●基本編・生保トップセールスの共通項(2000年9月4日)

(1)ポジティブ(積極的)思考、プラス思考で気持ちの切り替えが早い人
 ●生保の世帯加入率9割、個人保険契約件数約1億2000万件、既に皆入っているからこれ以上入る人はいない。「自分は一杯入っている 」という断り文句が多い⇒日本人全員が生保が必要と考えている。既に一杯入っていると言える人はたくさん保険料を支払えるだけの収入があるリッチ層と考える。
 ●生保セールスは断りから始まる。「親戚の者がセールスをやっている」という断りの常套句もある⇒断りはお客様とのコミュニケーションの始まり。成約につながらなくても失敗ではない。お客様とのコミュニケーションの数だけ、自分自身の販売ノウハウが増えるので確実に成功に近づいている。
 前職、現職含め挫折経験のないトッププロはいない。挫折や失敗こそ成功の母であり、飛躍へのバネになるのだ。外資系生保のセールスマンの例で、入社3ヶ月で解雇通知をうけとった人が、「もう恐れるものはなにもない」と開き直り、よかれと思うことは何でもやった結果、ナンバー1セールスになった例もある。
 ●アバタもエクボ、お客様も自分も長所を見る。長所を伸ばせば短所が治る。お客様ではっきりしない人⇒慎重な人、傲慢な人⇒力強くリーダーシップがある人。自分に対して、自分は欠点だらけで自信がない⇒何事にも自信のある人などこの世にいない。欠点が多いと思う人は自分のことを客観的に見られる人だから、飛躍する可能性が大きい人。短所は長所。話し下手⇒聞き上手。トップセールスは全員聞き上手(聞き上手でなければカウンセリングできない)。人見知りする⇒誰でも好きな人・嫌いな人はいる。お客様の心の中に土足で入らないデリカシーのある人だから、お客様にすかれる。
 ●いつも明るく、プラスワン(もうひとつ)の発想をする人⇒あの人が来ると楽しい、明るくなる。お客様も前向きになれる。来訪を待たれる人。

(2)好感の持たれる動作・表情を心得ている人
 トップセールスは皆笑顔がステキ。必ず口角があがっている。お客様に応対するときは、顎をやや引き気味にした「敬恭」のポーズで、お客様を立てる。口角を上げてモナリザのほほえみか、少し前歯が見えるくらいのほほえみを。楽しい話題には満開の笑顔を。顎を引きすぎると「猜疑」のポーズとなり、お客様は疑われたような気になる。歩くときはやや顎を上げて「元気」のポーズをとると、目線が上がって何事にもプラスワンの発想が湧いてくる。お客様の前で顎を上げすぎると「侮蔑」のポーズとなり、お客様は馬鹿にされた気になるので注意。特に職域で自分が立っている場合は、下から見上げているお客様から見ると「侮蔑」のポーズになってしまうことがあるので、顎を引くように。

(3)お客様の行動(購買)心理をつかんでいる人
 お客様の行動(購買)心理には一定のパターンがある。attenntion(着目)⇒interest(興味)⇒desire(欲求)⇒memory(比較検討)⇒action(購買)のステップで、頭文字をとってAIDMA(アイドマ)の法則という。この心理を知っていれば、先手を取りながらお客様をリードすることができる。

(4)成功パターンや得意技を身につけている人
 例えば、あるライフプランナーは、上記(3)のお客様の心理を読みながら、初回訪問でニード喚起、2回目の訪問でプレゼンテーション、3回目の訪問で必ずクロージングに持ち込む。1,2回の訪問で成約を急いだり、4,5回目の訪問まで成約を遅らせたりしない。いつもワン・ツー・スリーの法則で自分のリズムでテンポよくセールスしている。自分の行動パターンにメリハリをつけることにより、お客様の心理を見極め、かつ自分のリズム感でお客様をリードする。
 例えば福利厚生プランや役員退職金プランなど、これなら誰にも負けないと言う得意技を持つこと。そこそこ一通りこなす人より、一芸に秀でた人が大バケする。得意技なら、お客様を自信もってリードできる。1つの得意技で自信を持つといくらでも応用が利くようになり、やがて不得意種目がなくなっていく。得意技、得意種目を伸ばすこと。

