンスを提供してくれたのも同然だ。

 「お金の余裕がないから」という断り文句もよく聞く。お金の余裕がない家庭で万一のことがあったらそれこそ大変。保険はそもそもお金持ちには必要ないものだ。お金のない人をお金持ちにするのが保険の最大の効用である。この返答は最も切り返しがラクなケースである。「親戚がセールスやっている」という場合は、健康状態やお金の話は身内の親戚より、第三者のほうが話やすいはず。このように、断られてもいちいちガッカリしないで、プラス思考、ポジティブ思考で切り返しの会話を楽しむことである。

 ポジティブ思考に関して言うなら、人は誰しも長所と短所が表裏一体で、見方を変えれば「アバタもエクボ」になる。お客さまも自分も長所を見るようにすること。ないしは短所を長所に置きかえて見るようにすること。それだけで話が楽しくなる。例えばお客さまで、はっきりしない優柔不断な人は⇒慎重な人⇒しっかりした人⇒長いお付き合いが期待できる人と見る。傲慢な人は⇒力強くリーダーシップがある人⇒決断力のある人⇒クロージングに時間がかからない人と見る。

 自分についても、短所を長所に置きかえ、長所を伸ばせば短所が無くなると考えればいい。例えば自分に対して、自分は欠点だらけで自信がない⇒何事にも自信のある人などこの世にいない⇒欠点が多いと思う人は自分のことを客観的に見られる人⇒バランスがとれていて飛躍する可能性が大きい人だと思えばいい。また、話し下手でセールスの仕事に向いていない⇒逆から見れば、すなわち聞き上手な人⇒実際にトップセールスは全員聞き上手(聞き上手でなければカウンセリングできない)⇒保険セールスに最も適性がある人。人見知りする⇒誰でも好きな人・嫌いな人はいる⇒お客さまの心の中に土足で入らないデリカシーのある人⇒お客さまに好かれる人になる。
大切なことは、何事も明るく、プラスワン(もうひとつ)の発想をすることだ。明るい人⇒あの人が来ると楽しい、明るくなる⇒お客様も前向きになれる⇒お客さまから来訪を待たれる人である。

 オーソドックスな話法は、面談することによって、(誰も彼もではなく)その見込客にとって有益な情報(切り口として「進化する保険」「証券診断」「ライフプランニングサービス」「保険の節約策」「保障のリフォーム法」「保険選びのアドバイス」「節税法」等々)を直接お話したい旨ごく手短に伝え、こちらから訪問時間を特定し(主婦か、サラリーマンか、その夫婦か、商店主か、企業経営者か、面談相手の属性により、見込客が自宅や事務所にいて、ご都合がよいであろうと推定される時間帯はあらまし分かるはず)、そのうえでご都合を聞く形で話すこと。面談時間の約束を取り付けるのが目的だから、字数にして200字前後の短いセンテンスで簡潔・率直かつ自然体で話すことがポイント。お客さまは自分にメリットをもたらしてくれる人に関心を寄せるもので、具体的でないあいまいな話は嫌われる。面談時間を決めるところから、見込客にゲタをあずけているようでは有効期間(話が発展する訪問)は期待できない。

〈ニード喚起〉
 特に死亡保険はお客さまが現状の日常生活を営む上では必要のないものだから、お客さまが「いま手当しなければいけないこと」と意識していない。これに対して、ニード喚起のプロセスを通じて、いま手当しなければ万一のとき遺族が困るという現実を直視してもらう必要がある。このニード喚起こそ、保険コンサルタントの最大の職業的かつ社会的使命(ミッション)であり、欧米ではその専門性に照らして生保セールスの社会的地位が優れて高いのである。

 保険のコンサルティングは心理カウンセリングと同じである。心理カウンセラーは相談者に対して実践すべき基本ステップを踏んでカウンセリングしている。@相談者(見込客)が興味のあると思われる話題を投げかける(趣味や嗜好など、題材は何でもいい。切り出しは地域の出来事でも天気の話でもいい)。A相談者が話し始めたら、カウンセラーは唇を閉じる(黙って聞く)。B相談者の話が弾むように相槌を打つ(会話のリズムをとる)。C話が弾んできたら、いまの悩みや望んでいることを聞き、話の矛先をリードする。D会話の中で段々、相談者が特定の事柄にこだわって話すようになる(その事柄がいま相談者が気になっている問題である)。E相談者がこだわって話す事柄を引き取って「……のことでお悩みなんですね」とカウンセラーの言葉でその事柄を繰り返す(問題点を確認する)。F相談者は自ら話した事柄であるにも関わらず、「自分の悩みをこの人は分かってくれた」と思い、カウンセラーを信頼するのである。

