●コンサルティングセールスの基本動作(2000年9月7日)
〈業態間相互参入と優良顧客の囲い込み競争〉
 ビッグバンの下、生損保相互参入、保険・金融相互参入、ダイレクトマーケティングの台頭など、顧客囲い込みのための大競争(メガ・コンペティション)時代がスタートした。すでに96年10月以降の生損保相互参入により、損保代理店との顧客争奪競争が行われており、一軒のユーザーの「生損保すべてをとるか、とられるか」という構図の顧客争奪戦が繰り広げられている。これは、いわば顧客にとっての生損保フルラインのかかりつけのコンサルタント(オウン・コンサルタント)の座の奪い合いである。
 さらには日本版ビッグバンにより、業態の垣根を越えた保険・金融サービスミックスによる顧客囲い込み競争が進展する。2001年4月からの銀行による保険窓販解禁(当初段階は住宅ローン関連商品のほか、個人年金保険を中心とする貯蓄型保険がメインとなろう)、さらには規制緩和のスピード次第では2001〜2002年度中にも保険・金融総合口座が具現化しよう。
 とくに近い将来、IT(インフォメーション・テクノロジー=情報技術)革命により、生保、損保、第三分野商品、預金・決済、金融商品、各種年金商品、ローン、FPサービス、医療・介護サービス等をパッケージしたネット総合口座が盛んに取り引きされる時代になるだろう。これは消費者にとって各業態が一つのサイトに持ち込む商品を一元的に利用できるので利便性があり、また取引ポイントに応じて銀行手数料・保険料・ローン金利が割り引かれるか、ないしはキャッシュバックが行われるため有利性がある。
 優良顧客を超長期にわたって固定化できる生保商品は、フルライン・フルサービス戦略の正にコア商品に位置する。中でも生保営業職員が直販チャネルが扱いにくい死亡保険のコンサルティングセールスの基本動作を身につけ、最善のコンサルテーションを行うオネストビジネスとして顧客の信頼を獲得できれば、大競争時代の主役として活躍するだろう。
 しかし、本業の死亡保険すらきちんと売れないようでは、専業営業職員チャネルの将来は極めて厳しいものになる。まずは脚下照顧(足下を見つめ直す)、日常の販売動作を見直そう。

〈フルライン・フルサービスのコア商品は長期の死亡保険〉
 大競争時代において、保険コンサルタント(営業職員)が長期にわたって顧客をグリップし、顧客満足度を高めるには、まず取引期間(保険期間)が長期でかつ定期的な対面によるコンサルテーションが必要な保障性の保険商品(死亡保険)を重点的に扱うことが不可欠となる。損保物保険や第三分野商品など加入時に専門家によるコンサルテーションが余り必要でない「リスク顕在型」の保険商品、あるいは年金商品などの低ローディング(低付加率)商品は、今後の相互参入や販売チャネルの多様化により、価格競争が本格化し、通信販売や銀行による窓口販売が積極的に行われる時代になるからだ。
 その意味で、対面のコンサルタント(営業職員)チャネルのコア商品は、死亡保険(終身保険、定期保険、定期付終身保険)のようなカウンセリング、ライフプランニングが必要な長期の生命保険である。
 これをコアにして1顧客に対する多種目販売を進めて行けば顧客単価が上がる一方、顧客維持率・顧客満足度が高まる。さらには会社の戦略に応じて生損保総合販売、保険・金融フルサービスへと段階的に複合的なサービスを提供していく場合もあるだろう。
 ともかく、あらゆる保険・金融商品の中で、最も販売する事が難しいのは説得が必要な「リスク潜在型」の死亡保険であり、こればかりは通販や窓販で扱うには限界がある。生保営業職員は改めて、最も売りにくい商品を売っている自らの販売力強さを再認識するとともに、コンサルティングセールスの基本動作の習熟に勤めるべきだ。長期の死亡保険のコンサルティングセールスこそ大競争時代におけるプロの保険コンサルタントの王道である。
 