(5)常に成功のイメージを持つ人
 成功のイメージを持たなければ、成功しない。失敗のイメージを持つと、必ず失敗する。トッププロは常に成功のイメージトレーニングを怠らない。例えば保障5億円を達成するとして、5千万円の契約なら10件、2500万円の契約なら20件だが、もっと具体的に見込み客を想定して事業保険2億円1件、1億円1件、キーマンに8000万円1件、個人保険3500万円2件、2000万円1件と1000万円3件を、それぞれ見込み客を想定しながら、どういう話法でアプローチし、プレゼンテーションし、クロージングに持ち込むか、いずれもお客様がはんこを押すところまで具体的にイメージする。
イメージの世界なら、いくらでも成功体験を積むことができる。そして、そのイメージは必ず実現する。

(6)創造力(工夫)を持つ人
 人と同じ考え方ややり方をしない。ひと味やり方を工夫する。
 ●話し下手でゆっくり話すタイプの人の実例。都内の職域がメイン。昼休みの短い時間では、うまく話せない。さっぱり成約できず、もう辞めようと思った。いつもバリバリ仕事をしているお客様の課長さん、近づきがたい人で挨拶しかしたことがなかったが、これが最後だからと、思い切って話しかけてみた。すると、「ちょうど見直しを考えていたんだけど、職場ではゆっくり話が聞けないから、今度の日曜日にウチに来てもらえないだろうか」といわれた。日曜の仕事は嫌だなと思ったが、最後のおつとめのつもりで自宅を訪問した。休日なのでお客様もご夫婦そろってくつろいでいた。のんびりした雰囲気の中、時間の制約もなく、自分のペースでゆったりと話ができた。大いに話が弾んで、他社契約からの乗換が一発で成約できた。さらに子供が産まれた人と、今度結婚する人の2人の部下にその場で電話を入れてくれ、5000万円の契約2件が成約できた。それから一気に紹介が取引先まで貰えるようになり、やがてその職域基盤は彼女の独占基盤になり、トップセールスになった。以来、平日は主にテレアポ、土日をメインに活動している。
●都内の下町がテリトリーで、小口の個人契約をメインにやってきた人の実例。不況でまったく成約できず、転職の潮時と思った。ただ、事業保険の勉強をやってきたのに、不況下の町工場の基盤では空振り続きで、実力を出し切っていないという思いもあった。最後にやるだけやってダメならきれいさっぱり転職しようと、都内でオフィスビルが集積している虎ノ門に行った。雑居ビルに入って、ふと考えた。最上階にエレベーターで上がって、1階ずつ降りてくるほうが楽だが、上から下に下がるのは自分の今の運気を見るようで嫌な感じがしたので、1階から上の階へステップアップして行こうと考えた。1階、2階、3階と片っ端から経理部長や総務部長への面会を求めて上がっていった。1社も面会できなかったにもかかわらず、1階ずつ上がって行くにつれ、自分の運気も上がっていくような気がしてきた。不思議と面会を求める自分の声勢も強く明るくなる。5階に上がって会社のドアを開けたとき、奥の席にいる人と目があった。偶然、その会社の経理部長だった。1つ覚えの養老契約による従業員の福利厚生(ハーフタックス)プランを説明したところ、損金算入と貯蓄性商品に興味を持っていた経理部長が関心を持ち、なんと次回訪問で成約できた。それからというもの同じパターンで、周辺のビルを下から上、下から上へと攻めていき、あっという間にナンバーワンセールスの地位についた。
●バブル当時、事業承継プランを売りまくったライフプランナーの実例。最近は中小企業の経営者から、資金繰りの悩みを聞くことが多い。そこで、考えたのが「資金繰りプラン」。実は話法のベースは事業承継と同じ。お客様のニーズに合わせてネーミングを工夫した。中小企業の場合、通常、担保力はあまりない。金融機関はオーナー経営者のこれまでの仕事の実績と信用を最大の担保として、運転資金を貸し付けるのだ。このオーナーに万一のことがあったら、どうなるか。子供の専務には実績も信用もないから、確実な担保がなければ金融機関はお金を貸さない。安定的に運転資金が借りられなければ事業は子供の代で行き詰まる。しかし、オーナーの保険で現金(資産)があれば、それをタネ銭に金融機関はお金を貸す。ここまでは事業承継の当たり前の話法だが、オーナーが診査ではねられるケースがある。実は、この作戦の本当のターゲットは子供の専務の方である。つまり、親子を目の前に置いて、オーナーの「自分が築いた会社を孫子の代まで発展させたい」というオーナー経営者の心理をつくのだ。可愛い孫のために、専務が十分な保障を備えることをオーナーが強く要請することを見抜いた、将来の為の「資金繰りプラン」なのだ。少し感性を鋭くすれば、お客様の心をつかむことができるのだ。このネーミングで、不況下、数字を倍増させた。 