 人は誰しも「家族に対して愛情を抱いている」し、「子供に良い人生を送ってもらいたいと思っている」し、「安定を求めたい」し、「ゆとりのある人生を送りたい」し、「本人および家族の人生の夢を実現したい」と思っており、これらの気持ちが人間の基本的欲求(ニード)である。
 ところが多くの場合、現実の暮らしの中では「そのうちなんとかしよう」と物事を先に延ばしたり、「そのうちなんとかなるだろう」と成り行きにまかせたり、「将来のこと」を実現するために今なすべき対策を実行していないことから、基本的欲求と現実の生活とのはざまにおいて、漠然とした「不安」や「心配」や「悩み」などが発生し、それらの気持ちがないまぜになって人々の心の中に潜在している。このように問題点を混沌と抱えている状態がすなわち保障に対するニードであり、ほとんどの人が潜在的に抱いているのだ。

 そこで、プロフェッショナルな保険コンサルタントは、「見込客と共通の用語」(見込客の属性に応じて、サラリーマンの用語、業種の用語、経営者の用語、金融用語、地域言語等々)を用いて会話(一方的な商品説明でない2ウェイの対話)し、10人10色のお客さまの心のアヤ(問題点がないまぜになった状態)をときほぐしながら、「将来のこと」を「いまのこと」に置き直して、問題点を整理(見込客の具体的な保障ニードとその優先度を把握)し、子供の人生や老後の夢、経営者としての夢などを語り合いながら、あたかもお客さまの「心の中のカンバスに絵を画く」ように、1つ1つ具体的に保障ニードを顕在化させ、それをお客さまに「自己確認」させる。要するに、心理カウンセリングを行うのだ。

 この一連のプロセスがコンサルティングセールスの重要な基本動作である「ニード喚起」であり、生保販売の成否の9割のウェートを占めているといっても過言ではない。見込客からすれば、保険コンサルタントは保険の説明ができて当然だし、単なる商品説明に対して特段のメリットを感ずる人はいない。同様に、パターン化された商品比較話法なども、その見込客自身の本質的な保障ニードに目を当てたものではないから、そのようなコンサルタントを特に信頼しようとは思わない。お客さまとの「共通の用語による会話」と、それによる「共通の認識」なくしてコンサルティングセールスはできない。生保優績者がすべからく「聞き上手」な所以である。

〈プレゼンテーション〉
 見込客が自らの保障ニードを具体的に「確認」すると、問題点を解消しようとする欲求が湧いてくる。そこで、保険コンサルタントは「解決方法の具体的な提案」を行う。この段階がプレゼンテーションである。プロのコンサルタントが設計した提案は、見込客が「自己確認」した保障ニードに基づく「最善の保障設計」なのであるから、見込客の人生にとって間違いなく「最善の選択」なのだ。この段階では、最も誠実なライフパートナーとして、お客さまに対して「本音で忠告」(説得)することが肝要だ。自然体でかつ何ら躊躇することなく、お客さまの人生のために問題点をズバリと本音で忠告する。
 
 保障に対する具体的なニードが顕在化しているこの段階での多くの見込客の迷いを大別すると、「保障額」か「保険料」のいずれかである。この段階ではあいまいなセールストークをしてはならない。問題点をはっきりさせることが重要だ。もとより保険はお客さまにとって保障を買うものであって、保険料を買うわけではないし、そのお客さまにとっての最善の保障プランが2つも3つもあるはずはない。誠実なコンサルに基づくプロの提案が最善なのだ。

 ただ、今日のデフレ不況下において、「保険料の節約」が見込客の関心事である場合、中途解約という最大のムダ使いを防止するために、見込客の保険料負担能力に合わせて段階的に保障設計をリフォームしていくプランの準備も必要となる(この点において自在なリフォームが可能なユニバーサル型商品はお勧めしやすい)。しかし、その場合でも、見込客の保険料負担能力に留意しつつ、最善の保障を提供することでお客さまを守るという使命を忘れてはならない。とりあえず加入してもらえばいいといった形で安きに流されるようでは、プロのコンサルタントとはいえない。お客さまは誰しも内心は「万全の保障を備えたい」と思っているので、本音で説得すれば最善の保障プランを選択するものである(きちんと年度別収支を計算してライフプランニングする以上、そもそも保険料から逆算するような通販的な保障設計は提案しないはず)。 