〈ビジネスチャンスは目の前にある。習うより、慣れよ!〉
 セールスマンは「商品」を売るが、プロフェッショナルなコンサルタントはコンサルテーション能力すなわち10人10色のオーダーメードの生活保障設計を組み立てる「付加価値(専門能力)」を売るものだ。生保販売は本来、顧客本人およびその家族の人生の夢を実現させるための、すぐれて誠実な仕事(オネストビジネス)であり、これが保険コンサルタントの職能の原点でもある。したがって、顧客に対し本音で忠告するライフパートナーたる営業職員はライフプランニングの手法や周辺知識を着実に修得し、習熟していかなければならない。
 ただし、知識やシステムを武装すれば、説得力が身につくというものではもちろんない。ライフプランニングの手法も話法もシステムも、実際に使ってみなければ修得できない。
生保販売はおよそ「習うより、慣れよ」の世界だ。なぜなら、人生設計は10人10色で、生活保障設計もそれぞれ異なる。いわばお客様一人ひとりがマーケットであり、生保のコンサルテーションには、すべからく応用動作が要求されるからだ。
 失敗は成功の母である。幾たびかの失敗と反省が、必ず自らの「付加価値」として結実するだろう。失敗の数だけ独自の販売ノウハウを持つことができるのだから、実は失敗の数だけ成功に近ずいているのだ。さらにいえば、およそトッププロたちは、いま成約できないことがすなわち「失敗」とは考えないものだ。お客様にも当然その時々の事情がある。したがって、今回はたまたま「いまの事情」で成約には至らないだけなのであって、そのようなお客様は数カ月後ないしは数年後の最も有望な見込み客なのである。有望な見込み客を数多く作っていると思えば、なにもくよくよすることはないのである。       ちなみに、当面のライバルである損保代理店との販売動作の違いを示すならば、損保は数多くの保険種目ごとに制度内容が異なるから、一通りの商品・制度内容を習得しなければ販売できないが、自動車保険など主力保険はレディーメード商品でその売り方に特段のノウハウや体験が必要となるわけではない。一方、生保商品は死亡保険、生存保険、生死混合保険のわずか基本3種目で構成されており、商品の仕組みは簡単だが、お客様のニーズの数だけ多様な売り方が必要になる。生命保険はまさに「売ること」(マーケティング)がすべてといっても過言ではない。それだけ生保のセールスは奥が深く、専門性が高く、永遠に販売技術を磨き続けなければならないプロフェッショナルな世界なのである。
 
〈お客様の「リスク」の受け止め方の相異点〉
 生保と損保ではお客様のリスク認識にも相異があり、したがってセールス特性も異なる。例えば、損保の自動車保険は、自動車事故のリスクについてユーザーは日常生活の中でしばしば直面する「いまのリスク」として認識(意識の中でリスクが顕在化)しているため、プロ代理店であれ、ディーラーであれ、見込み客は接触したチャネルに付保するという購買行動を取っており、いわゆる「接触型」のセールス特性によっている。
 一方、生保の死亡保険についていえば、主な購買層の若い世代や子育て世代の見込客において、日常、死亡というリスクは滅多に発生しないし、その心理として大切な働き手の喪失という状況は本能的に最も起きて欲しくないものであり、現実のこと(いまのリスク)として認識したくないものだ。したがって、見込客は、自分の場合はいまのこととして考えたくない、「将来のリスク」と思いたいという気持ちが強く働いている(リスクが潜在化している)から、見込客に対してカウンセリングし、コンサルティングを行って、「ニード喚起」し、その保障ニードをユーザーの意識の中で顕在化させるべく説得を重ねなければならない。つまり、死亡保険は「説得型」のセールス特性をもつものといえる。生保を売るには「説得」つまりコンサルティングが必要になるのだ。
 
