●JR福知山線脱線事故と保険カバー(05年5月1日)
【損害保険】
 さる4月25日兵庫県尼崎市で発生したJR福知山線脱線事故の保険カバーについては、通常、事業者のJR西日本側で次のような損害保険の手当が行われていると考えられる(「営団地下鉄日比谷線の脱線事故と保険カバー」2000年3月既報分に加筆)。
<乗客への賠償>
 「損害賠償責任保険の鉄道(軌道)業者特約条項」でカバーされている。鉄道事業者が、車両または車両の運行のために必要な施設の所有・使用・管理に起因した事故により法律上の損害賠償責任を補償するもの。
 賠償額については、一般の事故と同じ民法上の損害賠償となり、航空保険で適用される国際ルール(IATA規定)のような取り決めはない。保険料は列車の本数、走行距離、運行ダイヤ、踏切の数などの運行上のリスクを分析して、事業者ごとに個別に設定する。事業者の規模により、適用保険料に幅がある。
 なお、中小私鉄や第三セクターの小規模鉄道業者は、簡易に保険手配ができるように、賠償責任保険について民営鉄道協会による団体制度がある。  
 ※当然の事ながら、JR側の保険契約の有無・内容に関わらず、今回の事故に起因する乗客や第三者の財物に対する損害賠償は当該事故の事業者であるJR西日本行うことになる。
<車両の損害>
 鉄道車両の損害を補償する保険には、二つのタイプがある。
 (1)企業向けの普通火災保険・電車損害担保特約:客車・機関車・貨車・モノレール・ケーブルカーなどが対象で、火災事故の他、衝突・追突・接触・転覆・脱線・墜落・架線障害などの事故により、電車に生じた損害を補償するもの。故意・重過失・地震・電車の瑕疵や腐食・洪水・高潮による事故などは免責で補償しない。
 (2)機械保険:火災を起因とする損害は補償しないほかは、上記(1)同様の事故による損害を補償する(火災損害を補償する契約方式もある=復活担保方式)。
 保険料は事業規模などにより異なる。
【乗客の生命保険など】
 当該事故の乗客が個別に契約している生命保険や医療保険(特約含む)・損保の傷害保険などは、偶然な死傷事故であり、約定の範囲で死亡保険金、障害保険金、傷害入院・手術給付金、傷害保険金などが受取人に支払われる。
 なお、今回の事故に対して生保各社は保険金請求について次のような簡易取扱を実施している。
<簡易取扱の内容>
1.(災害)死亡保険金:死亡診断書、事故状況報告書等、必要書類の一部を省略。通常の手続の場合、保険証券、(災害)死亡保険金請求書、被保険者様の住民票、死亡診断書、事故状況報告書、印鑑証明書の提出が必要となるが、簡易取扱により死亡診断書、事故状況報告書は不要となる。加入内容によりその他も省略する場合がある。
2.災害入院給付金:事故状況報告書等の提出を省略。通常の手続の場合、災害入院給付金請求書、入院証明書、事故状況報告書の提出が必要となるが、簡易取扱により事故状況報告書は不要となる。加入内容によりその他も省略する場合がある。

***本稿の無断引用・使用は著作権、版権侵害となります。必ず著作者に許諾を求めて下さい***