 「本音で忠告」するための話法としては、@論理的であり、Aかつ感情に働きかけることがポイントになる。見込客はその保障設計について「論理的に理解」し、「感情的に人間の基本的欲求(家族への愛情の証として必要、安定した人生を送るために必要といった購買動機)」が働くからである。 ライフプランニングの手法や、そこから導き出された保障設計の「論理的」な説明にはコンサルタントによって余り差異はないが、「人の感情に働きかける話法(子供や老後、事業のことなどの題材)」の優劣はコンサルタント個々の感性、経験、創造力により大きな差異が生ずるものだ(話法例参照)。

 なお、個人契約の面談は可能であれば夫婦同席で行うことが望ましい。夫婦同席なら、「論理を用いて(⇒夫)」「感情に働きかける(⇒妻)」話法の効果が期待できることもあるが、何より、妻に購買決定権が無い家庭の場合、いくら妻に本音で忠告し妻が納得したとしても、その妻がプロのコンサルタントのようには「論理を用いて感情に働きかけながら」夫に本音で忠告することはできないからだ。「そのうち考えておく」という夫の一言で、クロージングのチャンスを失ってしまうことがしばしばある。

 コンサルタントは、お客さまの動作や表情が発信する信号を敏感にキャッチアップしながら、会話を進めなければならない。こちらが話しかけているときに、お客さまの仕事の手が動いていたら、例え相づちをうってくれたとしても、実は話を聞いていない。何かを話した時、お客さまの手が止まったら、いまこちらが話した事柄に興味を持ったのだ。お客さまの発信する信号を見逃さないように、常に謙虚さを忘れてはならない。

 「カレンダー赤い字の日」(ニードセールスを日本に導入したプルデンシャル生命の話法例に加筆)
「○○さん、このプランについてずっと詳しくお話してきたわけですが、かえってこのプランに加入する本当の意味からはずれた説明になってしまったかもしれません。そこで、この話をお聞きいただければこの保険プランの意味を良くおわかりいただけるかと思います。」

「ほら、ここにカレンダーがありますね。私もよくもらいますが、普通は日曜・祭日は赤い字、他の日は黒い字で印刷してありますね」

「ご主人が家族のために十分な資金を残さずに亡くなられると、あとに残された奥様は働きに出なければならなくなります。母子家庭で、まだ小さいお子様がいると、カレンダーの赤い字の日はママが一日中家にいる日、黒い字の日はママがお仕事に行って家にいない日、よそのおばさんと一緒にいる日とおぼえるわけです。」

「これは偶然知ったお宅の話なのですが、そのお宅のお子さんは毎朝『ママ、今日は赤い字の日?』と聞くのが習慣になったというのです。祭日でなければ、一週間に5、6日母親はたまらない気持ちで『ちがうのよ、今日はまだ黒い字の日・・・』と答えなければなりません。つらいことですが、その母親が、『そうよ。今日は赤い字の日だからママはずっとお家にいるのよ。』と言えるのは、一週間に一度か二度、そして数少ない祭日だけです。」

「その日だけは、その子も最高にしあわせです。ママがずっと一緒にいる、いろんなことをしてくれる。その子が一番望んでいる事ですから・・・」

「もし、そのご主人が、奥様が未亡人になられても、せめて子供さんの小さいうちだけでも一日中働く必要のないように資金を残しておけば、毎日が赤い字の日になったことでしょうに。ですから○○さん、本当はこのプランの詳細などはそれほど大切なことではないのです。大切なことは、このプランに入っているかどうかです。ご主人に万一のことがあった場合、奥様とお子様の生活がすっかり変わってしまいます。とにかく○○さん、健康診断のつもりで診査を受けてみませんか。」

〈クロージング〉
 対面販売のコンサルタントはこちらの波動がお客さまに伝わることを知っておかなければならない。 生保会社の超優績者クラスの中には2〜3回の面談で8割方成約する能力を持っている人もいる。「ワン・ツー・スリーの法則」を実行している優績ライフプランナーもいる。1回目ニード喚起まで、2回目プレゼン、3回目クロージングと紹介獲得――の3回訪問でテンポよく必ず仕上げる。3回目の面談でクロージングできない場合は、半年後か来年に、また最初からやり直す。自分のリズムが狂うとそれが対面しているお客さまに伝わってしまうからだ。お客さまの反応は、セールスマンのリズムの鏡である。