〈コンサルティングセールスの基本動作〉
 日本の生保市場は数字の上では成熟化(全生保=民間生保+簡保+JA共済=の世帯加入率93%、1世帯当たり加入件数5件、民間生保の個人保険保有契約件数1億2000万件)しており、一見、新規開拓余地は小さいようだが、オーダーメードの「最善の保障設計を売る」コンサルティングセールスの市場は無限である。人間は、生まれたときから死(限界年齢105才)に向かって進んでいくわけで、基本的に生保に対するニードは人間が存在する限り尽きることはない。人間にとって、早く死ぬリスク(遺族の生活保障)もあれば、長生きするリスク(老後の生活保障)もあるのだ。
 コンサルティングセールスはオネストビジネスとしてお客に本音で忠告するものだから、常に現実直視型のコンサルティングを実践しなければならない。見込み客に媚びたり、おもねる必要もないし、義理を絡めても行けない。また、単なる商品説明や他社批判を行う者に生保のコンサルティングセールスの成功者はいない。
 端的に言ってコンサルティングセールスはあたかも医師のように、専門家によるカウンセリングを前提とし、十分なコミュニケーションを通して見込み客自らが人生のリスクを自己確認し、納得づくで最善の保障設計を選択するものである。コンサルタントが面談のアポを取るところから始まって問題点(ニード)の分析と喚起、最善のプランの作成と提案、そしてクロージング、紹介獲得に至るまでの全プロセスにおいて、見込み客との共通の認識(納得づく)を醸成しながら見込み客を終始リードすることによってのみ成功する。その意味で誤解を恐れずに言えば、コンサルティングセールスではプロフェッショナルなコンサルタント(営業職員)が主役なのである。

 @面談のアポの取り方
 「時間もコスト」である。確実に面談の約束を取りつけるところから有効訪問(話が進展する訪問)が始まるのだ。
 あくまでも面談のアポを取るために電話をかけているのであって、電話で保険を勧めてはいけない(電話で保険の説明をするのは通信販売である)。いますぐ保険に入りたいと考えている人(モラルリスクの可能性もある)以外は、面談に「反対」(「あいまいな反対」=いまは関心がない、考えていない、とりあえず資料だけ送って欲しい、など。「明確な反対」=保険に入らない、知り合いが保険のセールスをしているので他には入らない、など)の意志表示をするのは当たり前のこと。ちなみに、「知人・親戚が保険のセールス…」という常套句は、相手のことを慮る優しい日本人ならではのほとんどがウソである。
 したがって、多くの場合、この「反対」を処理しなければ話は先に進まない。
 基本的な切り返し話法としては、ありがちな保険のお勧めではなく、面談することによって、(通信販売のように誰も彼も構わず電話しているのではなく)その見込客にとって有益な情報(切り口として「証券診断」「ライフプランニングサービス」「保障のリフォーム法」「保険の選び方アドバイス」等々)をぜひ直接お話したい旨、ごく手短にズバリと伝えること。文字数にして、せいぜい100字前後の短いセンテンスでかまわない。簡潔・率直・かつ自然体で話すことがポイント。
 最も重要なことは、「…日…時頃お伺いしたいと思いますが、ご都合は如何でしょうか」と、こちらから訪問時間を指定(主婦か、サラリーマンか、その夫婦か、商店主か、企業経営者か、面談相手の属性により、見込客が面談を受けるのに都合がよいと思われる時間帯はあらまし分かるはずで、その時間帯を指定)し、テンポよく話を進める。普段、自宅や事務所にいる時間帯を先に指定されると、見込客はなかなか「ノー」とは言いにくいものだ。あくまでも保険の勧誘ではなく、面談の時間の約束を取りつけるのが目的であることを忘れてはならない。お客様は自分にメリットをもたらしてくれる人に関心を寄せるもので、具体的でないあいまいな話は嫌われる。面談時間を決めるところから、お客にゲタをあずけているようでは有効訪問は期待できない。ましてや不在客への訪問ほどムダなものはない。