(7)紹介連鎖を拡大し、お客様を活用する人
 洋の東西を問わず、プロセールスの成功の要諦は紹介連鎖の拡大にあり、とりわけリッチマーケットの紹介連鎖を拡大すること。つまり「良いお客様つながり」がポイントである。あなたがあなたを伸ばし育ててくれる優良客の紹介連鎖をつかんだとき、一気に飛躍する。トッププロの数字は階段状に伸びていく。ある日突然、トッププロの地位につく。優良客は優良な見込み客を紹介する(反対に、悪い客は悪い見込み客を紹介する)。
あなたのセールスを理解し、大切な契約を任せてくれたお客様があなたの最大の支援者であり、パートナーである。知っている人たちのことを「人縁」と言い、あなたを育てパートナーシップを組める期待のもてる人たちのことを「人脈」という。この仕事の入った人は、まず100人のお客様を大切にする。どうやって大切にするのか、自分が人にやって貰って気持ちの良いことをやればよい。紹介が拡大して200人になれば成功への苗床ができる。更に紹介が拡大して400人になればリッチマーケットのドアが開かれる。あなたのために人肌脱いでくれる「良いお客様つながり」を大切にしよう。お客様は日々勉強し、成長するあなたを応援するのであって、お客様に甘えてはいけない。
 キーマンからキーマンに紹介して貰う。できれば一筆、またはその場でTELを入れて貰うのが最も効果的。キーマン(特約店)を集めて謝恩コンペを実施する人もいる。
 今のお客様と将来のお客様との見切りも必要だ。見込み客にはそれぞれ事情があるのだ。今お客様になっていただけない人には、将来の人脈のタネ捲きをしておく。例えば「あなたは必ず出世する人だと思う」とか、「御社は将来必ず発展する」と言われて、悪い気持ちになる人はいない。暫くして訪問したときに、「ずっとあなたを見てたけど、やはり出世されましたね」等と言われれば、そんなにも自分のことを見ていてくれたのかとお客様は感激するだろう。
 紹介連鎖つまり、「優良顧客創造型マーケティング」の1例として、「データベース・マーケティング」の手法がある。この手法は、端的にいえば「双方向の対話を通して、個々の見込み客・顧客情報(属性や購買行動などのデータベース)をできる限り収集・分析し、いま、見込み客・顧客が求めている価値(ニード)を適格に把握し、これにフィットした商品・サービスあるいはこれを含めたコンサルテーションを提供するものであり、データベースの洗い替えと分析を重ねながら、将来の購買行動をも予測して、定期的なアプローチを行うもの」である。
 また、データベース・マーケティングは「顧客の求めている価値」を推測すると共に、「売り手側にとっての顧客の価値(メリット)」を推測するもので、自社あるいはセールスマン自身にとってどの程度の優良顧客になるのかを特定することから始まるマーケティングである。すなわち、「優良顧客特定型マーケティング」といってもよい。
 つまり、「優良顧客」になると特定できて、はじめて多種目販売の有効なアプローチも可能になるのだ。「優良顧客」になる可能性の少ない客にいくら多種目販売のアプローチを行っても、徒労に終わるだけなのだ。つまり、この手法は見極めのマーケティングと言ってもよい。
 データベース・マーケティングの目的は、双方で「価値」を求め合い、認め合いながら、「よい客とのよい関係(相互に)を長期にわたって継続していくこと」である。これまで、保険の顧客の位置づけに対する概念は、見込客⇒顧客⇒得意客という3段階に分けて捉えていたが、データベース・マーケティングでは6段階で優良顧客を分類している。
〈データベース・マーケティングにおける優良顧客の位置づけ〉
見込客⇒顧客(カスタマー)⇒得意客(クライアント)⇒支持客(サポーター)⇒擁護客(アドボケート)⇒パートナー(優良顧客の最高ランク)
 「支持客」とは、コンサルタントの考えや判断を常に理解し、支持してくれる得意客であり、一般的にファンとみなしてもよい。「擁護客」とは、これより一歩進んでコンサルタントの営業活動を支え、見守ってくれる得意客であり、いわば物心両面でのスポンサー的は位置づけとみなしてよい。最高ランクの客が「パートナー」であり、これはコンサルタントとは切っても切れない相互依存関係(共生関係)にある最上の得意客のことである。
つまり、◯◯職員の存在無くして△△会社の経営は成り立たない、反対に△△会社無くして○○職員の活動も成り立たないという関係である。このように、データベース・マーケティングは、顧客の長期固定化(維持)とランクアップを意図的に進めていく手法である。生保営業職員はこの様な「優良顧客創造型マーケティング」を実践するマーケターとしての機能を強化していけば、価格競争の時代を迎えても必ず勝ち抜くだろう。