 生保契約のクロージングのチャンスはピンポイントでやってくる。この段階で見込客の決断を逃すと、「検討しておくので、また今度」となり、再度、ニード喚起の段階からやり直しになる。「しっかり押す」基本動作ができていないと、肝心要のこの段階でお客にゲタをずけて(決断を迫れないで)失敗することが多い。「遠い将来のこと」を「いま手当てしなければいけないのかな」と見込客が共感したその時点がクロージングのチャンスである。その時にクロージングを一気に仕上げないと、見込客の決心はすぐゆらぎはじめるものである。生保のようにリスク潜在型で高い買い物をしたお客さまの心理は、加入後においてもなお、それが正しい判断であったかどうか迷うものなのであり、ましてや加入前においておやである。お客さまがよ言う「よく分かった。それでは今度ハンコを押すから」の「今度」はないと思った方がよい。

 この段階では、見込客にとって、目の前の保障設計が「最善の選択」であることはすでに分かっているのだから、コンサルタントは自信を持ってお客さまのために、「お客さまの迷いの退路」を絶たなければならない。つまり、コンサルタントはこの段階では、一気に「お客さまに決断させてあげる」姿勢を持つことがポイントになる。「よく分かった」のになぜ「今度」なのか。「今度」までに何も起きないという保証もないのだから、その理由を率直に聞いて、「今度」と「いま」の間に特段の事情がないのであれば、いま決断させたほうがお客さまに対して誠実な態度といえる。

 通常、この段階まできて「明確な反対」の意志を抱くお客さまはほとんどいないはずで、多くは最後の「気の迷い」に過ぎないのだから、「お客さまの手を持ってハンコを押してあげる」つもりで、あるいは「お客さまの背中をポンと押してあげる」つもりで、堂々とリードして一気に決断させてあげること。この段階の話法の王道は、家族(遺族)や従業員の生活に対する責任を訴求することだ。
 見込客が「よく分かった」ならば、間をおかずに保険金の受取人や保険料の払込方法など、申込書の記入事項を説明し、(見込客にサインするところまで来ていることを暗黙のうちに知らせながら)スムースな手続の流れの中でお客さまの同意を得ていくとよい。「では、こちらにどうぞ」と、ゆったりと微笑みをたたえながら堂々と余計なお世話の仕上げをしっかりした目力で行う。お客さまに残された動作は署名・捺印のみである。なお、契約手続き時におけるコンサルタントの「手の迷い」は、お客さまの「気の迷い」を誘発するので注意すること。

 〈「最善の選択」の確認と「人脈」の紹介を獲得する〉
 お客さまと「共通の認識」に基づいて組み立てた保障設計が、お客さまにとって「最善の選択」であることを確認する。この動作が、その保障設計とコンサルタントに対する「顧客満足」を確立する。お客さまにとって正しい判断であったことを確認しておくことで、加入後の解約や他社乗り換え等の「迷い」を防止できる。お客が自分の判断で選んだ(共感し納得した)最善の保障を簡単に手放すことはしないものである。

 ここで終わりではない。「顧客満足」を得たお客さまから、4〜5人の見込客の紹介を得る(誰でも、4〜5人の知人、友人はその場で思いつくもの)。紹介を得る場合も、それまでに聞いてきたお客さまの話の中から、同業者、同好者等、紹介先の範囲をある程度特定して依頼した方が、お客さまは思いつきやすい。お客さまにその場で「人脈」に電話してもらうのが最善だ。あるいは紹介状を書いて貰うか名刺に裏書きしてもらうこと。コンサルタントの目の前で電話したり、一筆書くのに、まったくあてのない人を紹介するだろうか。必ず成約可能性の高い人を紹介する。単に知り合いの名前を聞いたところで、ビジネスにつながる有効な紹介獲得とは言えない。
 