 Aニード喚起
 人(見込客)は誰しも「家族に対して愛情を抱いている」し、「子供には夢のある人生を送ってもらいたい」し、自らも「安心感を持ちたい」し、「安定を求めたい」し、「ゆとりのある人生を送りたい」し、そして「本人および家族の人生の夢を実現したい」と思っており、これらの気持ちが人間の基本的欲求(ニード)である。
 ところが多くの場合、現実の暮らしの中では「そのうちなんとかしよう」と物事を先に延ばしたり、「そのうちなんとかなるだろう」と成り行きにまかせたり、「将来のこと」を実現するために今なすべき対策を実行する意志が弱かったり、あるいはとりあえず責任を回避したりして、日々過ごしている。
 このように、本人および家族の人生に対する基本的欲求があるのにもかかわらず、それを実現するために今なすべき対策を実行していないことから、基本的欲求と現実の生活とのはざまにおいて、漠然とした「不安」や「心配」や「不満」や「悩み」などが発生し、それらの気持ちがないまぜになって人々の心の中に潜在している。こうした問題点を抱えている心理状態がすなわち保障に対するニード(保障ニード)であり、ほとんどの人が潜在的に抱いているのだ。
 そこで、プロフェッショナルな保険コンサルタントは、お客様と共通の用語(言語=見込客の属性に応じて、サラリーマンの用語、業種の用語、経営者の用語、金融用語、地域用語等々)を用いて会話(一方的な商品説明でない2ウェイの対話)し、10人10色のお客様の心のアヤを解きほぐしながら、「将来のこと」を「いまのこと」に置き直して、問題点を整理(見込客の具体的な保障ニードとその優先度を分析・把握)し、子供の人生や老後の夢、経営者としての夢などを語り合いながら、あたかもお客様の「心の中のカンバスに絵を画く」ように、1つ1つ具体的に保障ニードを顕在化させ、それをお客様に「自己確認」させる。要するにカウンセリングを行うのだ。この一連のプロセスがコンサルティングセールスの正に入口の基本動作である「ニード喚起」であり、生保販売の成否の9割のウエートを占めているといっても過言ではない。
 お客様からすれば、保険コンサルタントは保険の説明ができて当然だし、単なる商品説明に対して特段のメリットを感ずる人はいない。同様に、パターン化された損金・節税話法や資産計上話法、更新型定期付終身保険のパターン話法やそれに対する反対パターン話法なども、その見込客自身の本質的な保障ニードに目を当てたものではないから、そのコンサルタントを特に信頼しようとは思わない。お客様との「共通の用語による会話」と、それによる「共通の認識」なくしてコンサルティングセールスはできない。
要するに、医者が病状のみならず生活習慣や家族の生活態度まで含めて幅広く患者の話を聞きながら、カウンセリングするのと同じで、トッププロはすべからく聞き上手である。