(8)常にプロフェッショナルとして自らのブランドを高める努力をしている人
 プロフェッショナル・コンサルティングセールスにおいては、誤解を恐れずに言えばお客様が主役ではない。カウンセリングを行う医者や弁護士同様、コンサルタント自身が主役である。お客様を躾け(保険教育し)、いわばそのコンサルタントの色に染めていく(プロの専門性や付加価値に対する理解度を高める)。そのためには、お客様の人生に対して優れて誠実で最善のアドバイスができなければならない。プロとしての広く高度な知識と、高いプライドと、自らのブランド力で、お客様の信頼を得るのだ。
日頃の自らの行動管理も厳しくなければならない。周囲の事情に流されてはならない。連続トップのあるプロは、会社の締めが24日なら自分の締めは22日に設定。さらに2日前の20日に翌月の活動計画を立てる。さらに10日前の毎月10日には、自分で設定した予算を大口で達成するか、それが困難ならば小口に切り替えて件数を出すのか、明確に方針を決めている。

(9)人間関係の達人であること
 生保セールスの適性に男女の性差は関係ない。日本では戦後の寡婦雇用の伝統で女性セールスが主体になっているが、何故生保セールスでは女性が成功しやすいのか。よく言われるように、女性が粘り強いからではない。粘って生保が売れるのなら誰でもトップセールスになれる。子産み子育て、嫁姑、老親介護等々、女性は家庭の中で人間関係の達人であることがその大きな要素として指摘できる。まさしく人生の主役を務めていることが、お客様の人生設計、人生よろず相談の最善のパートナー足り得るのだ。
 様々なお客様の人生相談にあずかることがまた、自らの子育てや家族関係を良くする学習にもなる。生保セールスは女性がその適性を生かしながら自己実現できる仕事の1つであることは論を待たない。ただし、女性であることに甘えてはならないし、お客様に媚びてもいけないことはいうまでもない。むろん男性でも成功する生保セールスマンはいずれも人間関係の達人である。

※参考文献…東洋経済新報社「トップ・オブ・ザ・セールス」(全外協編・柴田和子監修)、保険銀行日報社「動作・表情・言葉の研究」(宇井美智子著)ほか

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