このようにコンサルティングセールスにおいては、電話アポの時間帯指定から最終段階の紹介範囲の指定まで、コンサルタントは一貫してお客さまに対して最も誠実な「主役」であらねばならない。洋の東西を問わず、プロセールスの成功の要諦は紹介連鎖の拡大にあり、段階的にリッチマーケット(単に富裕層という意味でなく、あなたに保障のすべてを委ねてくれるお客さま)の紹介連鎖を拡大すること、つまり「良いお客さまつながり」がポイントになる。あなたがあなたを伸ばし育ててくれる優良客の紹介連鎖をつかんだとき、一気に飛躍する。トッププロの数字は階段状に伸びていく。ある日突然、上昇気流に乗りトッププロの地位につくこともある。優良客は優良な見込客を紹介する(反対に、悪い客は悪い見込客を紹介する)ものだ。

 あなたのセールスを理解し、大切な契約を任せてくれたお客さまがあなたの最大の支援者であり、パートナーである。知り合いのことを「人縁」と言い、あなたのビジネスを育てパートナーシップを組める期待のもてる人たちのことを「人脈」という。この仕事の入ったばかり人は、まず100人のお客さまを大切にする。どうやって大切にするのか、自分が人にやって貰って気持ちの良いことをやればよい。紹介が拡大して200人になれば「人脈」の苗床ができる。更に紹介が拡大して400人になればベースマーケットが確立し、さらなる紹介連鎖の拡大によりリッチマーケットのドアが開かれる。あなたのために人肌脱いでくれる「良いお客さまつながり」を大切にしよう。お客さまは日々勉強し成長するあなたを応援するのであって、お客さまにすがって甘えてはいけない。
 
 人脈(ビジネスネットワーク)づくりに、キーマンを集めて各種のイベントを実施する優績者もいる。それほどお金をかけなくても地域のボランティア活動、茶話会、ホームページやニュースレターの活用など、誰でもやれることはたくさんある。どのような仕掛けでも良いから、自分ができる範囲でお客さま同士の交流のネットワークづくりを仕掛けるプロデューサーになること。それはやがて自分の価値ある人生のネットワークになるだろう。
 
 今のお客さまと将来のお客さまとの見切りも必要だ。今お客さまになっていただけない人には、将来の人脈のタネ捲きをしておく。例えば「あなたは必ず出世する人」とか、「御社は将来必ず発展する」と言われて、悪い気持ちになる人はいない。暫くして訪問したときに、それとなく「やはり出世なさいましたね」等と言われれば、そんなにも自分のことを見ていてくれたのかとお客様は感激するだろう。

 最近は外資系生保が急増し、男性のライフプランナーも増加しているが、何故、個人保険の生保セールスでは多くの女性が成功するだろうか。かつて日本では生保営業職員が戦争未亡人の受け皿だった歴史によるばかりではない。巷間言われるように、すべての女性が粘り強いわけでもない。生保セールスとは生活保障のコンサルを行うことである。子産み子育て、嫁姑、老親介護等々、多くの場合女性は家庭生活の中心にあってライフステージの主役であることがその大きな要素として指摘できる。まさしく暮らしの主役を務めて家計を差配している女性が、お客さまの人生設計、よろず人生相談の最善のパートナーとしての適性を満たしているのだ。生保セールスは女性がその適性を生かしながら自己実現できる有効な仕事の1つであることは論を待たない。
一方、会社人間が多い男性セールスの場合は事業保険で経営者と話をすることに違和感はない。しかし、家計や子育てのことには多くの場合実感が乏しいからお客さまとのコミュニケートは女性セールスより難しい。もっとも最近の若い世代は男性も欧米型のライフスタイルで積極的に子育てに参画し、財布を握って家計をやりくりする人が増えているから、今後は個人保険分野でも男性セールスが台頭してくるだろう。

 地域密着の人縁・地縁ネットワーク、すなわち地域にベースマーケットを持つ女性セールスのほうが、個人保険のニードセールスの展開においては実は有利なのだ。地域ボランティア活動の歴史が浅い日本では、企業内の人間関係に固定化される男性の地域ネットワークは存外狭い。したがって多くの男性セールスの場合は、前職関連のベースマーケットの掘り起こしからスタートせざるをえない。 ただし、女性固有の適性に甘えてはならないし、もちろんお客様に媚びてもいけないし、自分の生活体験を押しつけてもいけない。プロフェッショナルな保険コンサルタントは男女の性差にかかわらず、お客様を守るために日々学び、コンサルティング能力を高める自助努力が必要であることはいうまでもない。すでに、お客さまは、男女の性差に関わらずコンサルティングの満足度でセールスマンを選別している。               

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