 Bプレゼンテーション
 会話を通して見込客が自らの保障ニードを具体的に「自己確認」すると、おのずから問題点を具体的に解消しようとする欲求が湧いてくる。そこで、保険コンサルタントは「最善の解決方法の具体的な提案」を行う。この段階がプレゼンテーションである。
 コンサルタントが設計した提案は、お客様が「自己確認」した保障ニードに基づく「最善の保障設計」なのであるから、お客様の人生にとって間違いなく「最善の選択」なのだ。最も誠実なライフパートナーとして、お客様に対して「本音で忠告」(説得)することが肝要だ。自然体で、かつ何ら躊躇することなく、お客様の人生のために問題点をズバリと忠告する姿勢がなくてはならない。
 多くのお客様の最終的な迷いは、「保障額」か「保険料」のいずれかである。この段階ではあいまいなセールストークをしてはならない。問題点をはっきりさせることが重要だ。過半のお客様は保険に対して「十分な保障」を望んでいるし、もとより保険コンサルタントのミッション(使命)は、お客様の家族をどのようなことがあっても完全に保護するベストプランを提案することだ。
 そのお客様にとってのベストプランが2つも3つもあるはずもないが、さすがに現状の不況下において、「保険料」が問題である場合は、次善の策として、お客様の保険料負担能力に合わせて段階的に保障設計をリフォームしていくプランの準備も必要となろう。ただし、その場合でも、ベストプランとお客様が負担可能な次善プランの双方を示しつつ、「最善の保障設計」と比較させることが肝要だ。
 お客様は誰しも内心は「十分な保障を備えたい」と思っているので、よほどの保険料負担の格差がない限り(きちんと年度別収支を計算してライフプランニングする以上、次善の策とはいえ、もとより極端な格差は生じないはず)、最終的に「本音で忠告」されたベストプランを選択するものである。プロの保険コンサルタントとして第一義的に優先すべきことは価格ではなく、その見込客にとっての「最善の保障プラン」である。価格が高くなるか安くなるか、それはあくまでもライフプランニングの結果(結果論)にすぎないのだ。        
 「本音で忠告」するための話法としては、@論理的であり、Aかつ感情(人間の基本的欲求)に働きかけることがポイントになる。お様客はその保障設計について論理的に理解し、感情的に人間の基本的欲求(家族や従業員への愛情の証として必要、家族や従業員が安定した生活を送るために必要といった購買動機)が働くからである。ライフプランニングの手法や、そこから導き出された保障設計の「論理的な説明」にはコンサルタントによって余り差異はないが、「感情に働きかける話法(子供や老後、事業のことなどの題材)」の優劣はコンサルタント個々の感性、経験、創造力により、大きな差異が生ずるものだ。「感情」に訴求する話法は「感動」を呼び起こすものである。
 なお、個人契約の面談は基本的に夫婦同席で行うことが望ましい。夫婦同席なら、「論理を用いて(夫)」「感情に働きかける(妻)」話法の効果が期待できることもあるが、何より、妻に購入の決定権が無い家庭の場合、いくら妻に本音で忠告し妻が納得したとしてもその妻がプロのコンサルタントのようには「論理を用いて感情に働きかけながら」夫に本音で忠告することはできないからだ。「そのうち考えておく」という夫の一言で、クロージングのチャンスを失ってしまうことがしばしばある。

【話法例】〈カレンダーの赤い字の日・母子家庭の子供の心情=プルデンシャル生命の話法例を補整〉
「○○さん、このプランについてずっと詳しくお話してきましたが、かえってこのプランに加入する本当の意味からはずれた説明になってしまったかもしれません。そこで、この話をお聞きいただければこの保険プランの意味をよくおわかりいただけるかと思います」
「そこにカレンダーがありますね。私も銀行や電気店などでよくもらいますが、普通の日曜・祭日は赤い字、他の日は黒い字で印刷してありますね」
「ご主人がご家族のために十分な資金を残さずに亡くなられてしまうと、あとに残された奥様は働きに出なければならなくなります。母子家庭で、まだ小さいお子様がいらっしゃると、カレンダーの赤い字の日(日曜日・祝祭日)はママが一日中家に居る日、黒い字の日はママはお仕事に行って家に居ない日、よそのおばさんと一緒に居る日とおぼえるわけです。」
「これは偶然知ったお宅の話なのですが、そのお宅のお子さんは毎朝、『ママ、今日は赤い字の日?』と聞くのが習慣になったというのです。祭日でも続かなければ、一週間に5、6日、母親はたまらない気持ちで『ちがうのよ、今日はまだ黒い字の日…』と答えなければなりません。つらいことですが、その母親が『そうよ。今日は赤い字の日だからママはずっと家に居るのよ。』と言えるのは、一週間に一度の日曜日と、そして数少ない祭日だけです。」
「その日だけは、その子も最高にしあわせです。ママがすっと一緒に居る、いろんなことをしてくれる。その子が一番望んでいる事ですから……」
「もし、そのご主人が、奥さんが未亡人になられても、せめて子供さんの小さいうちだけでも一日中働く必要のないように生活資金を残しておければ、毎日赤い字の日になったことでしょうに。ですから○○さん、本当はこのプランの詳細などはそれほど大切なことではないのです。大切なのは、このプランに入っているかどうかです。万一のことがあった場合、奥様とお子さんの生活がすっかり変わってしまいます。とにかく○○さん、健康診断のつもりで診査を受けてみませんか。」

 Cクロージング
 生保契約のクロージングのチャンスはピンポイントでやってくる。ここで、お客様の決断を逃すと、再度、ニード喚起の段階からやり直しになるといっても過言ではない。ちなみに、アマチュアセールスの場合、肝心かなめのこの段階でお客様にゲタをあずけて(決断を迫れないで)失敗することが多い。
「遠い将来のこと」を「いま手当しなければいけないこと」とお客様が理解した(と感じた)ら、その時点がクロージングのチャンスであり、その時にクロージングを一気に仕上げないと、お客様の決心はすぐゆらいでしまうものである。生保のようにリスク潜在型で高い買い物をするお客様の心理は、加入後においてもなお、それが正しい判断であったかどうか迷うものであり、ましてや加入前においておやである。お客様のよくいう「よくわかった。それでは今度ハンコを押すから」の「今度」はないと思った方がよい。
 この段階では、お客様にとって、その保障設計が「最善の選択」であることはすでに分かっているのだから、コンサルタントは自信を持って「お客様の迷いの退路」を絶ってあげなければならない。つまり、コンサルタントはこの段階では、一気に「お客様に決断させてあげる」姿勢を持つことがポイントになる。
 「よく分かった」のになぜ「今度」なのか。「今度」までに何も起きないという保証もないのだから、その理由を率直に聞いて、「今度」と「いま」の間に特段の事情がないのであれば、いま決断させたほうがお客様に対して、誠実な態度といえる。通常、この段階まできて「明確な反対」の意思を抱くお客様はほとんどいないはずで、多くは最後の「気の迷い」に過ぎないのだから、いわば「お客様の手をもってハンコを押してあげる」つもりで、あるいは「お客様の背中をポンとおしてあげる」つもりで、堂々とお客様をリードして一気に決断させてあげること。クロージング話法の王道は、家族や従業員の生活に対する責任感をストレートに訴求することである。
 決断させる話法のひき出しが少ない初心者の場合は、お客様が「よく分かった」ならば、間をおかずに(しかしあわてずに)保険金の受取人や保険料の払い込み方法など、申込書の記入事項を説明し(お客様にサインするところまで来ていることを暗黙のうちに知らせながら)、スムーズな流れの中でお客様の同意を得ていくとよい。セールスマンが構えて止まればお客様も止まる。セールスマンが先に進めばお客様もついていこうとするものである。なお、契約手続き時におけるコンサルタントの「手の迷い」はお客の「気の迷い」を誘発するので注意すること。

 D「最善の選択」の確認と紹介を獲得する
 クロージングの後、最後に大切な仕事が残っている。お客様が自らの保障ニードを自己確認し、お客様と「共通の認識」に基づいて組み立てた保障設計が、お客様にとって「最善の選択」であったことを自己確認してもらうこと。この動作こそが、その保障設計とコンサルタントに対する「顧客満足」を確立する。お客様にとって自らの判断で最善の選択をされたことを確認しておくことで、加入後の解約や乗り換え等の「迷い」を防止できるのだ。現にプロフェッショナルなコンサルタントの解約は極めて少ないものだ。
 こうして「顧客満足」を得たお客様から、4〜5人の見込客の紹介を得る(誰でも4〜5人の知人友人はその場で思いつくもの)。紹介を得る場合でも、それまでに聞いてきたお客様の話の中から、同業者、同好者等、紹介先の範囲をある程度特定して依頼したほうが、お客様は具体的に思いつきやすい。トッププロの多くは、その場でお客様自身に知人友人に電話を入れて貰っている。
 このように、電話アポ時の時間帯指定から最終段階の紹介範囲の指定まで、コンサルタントは一貫してお客をリードする「主役」であらねばならない。

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模様(薄紫)